「インドは殺処分を廃止した」は大嘘


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(Summary)
India has been incessantly, indiscriminately killing stray dogs for decades.
For example, in Kerala State killing 500,000 dogs each year.
The Indian Penal Code does not specifically recognize offences against animals
and crimes like killing or maiming, which are dealt under the category of offences against "property" of people and this excludes stray animals as they are not "assets".
「インドでは殺処分(とは犬猫のことか)を廃止した」と多くの日本のメディアが報じています。しかしそれは大嘘です。インドでは徘徊している野良犬、野良猫(経済的価値がない飼い主のない猫。無主物)は、殺害を罰する法律の規定を見つけることはできませんでした(ストリキニーネの使用を禁じるなど一部の殺害方法を禁止する規定はあります)。犬の公的殺処分を公表している自治体もあります。さらに民間人による「自警団」の野犬殺害まで含めれば、殺処分の推計値は膨大な数にのぼります。例えばケララ州1州だけでも年間50万頭の野犬を殺処分しており、その数は人口比で日本の約120倍です。
最近、日本のメディアで「インドは殺処分(とは犬猫のことか)を廃止している」との報道が目立ちます。さらに、この報道を受けて「インドは殺処分ゼロである。対して日本は動物愛護においては後進国だ」とブログで拡散している動物愛護活動家などが見られます。しかし結論から先に申し上げれば、「インドでは殺処分ゼロである」は全く事実に反する大嘘です。
「インドは殺処分を廃止した」とのマスメディアの報道を例示します。台湾でペットの殺処分廃止、アジアではインドに次いで2番目(ヤフーニュース)。2017年6月10日、から引用します。なお、ヤフーニュースは削除が早いので、「続き」で記事内容をコピーしてあります。
台湾でペットの殺処分廃止、アジアではインドに次いで2番目
No-killへの挑戦 殺処分廃止へ大きく動き出した台湾
犬は友にもなり、家族にもなり、かけがえのない人生のパートナーになり得る。猫とのつかず離れずの関係は、心に豊かさを与えてくれることだろう。
そんな犬や猫たちを、“処分”することは、心が痛い。
台湾では2015年2月の動物保護法の改正時に、2年後には収容動物の殺処分を廃止する。
2年が経った今年の2月4日から、それが施行されたということである。
こうした殺処分廃止は、アジアではインドに次いで台湾が2番目である(*1, 2, 3)。
参考資料:
(*1)Animal euthanasia ban goes into effect / TAIPEI TIMES
(*2)Euthanasia ban may pile stress on shelters:groups / TAIPEI TIMES
(*3)動物収容所での殺処分ゼロに アジアで2番目:台湾/フォーカス台湾NEWS CHANNEL
上記の記事ですが、出典の資料の(*1)、(*2)はそれぞれ、
(*1)Animal euthanasia ban goes into effect / TAIPEI TIMES(Taiwan bans euthanasia of stray animals)
(*2)Euthanasia ban may pile stress on shelters:groups / TAIPEI TIMES(Animal euthanasia ban goes into effect)
ですが、どちらもインドのことについては一切書かれていませんでした。「インドが殺処分を廃止した」は、日本語の記事を書いた記者の捏造でしょう。
前回記事、憲法で牛の屠殺を禁じ、犬を大量殺処分しているインド~「犬猫は特別な存在だから家畜に優越して保護されるのは普遍的価値観」という幻想、で引用した、Kerala ~ what you should know as a tourist 「インド、ケララ州~観光客として知っておくこと」(日本語自動翻訳、動画あり)、では、インド南部のケララ州では、毎年50万頭もの野良犬を殺処分していることが書かれています。
それでは実際の、インドの犬や猫の殺傷に関する法律の条文や、司法判断を見ていきたいと思います。前回記事では、インドでは憲法で牛の屠殺を禁じていることを書きましたが、動物の殺傷に関する罰則規定は刑法に規定されています。具体的にインド刑法の条文を引用します。
Central Government Act Section 429 in The Indian Penal Code
Mischief by killing or maiming cattle, etc., of any value or any animal of the value of fifty rupees.
Whoever commits mischief by killing, poisoning, maiming or rendering useless, any elephant, camel, horse, mule, buffalo, bull, cow or ox, whatever may be the value thereof, or any other animal of the value of fifty rupees or upwards, shall be punished with imprisonment of either description for a term which may extend to five years, or with fine, or with both.
中央政府法 インド刑法第429条
牛などと、任意のそのほかの50ルピー以上の経済的価値があるいかなる動物を殺害する、もしくは後遺障害を与え他人に被害を与えること。
何人であっても、すべての象、ラクダ、ウマ、ラバ、水牛、野牛、雌牛、雄牛はその経済的価値にかかわらず、または経済価値が50ルピー以上のすべての動物を殺害、毒を与える、後遺障害を与える、または無用な死体の利用をした者は、5年間までの懲役刑か罰金、またはその両方が科されます。
インドの刑法においては、動物の殺害について、「象、ラクダ、馬、ラバ、水牛、野牛、雌牛、雄牛」に関しては経済的価値にかかわらず殺傷したり屠殺して死体を利用すれば最高刑が懲役5年と罰金の併科になります。つまり牛や馬などの特定の動物種は、飼い主がいない野良(経済的価値がない、無主物)であっても、最高で懲役5年に罰せられます。
しかし「象、ラクダ、馬、ラバ、水牛、野牛、雌牛、雄牛」以外の、かつ経済的価値のない動物、つまり無主物である野良犬、猫の殺害に関しては罰することができません。なお野生動物に関しては別の保護規定が有ります。
インドでは犬に関しては、民間のアニマルシェルターに収容した場合の規定があります。民間のボランティア団体が任意に、野良犬、徘徊犬をアニマルシェルターに収容し、健康な個体のみ不妊去勢をして再リリースすることを認めています。猫ではありません。犬をアニマルシェルターに収容した場合の殺処分規定の法律と条文を引用します。
Central Government Act The Animal Birth Control (Dogs) Rules, 2001 「インド中央政府 犬バースコントロール規則」。
9.Euthanasia of Street Dogs.—Incurably ill and mortally wounded dogs as diagnosed by a qualified veterinarian appointed by the committee shall be euthanised during specified hours in a humane manner by administering sodium pentathol for adult dogs and Thiopental Introperitoneal for puppies by a qualified veterinarian or euthanised in any other humane manner approved by Animal Welfare Board of India.
The person responsible for euthanising shall make sure that the animal is dead, before disposal.
9条 野良犬の安楽死(殺処分)。
インドの動物福祉委員会によって任命された資格のある獣医師により診断された傷病犬は、成犬にはペントバルビタールナトリウムを投与することによって、および子犬は、インドの動物福祉委員会によって任命された資格のある獣医師によって、チオペンタール腹腔内投与、またはほかの人道的な方法により、特定の期間内に安楽死させなければなりません。
安楽死の責任者は、(犬を)処分する前に動物(犬)が死んでいることを確認しなければなりません。
つまり、「傷病犬は安楽死(殺処分)して良い」という許可規定ではなく「殺処分しなければならない」(shall be euthanised )という義務規定です。殺処分の許可を与える規定ではないです。
その他、犬に関しては、例えば残酷な殺害方法(筋弛緩剤のストリキニーネの使用)を禁じる法令はあります。このような禁止事項がある背景には、ストリキニーネによる犬の殺処分が広く行われてきたと推測します。なお猫に関しては、アニマルシェルターへの収容やTNRの規定は見つかっていません。
インドの犬などの殺害について、インド刑法と最高裁判例を解説した、インドのサイトがあります。それには、私が前述した事柄が書かれています。つまり「経済的価値がなく、かつ特定の動物(象、ラクダ、ウマ、ラバ、水牛、野牛、雌牛、雄牛)以外は、殺傷に対してインドでは罰する規定がない」ということです。また、インドでは、最高裁判所が犬の殺害を認めています。
Is it legal to kill a street dog in India? 「インドでは野良犬を殺害することは合法でしょうか?」。2016年10月4日、を引用します。
Supreme court has not banned killing of dogs altogether.
As the Supreme Court observed, “There can be no trace of doubt that there has to be compassion for dogs. and they should not be killed in an indiscriminate manner, but indubitably the lives of the human beings are to be saved, and one should not suffer due to dog bite because of administrative lapse.”
Killing a house pet can attract a jail term of up to five years.
But stray dog is not a pet dog, it is nuisance which pause threat to humans .
The Indian Penal Code does not specifically recognize offences against animals
and crimes like killing or maiming, which are dealt under the category of offences against "property" of people and this excludes stray animals as they are not "assets".
最高裁判所は犬の殺害を完全に禁止していません。
最高裁判所が認めたとおり、「犬には同情が必要であることは間違いありません。 無差別に殺されるべきではありませんが、人の生命は救われるべきであり、行政上の過失のために犬の咬傷によって人が苦しんではなりません」。
家庭(人が飼育している)のペットを殺すことは、最高5年間の刑期をもたらす可能性があります。
しかし、野良犬(飼い主がいない、無主物)はペットの犬ではありません、人間に脅威を与える迷惑な存在です。
インドの刑法は、動物に対する犯罪を特に認めていません。
人の「財産(つまり飼育動物、経済的価値がある動物)」に対する、犯罪の範疇で扱われている殺害や傷害のような行為は犯罪ですが、野良(人に飼われていない、無主物。経済的価値がない)の動物は「財産」ではないので、(刑法上の処罰から)除外されています。
(動画)
Kerala goes on a culling spree to kill stray dogs. 「インド、ケララ州は、野良犬の殺害をすることによって野良犬の淘汰を続ける」。2016年9月28日公開。これは地方行政機関が行うことですから、完全に「公的殺処分」です。
A local administrative body in Kerala state has gone on a culling spree to kill all stray dogs in their village following repeated complaints of menace from residents in Kerala’s Thiruvananthapuram city.
インド、ケララ州の地方行政機関は、ケララ州のティルヴァナンタプラム市に住む住民から、野良犬による脅威があるとの訴えを繰り返し受けて、村の野良犬をすべて殺害しようとしている。
(動画)
Kill stray dog in Njarakkal Manorama NEWS 「インド、ナラカカルの野犬を殺せ マノラマニュース」。2016年9月6日。
(参考資料)
「インドでは(犬猫の)殺処分を廃止した」と報じるニュースサイトや個人ブログ。インドは、所有者のない犬猫に関しては殺害方法方法の制限をする法令(残酷な殺害方法は禁止する)はあります。猫に関しては、公的殺処分は無いようです。
・「動物の殺処分禁止インド」。2016年2月8日。
・台湾、殺処分廃止。アジアではインドに次いで2番目。
・インド 殺処分
・台湾でペットの殺処分廃止、アジアではインドに次いで2番目(ヤフーニュース)
このニュースでは「殺処分廃止は、アジアではインドに次いで台湾が2番目である」と明記しています。さらに、出典資料として、
(*1)Animal euthanasia ban goes into effect / TAIPEI TIMES(Taiwan bans euthanasia of stray animals)
(*2)Euthanasia ban may pile stress on shelters:groups / TAIPEI TIMES(Animal euthanasia ban goes into effect)
を挙げています。
しかし上記の2つの資料は、どちらもインドのことについては一切書かれていませんでした。「インドが殺処分を廃止した」は、日本語の記事を書いた記者の捏造でしょう。呆れはてます。相変わらず日本における海外の動物愛護情報は、嘘でこり固められています。ヤフー・ニュースはすぐに削除されますので、原文全文をコピーしておきます。
台湾でペットの殺処分廃止、アジアではインドに次いで2番目
6/10(土) 8:11配信 @DIME
台湾でペットの殺処分廃止、アジアではインドに次いで2番目
犬は友にもなり、家族にもなり、かけがえのない人生のパートナーになり得る。猫とのつかず離れずの関係は、心に豊かさを与えてくれることだろう。
No-killへの挑戦 殺処分廃止へ大きく動き出した台湾
生きているものは他の命を摂取して生きながらえている。それは、人も同じである。その一方では、命を慈しみ、必死に他の命を助けようとすることもある。生き物というのは、不思議なものだ。
人生観や倫理観、動物観などを語り出せばきりがないので、ここでは割愛するが、“殺処分”…何度目にしても決して気持ちのいい言葉ではない。
ある人は、「それも必要悪だ」と言った。はたしてそうなのだろうか? 筆者には、いろいろな意味でバランスが崩れている結果のように思えるのだが。
犬は友にもなり、家族にもなり、かけがえのない人生のパートナーになり得る。猫とのつかず離れずの関係は、心に豊かさを与えてくれることだろう。
そんな犬や猫たちを、“処分”することは、心が痛い。
殺処分を完全に無にすることは難しいとしても、限りなくそれに近づけることは不可能ではないはずだ。そのために、私たちは何ができるのだろう?
台湾では2015年2月の動物保護法の改正時に、2年後には収容動物の殺処分を廃止する(伝染性の病気や治療が難しいという病気などの場合は除く)という条項も含まれていたそうだ。
TAIPEI TIMES、およびフォーカス台湾NEWS CHANNEL(国営通信社である中央通訊社)によると、2年が経った今年の2月4日から、それが施行されたということである。こうした殺処分廃止は、アジアではインドに次いで台湾が2番目であると(*1, 2, 3)。
ちなみに、台湾における公営動物収容所の殺処分率は、2007年~2016年までの10年間で74.57%から12.38%まで下がり、譲渡率は13.45%から74.86%に上昇(*3)。2015年に台湾で初めて殺処分を廃止した台南市でも、2010年の譲渡率が13.4%だったのが、2016年には66.5%に上がったということだ(*1)。
また、ペットのしつけ方や動物保護について人々が学べる場となる『Pet Exercise and Education Park』が2019年にオープン予定で、同市はそれに巨額の投資をする他、動物福祉基金も設立するという(*1)。
しかし一方では、殺処分の廃止は動物収容所のキャパを超過させてしまう可能性があり、現場スタッフは厳しい対応に追われることになるのではないか、それよりもペット飼育に関する教育啓蒙や、不妊去勢手術およびマイクロチップ装着の実施率を上げるなどを優先したほうがいいのでは?というような反対意見もあるようだ。
現場スタッフと言えば、1年ほど前のこと、台湾の動物収容所に勤務していた獣医師が、世間から殺処分していることへのバッシングを受け、それを苦に、自らの命を絶ったという悲しい出来事があったことはまだ記憶に新しい。
先日、筆者はある保健所を見学させてもらえるチャンスを得たのだが、実際に殺処分に関わる経験をしたスタッフのストレスは言葉に尽くせないものがあり、本人が気づかないうちに体にもいろいろ影響が出るという話だった。
そして、「殺処分“ゼロ”という数字にばかり目が行き過ぎると、それに至るまでの過程でややもすると大事なことを見過ごしてしまう可能性もある。後世にもしっかり残していけるような道をつくらないと」という話にも考えさせられるところがあった。
ここでも筆者は“バランス”というものを考える。
アニマル・ウェルフェアの概念が浸透し、殺処分がなくなり、人と動物とがよりよく共生していける社会。1つの大きな目標を実現しようと思った時、中には意見が批判になってしまうこともあるだろう、互いの考え方や捉え方にすれ違いが生じることもあるだろう。こと人というのは自分の立場や思い込みで物事を考える生き物であるのだから。
だからこそ、一方向からだけの圧力だけではダメで、一部の人たちだけが携わるのではなく、一人一人が自分のできそうなことを、できる範囲で、協力し合って積み重ねていかねば。
日本のペット環境は今度どう変わっていくのか。殺処分はなくせるのか、人にも動物にも暮らしやすい社会がつくれるのか。それは何より私たち一人一人の“意識”にかかっているのだと思う。
参考資料:
(*1)Animal euthanasia ban goes into effect / TAIPEI TIMES
(*2)Euthanasia ban may pile stress on shelters:groups / TAIPEI TIMES
(*3)動物収容所での殺処分ゼロに アジアで2番目:台湾/フォーカス台湾NEWS CHANNEL
文/犬塚 凛
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