続・「京都市餌やり禁止条例」は「ザル法」なのか


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記事、「京都市餌やり禁止条例」は「ザル法」なのか、の続きです。前回記事では私は、いわゆる京都市の「京都市餌やり禁止条例」(正式名称: 京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例、は、「ⅰ実効性に対する疑念がある」および、「ⅱ運用面での矛盾」があることを指摘しました。つまり「ザル法」です。今回の記事では、「ⅰ実効性に対する疑念があるについて、(事実上)野良猫への餌やりを禁じる、アメリカとドイツの条例を比較して明らかにします。
*ざる法~抜け穴が多いために規制の目的を達することができない不備な法律をさす俗語である。
再び、「京都市餌やり禁止条例」ですが、具体的に餌やりを禁じる条文を見ていきたいと思います。以下に 京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例、の条文を引用します。
第1章 総則
(定義)
第2条
(1)所有者等 動物の所有者又は占有者を言う。
*a(3)飼い猫 所有者等が所有し,又は占有する猫を言う。
(4)野良猫 飼い猫以外の猫を言う。
(所有者等の責務)
第3条
4 猫の所有者等は,飼い猫が自宅等以外の場所に侵入することにより人に迷惑を及ぼすことを防止する観点から,飼い猫を屋内において飼養し,及び保管するよう努めなければならない。
(本市の責務)
第4条 本市は,次に掲げる責務を有する。
*b(3)野良猫に対する適切な給餌(給水を含む。以下同じ。)に係る活動を支援すること。
第2章 動物の適正な取扱い
(不適切な給餌の禁止等)
第9条 市民等は,所有者等のない動物に対して給餌を行うときは,適切な方法により行うこととし,周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌を行ってはならない。
*c 2 市長は,前項の動物に対する給餌について,必要があると認めるときは,適切な給餌の方法に関し市民等が遵守すべき基準を定めることができる。
(勧告及び命令)
*d第10条 市長は,前条第1項の規定に違反し,又は同条第2項に規定する基準に従わずに行われている給餌に起因して周辺の住民の生活環境に支障が生じていると認めるときは,当該支障を生じさせている者に対し,必要な措置を採ることを勧告することができる。
2 市長は,前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に係る措置を採らなかったときは,その者に対し,相当の期限を定めて,その勧告に係る措置を採ることを命じることができる。
第3章 雑則
(過料)
第14条 次の各号のいずれかに該当する者は,50,000円以下の過料に処する。
(1)第10条第2項の規定による命令に違反した者
上記の「京都市餌やり禁止条例」ですが、*cの、「第9条 2 市長は,前項の動物に対する給餌について,必要があると認めるときは,適切な給餌の方法に関し市民等が遵守すべき基準を定めることができる」ですが、その基準は、京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例第9条第2項の 規定に基づく適切な給餌の方法に関し市民等が遵守すべき基準 (平成27年4月1日京都市告示第32号)、としています。
以下に、京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例第9条第2項の 規定に基づく適切な給餌の方法に関し市民等が遵守すべき基準 (平成27年4月1日京都市告示第32号)から引用します。
1、適用範囲
この基準は、条例第2条第号に規定する野良猫(以下、「猫」という。)に対し、継続的にまたは反復して給餌(
給水を含む。以下同じ)を行うものに適用する。
ただしこの基準に定める方法によらない給餌(以下、「基準外の給餌方法」という。)であっても、基準外の給餌ほ法によることについて、給餌を行う場所(以下、「給餌場所」という。)の周辺の住民(以下、「周辺住民」という。)の理解の下に行われているものと認められるもの又は基準外の給餌方法によることが周辺住民の生活環境に支障を生じさせることを防止する上で合理的であり若しくは支障を生じさせるおそれがないと認められるものにあっては、この限りではない。
つまり、「京都市餌やり禁止条例」(正式名称: 京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例においては、第9条における「適切な給餌」とは、上記の、京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例第9条第2項の 規定に基づく適切な給餌の方法に関し市民等が遵守すべき基準 (平成27年4月1日京都市告示第32号)、に従えば、「周辺住民の理解が得られていること」、若しくは「周辺住民に対して被害を及ぼさないこと、ないし被害を及ぼさないと思われること」となります。
つまり、「周辺住民の理解が得られていない」、もしくは「周辺住民に対して被害を及ぼしていること、ないし及ぼすと思われる」給餌は違法です。そのような給餌、やり行為は京都市から中止が命じられ、それでも止めない場合は過料5万円に処せられます。
以上より、「京都市餌やり禁止条例」の、ⅰ実効性に対する疑念および、ⅱ運用面での矛盾を指摘していきたいと思います。
まずⅰ実効性に対する疑念です。
京都市餌やり禁止条例では、飼い猫(所有者のある猫)と野良猫(所有者のない猫)の区分が不明確です。本条例では、第3条4で「猫の所有者等は,飼い猫が自宅等以外の場所に侵入することにより人に迷惑を及ぼすことを防止する観点から,飼い猫を屋内において飼養し,及び保管するよう努めなければならない」としていますが、飼い猫に対する自宅以外の場所に侵入防止および屋内飼育は努力義務であり、罰則規定はありません。また飼い猫の登録義務と飼い主明示(個体識別。マイクロチップなど)は、京都市では義務付けていません。
つまり、外観から野良猫(所有者のない猫)と思われる猫であっても、その猫が飼い猫(所有者がある猫)なのか、野良猫(所有者がない猫)なのか、明確に判別できません。
一方、本条例の第9条1では、「市民等は,所有者等のない動物に対して給餌を行うときは,適切な方法により行うこととし,周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌を行ってはならない」とあります。猫に関しては、所有者がある猫(飼い猫)なのか、所有者がない猫(野良猫)なのか、明確に判別できないことは、既に述べた通りです。つまり、猫を放し飼いにして屋外で給餌し、その給餌方法が不適切で周辺に被害を及ぼしたとしても、あくまでも給餌者が、「餌を与えている猫は私の飼い猫(所有者のある猫)だ」と主張すれば、罰することはできません。
猫の餌やりにより、近隣が甚大な被害を被っていても、給餌者が「給餌をしている猫は私の飼い猫(所有者のある猫)だ」と主張すれば、民法709条、718条の不法行為責任を給餌者に追求し、餌やり行為の差し止めと損害賠償を求めるしか被害者は方法がないのです。民事訴訟による解決は、被害者に多大な負担を強います。そう言う意味では、京都市餌やり禁止条例は実効性に疑いが残ります。
一方、アメリカ合衆国やドイツ連邦共和国での(事実上の)野良猫餌やり禁止条例は、先の述べた通り、①飼い猫の登録義務、②個体識別と飼い主明示(マイクロチップなど)義務、③原則室内飼いと不妊去勢を義務とする、を骨子としています。さらに給餌という行為があればその猫を飼い猫とみなし、①②③違反で罰することができるのです。
京都市餌やり禁止条例のように、「飼い猫(所有者がある猫)か、野良猫(所有者がない猫)」の区分が曖昧ではなく、給餌という事実があればアメリカとドイツの条例では飼い猫とみなします。もし猫に給餌を行っていて、給餌を受けている猫が無登録で個体識別と飼い主明示がなければ、①②違反で罰することができます。また登録済みで、個体識別飼い主明示がある猫を屋外で給餌してかつ徘徊させていれば、③違反で罰することができます。それは(事実上の)野良猫に対する給餌という事実があれば、それだけだけで罰することができるということです。その給餌が「適切」なのか、「不適切なのか」も問いません。以上から、京都市餌やり禁止条例は、アメリカやドイツの(事実上の)野良猫餌やり禁止条例に比べて実効性が低いと言わざるを得ません。
「ⅱ運用面での矛盾について」については、次回記事で述べます(続く)。
(動画)
2015年2月22日公開。2月22日猫の日「京都市の餌やり禁止条例を許さない!」「地域猫活動の事を知って下さい!」。京都市の本条例は、全面的に野良猫への給餌を禁じるわけではありません。京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例第9条第2項の 規定に基づく適切な給餌の方法に関し市民等が遵守すべき基準 (平成27年4月1日京都市告示第32号)を満たした餌やりならば「合法」なのです。逆を言えば「周辺住民の理解を得られていない」「周辺住民へ被害を及ぼす、ないし及ぼすと思われる」給餌すら認めよという方が異常でしょう。
しかもその基準は、アメリカの公的TNR制度と比べれば驚く程ゆるいです。アメリカでTNRの認可を得るのは狂犬病ワクチンが義務です。また個体識別のためにマイクロチップを義務付けています。ドイツの条例では、餌やりをして良い「基準」はありません。公的に認められたTNR制度がないからです。つまり野良猫への餌やりは例外なく処罰の対象です。
アメリカでは、厳しいTNRの基準を満たさなければ、野良猫への餌やりは懲役90日という厳しい罰則がある条例が平穏に可決成立しています。そのような条例は多数あります。実際に野良猫の餌やりで刑務所で服役した人は何人もいます。日本ほど野良猫への餌やりに寛容な先進国は例外と言えます。
(参考資料)
・ご飯を 貰えなくなった 小町ちゃん。2015年12月15日。
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