続・国際標準から外れた徳之島のTNR~徳之島のTNRを絶賛する東洋経済オンラインの無知蒙昧


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前回記事、国際標準から外れた徳之島のTNR~徳之島のTNRを絶賛する東洋経済オンラインの無知蒙昧、の続きです。前回記事では、奄美群島の徳之島におけるTNR活動の数値を挙げました。その上で私は、「徳之島のTNRにおける野良猫の減少効果は全く期待できないだろう」と述べました。今回記事では、過去に島嶼で行われたTNRの失敗例の数値を上げて、その根拠を示します。なお日本の島嶼におけるTNRによる野良猫減少と在来生物の保護~個体数増加に成功した例はただの一つもありません。さらに海外では、希少な在来野生動物の保護のために公的にTNRを採用するということ自体がありません(都市部は抜く)。特に島嶼における在来生物の保護は、野良猫は駆除根絶が国際標準です。反論される方は反証を挙げてください(その国の一次ソースで原語のものに限ります)。
天売島(北海道)と、御蔵島(伊豆諸島)のTNRの失敗例のデータ
1、北海道天売島
①TNRの時期 1992年~1997年にかけての5年間
②TNR実施数 200匹(ほぼTNR開始時の野良猫数200匹と同数)
③野良猫生息数の推移 200匹から300匹へ増加(1.5倍)
④希少生物の数の推移 ウミガラス(オロロン鳥)は個体数が減少(具体的な減少率、数は不明)
⑤気象条件は亜寒帯で大変厳しい。島の面積は5.50km2
2、東京都御蔵島
①TNRの時期 2005年~2015年にかけての10年間
②TNR実施数 389匹(TNR開始時の野良猫数300匹の約1.3倍)
③TNR開始時から活動終了時の野良猫生息数の推移 300匹から500匹に増加(1.67倍)
④希少生物の数の推移 オオミズナギドリ 2007年から2012年にかけての減少率は12%。現在の生息数は約80万羽。
⑤気象条件は温帯。島の面積は20.55 km²
徳之島は、予定のTNRは全て終了しました。現時点でのデータを示します。(第6回徳之島ごとさくらねこTNR 新聞記事)。
①TNRの期間 2014年~2016年にかけての約3年間(2016年1月に終了)
②TNR実施数 2,140(猫の生息総数3,000匹の71%)
③TNR開始時から活動終了時の野良猫数の推移 未発表
④希少生物の数の推移 アマミノクロウサギ 開始時の推定生息数200匹 現在の生息数は未発表
⑤島の気象条件 亜熱帯 島の面積は247.77km2
徳之島におけるデータで、「③TNR開始時から活動終了時の野良猫数の推移」が未発表なのは、TNRの開始から期間をまだ経ていないこともあるでしょう。しかし仮にTNRによる野良猫の減少効果がもし本当にあるのならが、3年後には有意に減少が見られるはずです。なぜならばドイツの学術研究では、オスの野良猫の平均寿命は1.4年~だからです。
それはさて置き、徳之島のTNRは、野良猫減少効果はないでしょう。さらには、希少生物のアマミノクロウサギの保護効果は全くないと言って過言ではないと思います。
まず野良猫の減少効果ですが、徳之島よりはるかに気象条件の悪い天売島(北海道)で、5年間にわたり、島内の猫生息総数に匹敵する数、200匹の不妊去勢(TNR)を行いました。しかし減るどころが、TNR活動中の5年間は全く減らず、活動終了後には1,5倍にも増えました。さらに、天売島(北海道)より気象条件が良い御蔵島(伊豆諸島)では、10年間(集中的に行ったのは5年間です)のTNR活動においては、TNR活動開始時の猫の総数の約1.3倍もの数をTNR(一部島外排出)しました。それにもかかわらず、TNR活動終了時には、猫の数が1.67倍も激増しました。
徳之島よりTNRが成功する条件に恵まれた天売島(徳之島より気象条件が悪いにもかかわらず生息数と同数のTNRを行った)においても、TNRの実施割合が徳之島よりはるかに多い御蔵島(気象条件は良いが生息数の約1.3倍のTNRを行った)においてもTNRは失敗しているのです。ですから徳之島のTNRの失敗は必然です。
そしてアマミノクロウサギの保護効果ですが、無いに等しいと断言できます。TNR開始時には、既に野良猫(放し飼い猫?含む)の数は3,000匹でした。猫は一個体当たり年間30~47もの鳥、177~299匹の小型哺乳類を捕食するとされています。(猫は小動物に深刻な脅威、年間200億匹を捕食=米調査、米国のネコ、数十億羽の鳥を毎年殺害 研究)。
対してアマミノクロウサギの生息数はわずか200匹です。TNRをしたとしても、猫の捕食活動は変わりません。死ぬまで捕食活動を続けます。個体数の割合で言えば、まさにアマミノクロウサギは野良猫に食害されて瞬間蒸発してもおかしくない状況です。絶滅しないほうが奇跡でしょう。
当初2017年の登録を目標としていた奄美群島の世界遺産登録は、2018年以降に先送りされる事となりました(奄美・琉球の世界自然遺産登録遅れ 18年以降の公算。2015年9月3日。琉球新報)。アマミノクロウサギの保護が後手後手に回っていることには、琉球新報の記事では触れられていませんが、ユネスコは、日本の奄美群島の野生動物保護の遅れも当然考慮したと私は推測します。
日本は恥ずべき、環境保護の意識が遅れた後進国でしょう。このまま徳之島で有効なアマミノクロウサギの保護対策を打ち出せず、絶滅させてしまったのならば、世界に恥ずべき事態と言わざるを得ません。それと無意味に等しい徳之島のTNRを「美談」として報じるマスメディアも問題があると思います。徳之島のような島嶼における野良猫からの在来生物の保護は、野良猫の駆除根絶が国際標準であること、そして日本で行われた島嶼におけるTNRが悲惨な失敗を繰り返していることをご存知ないのでしょう。メディアの無知蒙昧も、世界に恥ずべき日本の後進性です。
(動画)
絶滅が危惧される、アマミノクロウサギ。
(References English)
・Tokunoshima Island
・Amami rabbit
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