「日本では、欧米先進国にはほとんど見られない生体小売業、つまりペットショップが存在しています」という塩村文夏東京都議の無知蒙昧


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東京都議会議員である塩村文夏氏は、昨年2月27日に都議会において議会質問を行いました。この議会質問での動物愛護における事実関係に関する発言は、全てが真実と正反対の大嘘です。今回は塩村文夏議員の「日本では、欧米先進国にはほとんど見られない生体小売業、つまりペットショップが存在しています。この日本の異常な状況」について取り上げます。真実は、「日本は欧米先進国に比べて生体販売ペットショップの数は変わらないか、比較する国によってはむしろが少ない国」です。特にドイツとの比較では、生体販売ペットショップは日本はかなり少ないのです。
問題の、塩村文夏議員の議会質問です(2015年2月27日)。塩村あやか都議質問<2015年2月27日(金)東京都議会本会議>全文書き起こし(動物愛護関係等)。2015年2月28日公開。
本議会質問における、動物愛護に関する箇所は「続き」に記載しています。塩村文夏議員の質問は次のとおりです。
①日本では年間14万頭の犬猫が殺処分されています。行政による動物殺処分がないドイツ~(*1、ドイツのヘッセン州では、人口比で東京の6倍以上の数の犬を行政が殺処分しました。この件については、東京都の6倍もの健康上問題のない、かつ咬傷事故を起こしていない犬を公的殺処分していたドイツ、ヘッセン州、で取り上げています)。
②(日本は)欧米先進国にはほとんど見られない生体小売業、つまりペットショップが存在しています。このビジネスを支えるために、子犬の繁殖工場であるパピーミルと競り市が営まれているのです。この日本の異常な状況~。
結論から言えば、塩村文夏議員の質問内容は全く事実に反します。まず①ですが、ドイツには厳然と行政が行う犬の殺処分があります。各州においては、原則飼育を禁止する犬種が州法で定められており、極めて厳しい飼育基準と犬の気質テストなどに合格しなければ飼育が認められません。飼育許可を受けずに飼育禁止犬種を飼育すれば、行政に押収され強制的に殺処分されます。また咬傷事故を起こした犬や、行動などから危険な犬と判定された犬は行政により押収されて強制的に殺処分されます。
先に述べた通り私は、ドイツ、ヘッセン州では、人口比で東京都の6倍もの犬の公的殺処分が行われていたことを記事にしています。東京都の6倍もの健康上問題のない、かつ咬傷事故を起こしていない犬を公的殺処分していたドイツ、ヘッセン州
②ですが、真実は、欧米先進国に比べて日本は、生体販売ペットショップが少ない国です。特にドイツとの比較においては日本は、生体販売ペットショップ数の人口比では極端に少ないといっていいでしょう。
以下に信頼できる統計から、日本と欧米主要国の、人口100万人あたりのペットショップの数を挙げます。
・イギリス 人口100万人当たりのペットショップ数 64.0軒(ペット用品のみで生体を売っていない店も含む)
~
2014年統計
一般のペット販売(犬猫、小型哺乳類など)3,500軒
水生生物(観賞魚など)600軒
総数41,00 軒
イギリスの人口 6,410万人
Pet Origins
According to the Pet Industry Federation (PIF)4, there are some 3,500 pet shops in the UK and approximately 600 specialist aquatic centres,employing over 15,000 people.
Independent retailers are usually privately owned and managed, but there are also large pet superstores, pet shop chains and garden centres with pet sections.
ペット産業連盟(PIF)4によると、15,000人以上を雇用し、イギリスには約3,500軒のペットショップと約600の水生生物専門店があり、15,000人以上を雇用しています。
独立した小売業者は、多くは未公開の個人事業で事業主が所有、経営されていますが、大規模なチェーン展開しているペットスーパーストアやガーデンセンターの一部門もあります。
・イギリスの犬のペットショップ(生体展示販売。いわゆるショーケース売)による販売
~
Puppy Farming
of the current dog population of around 9 million, 16% were sold via pet shops, equating to approximately 1.5 million dogs (2014 local authority survey and Kennel Club 'Puppy Awareness Week' (PAW) survey 2014).
約900万頭の現在の犬の総数のうち、16%=150万頭がペットショップにより販売されました(2014年の地方自治体の調査と、2014年調査、ケンネルクラブ「子犬の啓発週間」(PAW)による)。
一方、環境省の平成23年調査では、「犬の入手先」のペットショップのシェアは33.5%でした犬の入手経路 環境省)。
イギリスのペットショップによる犬の販売シェアは日本の約半分ですが、塩村文夏都議の発言、「欧米先進国にはほとんど見られない」は誇張がすぎると思います。
また、「日本の異常な状況」が、ペットショップからの犬の入手シェアが33.5%であるのに対し、イギリスのペットショップによる生体販売のシェアが16%(約半分)「ほとんど見られない」は、適切な表現とは思われません。
嘘つきは具体的な数値を挙げずに、「異常な」「ほとんど」といった形容詞、形容動詞を多用します。
また私はしばしば書いていますが、イギリスやドイツなどのヨーロッパにおいては、犬猫などのペットをインターネットなどの非対面通信販売は自由に行なえ、規制を受けず、盛んにおこなわれています。
その特殊要因(日本では、インターネットによる犬などの非対面の消費者に対するペット販売は全面禁止である)により、犬のペットショップによる販売は日本よりある程度低いのは当然だと思います。
(画像)
犬の入手経路 環境省。日本の犬のペットショップからの入手シェアは33.5%。対してイギリスは日本の約半数の16%。それを「欧米先進国(イギリス)にはほとんど見られない」、「日本は異常な状況」と記述するのは、捏造に近いのではないでしょうか。この記述ですと、私はペットショップからの犬の入手シェアが「日本は90%以上」、「イギリスは数%程度」と理解しますが?

(画像)
Is it time for the Government to ban the sale of puppies from pet shop cages?より、イギリス、ロンドンにおける、子犬のペットショップでのショーケース販売。

・ドイツの人口100万人あたりのペットショップ数 50.6軒(生体を売っている店のみの統計)
~
2014年統計
ペットの生体を販売しているペットショップの総数 4,100軒
ドイツの人口 8,108万人
特筆すべきは、この4100軒という数は、「生体を扱っているペットショップ」のみの数値です。
ドイツ語で、Zoofachgeschäft、Zoohandlung、といった一般名詞は「生体販売を行う店」を強調します。
Zoofachgeschäft
das seinen Kunden Heimtiere , Tiernahrung und entsprechendes Zubehör zum Kauf anbietet und beratend bei der Haltung der Tiere zur Seite steht.
Nach § 11 des deutschen Tierschutzgesetzes ist für den Handel mit Heimtieren eine spezielle Genehmigung erforderlich.
顧客のためにペット(生体)を販売し、ペットフードとその関連アクセサリーを提供し、動物(生体)を店頭におき、アドバイスを行います。
ペットの生体販売においては、ドイツ動物保護法11条に従い特別な許可が必要です。
・アメリカ合衆国の人口100万人あたりのペットショップ数 40.8軒(ペット用品のみで生体を売っていない店も含む)
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ペットショップ総数 12,933軒
アメリカ合衆国の人口316,942,000人
Pet Stores in the US: Market Research Report
The Pet Stores industry has purred along over the past five years as cats, dogs, fish and birds have remained popular home companions.
ペットストア業界は、過去5年間にわたり、猫、犬、観賞魚や鳥などの家庭で人気のコンパニオンペットの需要により成長を続けています。
・日本の人口100万人当たりのペットショップ数 37.1軒(ペット用品のみで生体を売っていない店も含む)
~
2012年統計
ペットショップ数の都道府県ランキング総務省統計局資料に基づく。
以上より、日本が「異常な」ほど生体販売ペットショップが多く、欧米先進国では「ほとんど生体小売業が見られない」は、統計からは伺えません。特筆すべきはドイツのペットショップ数と日本との比較でしょう。ドイツのペットショップ数の統計は、「生体を扱っている店」のみの数です。ドイツでは、ペット用品が主なペットショップは通常、Tierhandlungと称します。対し生体の販売を主におこなっているペットショップは、Zoohandlung、Zoofachgeschäftとして、明確に区分しています。ドイツは、きわめて生体販売ペットショップの巨大化と品揃えの充実~大量販売化が進んだ国です。また、体感的にも生体販売ペットショップが多い国です。
日本の2012年統計では、人口100万人当たりのペットショップ数は37.1軒ですが、これにはペット用品のみを販売し、生体を扱っていない店も含みます。それが、ドイツの「生体のみを扱っているペットショップ統計数」50.6軒なのです。生体を扱っているペットショップの数は、日本はドイツに比べて著しく少ないと言わざるを得ません。
塩村文夏東京都議会議員の議会質問、「日本では、欧米先進国にはほとんど見られない生体小売業、つまりペットショップが存在しています」は、全く統計値など調べても、それに反する事実しか見いだせません。つまり塩村文夏都議の議会質問は、「事実無根の大嘘」なのです。もしくは調査もせずに無知蒙昧で、思い込みを公の場で無責任に知ったかぶりの誤りを垂れながしたかのどちらかです。地方議会とは言え議員という公人としては、あるまじき行為です。議会での嘘誤り発言は、立法を歪め公益を著しく損ねます。
塩村文夏議員の本議会質問では、嘘の事実を述べるだけにとどまらず、施策提案においても、明らかに矛盾しています。それは次回以降に記事にします。それにしても、この「都議会質問」のテープ起こしをしてまでインターネット上に塩村文夏議員の無知蒙昧ぶりを知らしめる後藤一平氏とは笑止です(先にリンクをつけた私の過去記事、東京都の6倍もの健康上問題のない、かつ咬傷事故を起こしていない犬を公的殺処分していたドイツ、ヘッセン州、をご覧ください)。
(画像)
塩村文夏氏は、2016年9月16日に、東大阪市で講演会を行っています。この講演会の内容は、今回紹介した、2015年2月27日東京都議会における、議会質問と内容を踏襲しています。すなわち、以下のとおりです。
①欧米先進国にはほとんど見られない生体小売業、つまりペットショップが存在している。
②ドイツでは、公的殺処分がない。対して日本は年間14万頭の犬猫が殺処分されている。
③(①、②の状況を改善するためには)ペットショップでの犬猫8週齡未満販売を規制を早期に実現すべきである。
④(①、②の状況を改善するためには)終生飼育が前提の、ドイツのティアハイム的保護施設を設立し、譲渡を促す。
簡単に、真実を述べれば次のとおりです。
①日本は、他先進国と比べて生体小売業(ペットショップ)は多いとは言えない。特にドイツと比較すれば少ない(本記事で述べた通り)。
②ドイツには犬の公的殺処分制度があり、相当数がある。例えばヘッセン州では、人口比で6倍の犬を殺処分していた(東京都の6倍もの健康上問題のない、かつ咬傷事故を起こしていない犬を公的殺処分していたドイツ、ヘッセン州、で詳述しております)。
③日本の殺処分の大部分は離乳前の所有者不明猫である。従ってペットショップ規制は効果は限定的。また、週齡を確定することもできないため、法の実効性に疑問が残る。
④ティアハイムは完全民営の営利施設。行政組織として採用するのは難しい。また終生飼育は有償であり、殺処分も相当数行っている。
塩村文夏議員の政策提言の矛盾点(本都議会質問及び2016年に行われた、東大阪市における講演会)の矛盾点は、次回以降の記事で論じます。

【塩村都議質問】
塩村あやか都議質問<2015年2月27日(金)東京都議会本会議>全文書き起こし(動物愛護関係等)
1.動物愛護について
「国の偉大さ、道徳的発展は、その国における動物の扱い方で分かる」。これは、マハトマ・ガンジーの有名な言葉です。まずは私が政治家になるきっかけであり、10年取り組んでいる動物愛護の分野より質問をいたします。
日本では年間14万頭の犬猫が殺処分されています。一方で、欧米先進国にはほとんど見られない生体小売業、つまりペットショップが存在しています。このビジネスを支えるために、子犬の繁殖工場であるパピーミルと競り市が営まれているのです。
この日本の異常な状況を改善するためには、過剰な生体販売ビジネスの抑制につながる8週齢規制を早期に実現させ、終生飼養が前提の保護施設「ティアハイム」を設立し、さらには保護された犬猫の譲渡を促進することです。これが行政殺処分のないドイツ式だと、これまで都議会で提案させていただきました。
さらに、私は当選以来、アメリカ式のアニマルポリスやイギリス式のインスペクター、地域猫対策、動物愛護センターのティアハイム化、ボランティアの活用と支援など、あらゆる分野の質問と提案を行ってきました。
昨年は犬の大量死亡・遺棄事件が相次いで発生するなど、経済活動が優先で、動物の命を軽んじている実態が改めて浮き彫りになりました。これは他県での事件ですが、犠牲となった犬は繁殖の役目を終えるなどした、まだ5、6歳の犬達であり、その犬達が産んだ子犬の供給地は間違いなく東京などの都市部です。東京はその点も鑑みた取組が期待されています。現状に対する知事の認識と所見をお伺いいたします。
さて、東京都は動物愛護において、他県をリードしてきた自負があると聞いています。しかし、近年においては、神奈川県が犬の殺処分ゼロを達成し、岐阜県は殺処分を行わない動物愛護に特化したセンターを新設し、収容された犬の中からアニマルセラピー犬の育成を始めました。佐賀県でも、犬猫の譲渡を目的とした専用施設の開所が間近、群馬、大阪も新しいセンターの開所を予定しています。こうした積極的な取組を打ち出す自治体は成果を挙げ、東京など他の自治体をリードしつつあります。
東京都も築40年を超えているセンターの改修や新築、収容された犬の中からセラピー犬等の育成など、積極的な施策を打ち出し、他自治体をいい意味でリードする取組をすべきです。
また、国においても、超党派の議連が立ち上がるなど、2020年に向けて動物愛護の機運は高まっています。行政による動物殺処分がないドイツを見ても分かるように、まずは8週齢規制や飼養施設規制など、国で法を敷くことが一番の特効薬です。東京都もオリンピック・パラリンピックを開催するにふさわしい成熟都市であることを証明するためにも、国に提言をするべきだと考えますが、知事に所見を伺います。
平成27年度の予算案を見ますと、要求を続けてきていた、動物愛護に関する予算が増額されました。内容をお伺いするとともに、私はセンターをティアハイムに近付ける新築や改修の提案をしてきました。その進捗も併せてお伺いいたします。
動物愛護の目指すところは、行政殺処分の撲滅だけではありません。人と動物が共生していくためには、周囲との摩擦を回避するために、飼い主のマナーの向上も必須です。例えば、都市部においては、ノーリードは条例違反になることや、散歩の前にトイレを済ませることがマナーであることは、意外と知られていません。つまり、こういった基本的な啓発が不十分だったことを表しています。飼い主としての自覚や、動物を飼う覚悟など、普及啓発をしっかり行うべきだと考えますが、今後の取組をお伺いします。
都の譲渡事業にはボランティア団体が協力をしていますが、譲渡数を増やすためには他県の先進的事例も鑑みた都の更なる取組が必要と考えます。
また、私は、殺処分数を減らすため、民間企業との連携を要請してきました。徳島県はセンターに収容をされた犬の中から、災害救助犬の育成を官民を挙げてスタートさせています。民間連携についても、併せて見解と進捗をお伺いいたします。
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