オーナーを搾取する「家賃集金管理システム(賃貸管理委託)」-3
賃貸管理委託(「集金管理システム」と名乗っている業者もあります)とは、月々の管理料で賃貸管理全般を、賃貸管理業者が請け負うことです。家賃、敷金等は、一旦は入居者から管理業者名義の口座に集金し、月々の定額管理料などを差し引いて、月遅れでオーナーに支払います。
定額の管理料の他に、管理業者がリフォームや清掃、緊急対応で警備会社を手配すれば、その都度再委託費を上乗せした費用が差し引かれてオーナーに支払われます。今回は、入居者から直接賃貸管理会社が家賃等を集金する弊害について述べます。
集合住宅の管理委託には、他に区分所有物件(分譲マンション)の管理委託があります。分譲マンションの管理業者が賃貸管理受託を兼業しているケースも多く混同しがちですが、両者はまったく異なります。
まず分譲マンションの管理業は免許制です。社員に一定数の「マンション管理士」という国家資格をおくことや一定以上の財務内容を義務付けており、違反があれば免許取り消しなどの行政処分もあります。また、管理組合から管理費等を預かる場合は、1ヶ月未満に限られ、その場合も管理会社が倒産した場合などに備えて保全措置が講じられています。以上は、マンション管理適正化法に規定されています。
対して賃貸管理受託は規定する法律はありません。零細な昨日開業したばかりの、何の資格もない個人事業主でも開業できます。管理会社が預かった家賃等は、保全措置が講じられることはありません。また敷金も、入居者が退去するまで長期間預かります。
このことは、管理会社が預かった金を勝手に流用してしまうとか、管理会社が差し押さえを受けた場合は、オーナーの財産まで差し押さえれてしまいます。これは珍しいことではありません。国土交通省土地・建設産業局不動産課では、以下のような相談事例を発表しています。
賃貸住宅管理業者をめぐるトラブルと業務のルール化による対応の整理
10、財産の分別管理 より抜粋
○約2000人のオーナーから賃貸管理業務を受託していたA社は、賃借人から預かった敷金や賃料のうち7億5千万円を資金繰りのため流用していた。A社は平成20年9月に民事再生手続きに入った。
○アパートの賃貸借の媒介及び管理を依頼されている業者Xが、賃借人の支払った敷金、礼金及び前払家賃を着服し、大家に渡さない。
また、管理会社が入居者から直接金銭を預かることにより、オーナーに知らせずに、勝手に入居者から金銭を授受し着服するケースも多々あります。
賃貸住宅管理業者をめぐるトラブルと業務のルール化による対応の整理
8、管理受託契約に基づかない賃借人からの金銭受領の禁止 の抜粋です。
○管理業者の中には、礼金や更新料といった不当な一時金を賃借人から受領し、これらの一部若しくは全部を自らの管理報酬としてしまう者や、賃借人とは何ら管理契約を締結していないにもかかわらず、更新事務手数料と称して半月分の賃料相当額を管理報酬としてしまうような者も存在している。
○Xは、所有するマンションの一室を賃貸するため、平成11年3月、業者Yと「滞納保証付賃貸借業務管理委託契約」を締結。同月、Xは、Yの代理により、借主Aと建物賃貸借契約を締結した。その際、Yは、「借主は1年以内に解約した場合、違約金として家賃の1ヵ月分を支払う」旨の特約事項を設定していたが、Xにはその内容を説明せずその内容を記載した書面の交付も行わなかった。
同年8月、Aは退去することになり、違約金を支払って契約を解約した。Xは、Yに対し、退去精算書における違約金について質問したが、Yは虚偽の報告をし、徴収した違約金をXに支払わなかった。XがYを問い詰めたところ、Aから違約金を徴収している事実を認めた。
入居者から直接管理会社が金銭を預かれば、オーナーに知らせず管理会社が勝手に違約金条項などでっち上げ、入居者から金銭を取り立てて着服することもできます。これらの行為は、立派に横領罪が成立するでしょう。
特に上記事例、後者では、もし入居者が裁判を起こせば、オーナーに違約金の返還を命じる判決が下りる可能性があります。その場合は、オーナーは、管理会社から違約金を受領していないこと、管理会社がネコババしたことを立証しなければ、違約金の返還を入居者にしなくてはならなくなります。
以上のように、入居者から管理会社が直接金銭を授受するのはリスクがあるのです。上場している大企業でも倒産しないとは限りません。
1991年には、投資用マンションの一括借上げや管理受託を行っていた上場企業のマルコーが会社更生法の適用を受けました。
「管理委託すれば楽して左団扇で儲かる」と言う能天気な方にはお好きにおやりなさい、としか申し上げられません。今時そのようなおめでたい方がいらっしゃるのは驚きです。
私などは、少し考えただけでも、管理委託で入居者から直接管理会社が金銭を授受することのリスクに思い至りますが。
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uhuru.jp | オーナーを搾取する「家賃集金管理システム(賃貸管理委託)」-3
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