アパート「30年一括借上げ」の欺瞞- 1
上記事の続きです。説明しましたとおり、大手ハウスメーカーなどの建築業者がうたう「○十年一括借上げ」は、実際は2年~程度の期間の合意更新賃貸借契約です。更新時に、建築業者が一括借上げ賃料を大幅に引き下げていくか、契約特約の、高価な自社リフォーム工事を行うことをオーナーは突きつけられ、早い時期に一括借上げ契約は切り捨てられます。
「20年、30年の超長期にわたって、建築業者が新築時の家賃を保証してくれる」と言うのは、オーナー(予備軍)が欲ボケで自分勝手に解釈しているに過ぎません。
民間の「20年、30年一括借上げ利用者」がどの程度の期間、一括借上げ制度を利用したかアンケート調査したものがあります。それによれば、5年以内に解約したオーナーが4割近くに上り、10年を超えて利用しているオーナーは、わずかに1割しかいません。
30年一括借上げ・家賃保証の実態アンケート調査結果 :: 土地活用ドットコム この事実一つをとっても、オーナーにとってメリットのないシステムということがお分かりいただけるでしょう。
築年を経るに従い賃料は下がり、競争力が無くなって入居者を確保することが難しくなります。そうなれば、建築業者はなりふりかまわず一括借上げ契約を切り捨てます。建築業者が、新築時の高い家賃で入居者確保に苦労しない一番美味しい時期だけを食い逃げするシステムだと私は述べましたが、このアンケート調査に現れています。
それと「2-30年一括借上げ」という、超長期の借上げ契約は、法律上判例上、無効だということも述べておきます。
建築業者がオーナーから一括借り上げする際の契約は、借地借家法の規定を受けます。同法では強行規定として、「第三十条 特約で建物の賃借人に不利なものは無効とする」と定めています。
同法では「賃貸人(=オーナー)に不利なものは無効とする」という定めはありません。同法では、賃借人(=アパートを建築した最大手建築業者、旭化成など)は、賃貸人(=零細な土地でなけなしのお金でアパート経営を始めた零細大家、オーナーでも)に優越して権利が守られます。
同法の趣旨からすれば、2-30年の超長期にわたる一括借上げ契約は、明らかに賃借人(=最大手ハウスメーカーであっても)に不利な契約であり、裁判になれば無効とされるでしょう。
事実、4年間の賃貸借契約で「契約満了までに賃借人が本契約を解約した場合は、残り期間の賃料を違約金として賃貸人に支払う」という、賃貸借契約が無効とされた確定判決があります。
中途解約した場合の違約金条項が公序良俗に違反し一部無効とされた事例 - 東京・台東借地借家人組合 本判決に従えば、いくら立派な「30年間一括して賃料××で借上げます」という契約書を建築業者が作成しても、建築業者の都合でいくらでも解約できてしまうということです(実際そのような訴訟を起こされるなどのトラブルを防止するために、建築業者は、2年~程度の有期合意更新契約を締結します)。
4年程度でも「期間満了まで賃貸借契約を解約することはできない」という契約が無効になるのです。ましてや30年という超長期の期間を、あらかじめ決めた賃料で満期まで借り続けるという契約は無効になるのは明らかです。
本判決以降、借地借家法では、定期借家契約においても、賃借人は、原則一ヵ月前通知をすれば、定期借家契約を無条件解約できる条項が制定されました。
「○十年一括賃料は×円で借上げる」という契約は、定期借家契約です。本法条項に従えば、いくら立派な「○十年一括借上げ」を契約で謳っても、賃借人(=建築業者)は、一ヶ月前に通知をするだけで契約を解約できます。
このように、建築業者が宣伝している「○十年一括借上げ」の実態は、アパートオーナー(予備軍)が勝手に思い描いているものとはまったく異なります。
「営利企業は、自社が儲けることが最優先である。お客を儲けさせることではない」という大原則に従えば、「○十年一括借上げ」の欺瞞はたやすく見抜くことができます。「30年間も新築時の家賃が保証される。楽してリスク無くがっぽり儲かるわ」という欲ボケで、自分に都合よく解釈している方は気をつけたほうが良いでしょう。
この記事は、こちらでもアップしています。
アパート「30年一括借上げの欺瞞」-2
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ド素人のお年寄りでも事業者と規定されて、消費者としての保護を受けられませんよね。
いまどき、ド素人のお年寄りより、業者どころか入居者のほうがITを駆使して情報が上手の可能性すらあります。
インターネットで少し調べるつもりがあれば、そうそう引っかからないような気がしますが、友人は「俺パレスはイイ」と言っていました(笑)。
土地活用自体が流れてメデタシでしたが、そうでなければ地獄行きでしたでしょう。
> ド素人のお年寄りでも事業者と規定されて、消費者としての保護を受けられませんよね。
そうなんです。
私が大家業を始めたばかりのころ、下手な水道工事業者に引っかかりまして、消費者センターに相談しました。
しかし「賃貸住宅の工事は事業であって、消費者保護の範疇ではない」と言われました。
> いまどき、ド素人のお年寄りより、業者どころか入居者のほうがITを駆使して情報が上手の可能性すらあります。
インターネットで検索すれば「裏情報。家賃を踏み倒して住居費タダにする方法」なんて出てきます。
それなのに国土交通省は借家人保護のために家賃の督促を制限する法整備を行っています。
悪質な家賃保証会社を想定したものでしょうが、下手したら大家でも家賃督促に訪問すれば「威迫した」として刑事罰を受けかねません。
法律上、賃借人の権利は賃貸人より優越して守られます。
そんな厳しい商売を「気楽で左団扇」と言う人の気が知れません。
> インターネットで少し調べるつもりがあれば、そうそう引っかからないような気がしますが、
私が指摘した「30年一括借上げ」の問題点でも、まったく同じ広告記事を引用して同じことが書かれているブログ記事がありました。
格言に「人は自分が見たいものしか見えない」とあります。
「アパート経営で儲けたい」という思いだけで視野狭窄になり、無意識的にそれに反する情報を排除してしまうのでしょう。
詐欺に騙される人の、共通した心理状態です。
こんにちは~ サブリース詐欺は我慢できませんねぇ
任意売却アドバイザー(一般社団法人任意売却協会
http://ninbai-kyokai.e-arc.or.jp/
「任売」「競売」にちらほらサブリース物件が出回っているようです(うわさですが
「任売で安くてよい賃貸物件だなあ~とよくよく見たら」
あらっサブリース物件!
任売・競売のマニア(笑)はサブリースをとんと知らなかったが"物件がちらほら増えて廉価で取引されており"よく知ることになったそうです
サブリース物件…賃貸不動産本体価格+家賃保証(数年間)+悪徳なる利ざや
家賃保証はだいたい3割ぐらいかな、上乗せが相場だとか
「サブリースと聞いたらスパッと3割引♪(常識)」
あとはレオパレス21・東建コーポレーション・大東・積水ハウス~メーカー名で値引き決まり♪
悪徳な住友林業は最悪(笑)
宮本岳志(日本共産党)がレオパレス21のサブリース詐欺を追及というスタンス
これが4月でしたけどねぇ
詐欺のスミリン(笑)様、コメントありがとうございます。
> 「任売」「競売」にちらほらサブリース物件が出回っているようです(うわさですが
噂じゃないですよ。
サブリースするハウスメーカーは、十数年で家主が破綻するように制度設計しているのです。
新築直後は減価償却が多い割に(法人の定率法だったら)家賃収入が多くメンテナンス費用がかかりませんから会計上の利益よりキャッシュフローが多いです。
家賃が下がる、空き室、メンテナナンス費用が一気にかかる、減価償却費が減る、また借り入れをしている場合は10年を超えると金利があがります。
ので十数年後に大方の家主は破綻します。
> 任売・競売のマニア(笑)はサブリースをとんと知らなかったが"物件がちらほら増えて廉価で取引されており"よく知ることになったそうです
サブリース物件を買っても良いと思いますよ。
賃貸借契約は合意更新ですから、更新時期に大幅に家賃をアップすれば解約になります。
しかし上物は、融資した信託銀行が得意客に流したり、銀行系ファンドが買い取ったり、はたまたハウスメーカー子会社(関西積和とか日本住宅流通とか)が身内で流したりします。
> 家賃保証はだいたい3割ぐらいかな、上乗せが相場だとか
2割と聞いていましたが、さらにひどくなっているんですね。
まあ、どうせ賃貸住宅なんて有り余っていて、大家なんて吹けば飛ぶような弱い立場です。
> 悪徳な住友林業は最悪(笑)
開業医に「アパートや老人施設の経営をしませんか」とローラー営業しています。
さすが取りはぐれのない、世間知らずで乗せられやすい客層を狙っていますね。
こちらでも、最近不動産の記事に対するコメントがちらほらいただきます。
不動産ブログを再開しようかな(yahoo!にあるんですよ)。
国会でサブリース祭り様、コメントありがとうございます。
> 宮本岳志(日本共産党)がレオパレス21のサブリース詐欺を追及というスタンス
日本共産党は、たまにはいい追求をしているんですよ。
投資用区分所有マンションなど、区分所有に関わる問題点とか。
ほかの政党は、大手建築不動産業から、ほとんどが献金をうけていますから。
4月14日に衆議院予算委で「サブリース詐欺問題」を取り上げたのに
※盗人猛々しく"サブリースいかがでしょうか"
我が祖父(80歳越えての高齢者)にサブリース契約を迫ってきます7月17日のこと
提案ですが
国民生活センター(消費者センター)に苦情
警察に"高齢者オレオレ詐欺"
なんたら住宅建築協会(苦情処理)に苦情
そして宮本たけし(共産党)に"サブリースしていますゃ"とお知らせ(笑)
しかし不快そのものです
サブリース物件(約500万戸建て賃貸)→抵当権設定+連帯保証人(子供)~約1億円になる計算
貸金法・利子法ならば逮捕ですが(笑)
サブリース被害者の会様、コメントありがとうございます。
> 提案ですが
> 国民生活センター(消費者センター)に苦情
残念ながら、国民生活センターはあくまでも「消費者」が対象です。
不動産賃貸業者は消費者ではなく「事業者」です。
ですから賃貸不動産のリフォーム工事などでも、国民生活センターは全く対応しません(経験済み)。
というか、法律で対応できないことになっているのです。
しかし投資商品も一種の消費財・サービスでしょう。
原野商法などは、多分国民生活センターは対応するはずです。
> 警察に"高齢者オレオレ詐欺"
詐欺としての立件はほぼ不可能です。
> なんたら住宅建築協会(苦情処理)に苦情
残念ながら、これらの業界団体は、業界よりです。
>リース物件(約500万戸建て賃貸)→抵当権設定+連帯保証人(子供)~約1億円になる計算
> 貸金法・利子法ならば逮捕ですが(笑)
私の知り合いでアパマン経営をしている人は、銀行借り入れでの連帯保証人で、全ての法定相続人がなることを求めています。
80歳近くの母親、二十歳過ぎたばかりの大学生の息子まで連帯保証人にされています。
その方は風の噂でそろそろ危ないのでは、と聞いています。
こんなあくどい連帯保証を求めることは、かつてのサラ金商工ローンでもしません。
最近はノンバンクはおとなしいですよ。
サブリース物件が約500万円~借金(抵当権設定)として約7千万円!
そりゃあ貸し金だったら~「トイチの萬田銀次郎」の世界ですよ(笑)
ついでに…作者に"サブリース詐欺"を原作にしてくれないかっと
頼みたい(笑)
国民センター
消費者センター
民事訴訟の弁護士(悪徳商法)
警察(?)
どこにも"逮捕"する機関ないのはガッカリ(笑)
詐欺と強引な商法で"消費者契約法"ぐらいかな(笑)
サブリース嫌い♪様、コメントありがとうございます。
> 詐欺と強引な商法で"消費者契約法"ぐらいかな(笑)
残念ながら「消費者契約法」も、サブリース契約には適用されません。
本法は、保護対象を「消費者」としています。
アパート経営者はあくまでも「事業者」なんですよ。
事業者は、あくまでも自己責任で、という事です。
サブリースをいま大々的にやっているハウスメーカーは旭化成をはじめ、積水ハウス、住林、大和ハウスなど一流上場企業です。
それらの企業は、二流の詐欺経済犯とは異なります。
次々に不動産詐欺は手口を変えて出ます出ます(笑)
トラブル発覚するまでが勝負の世界だわ
新たなる火種様、コメントありがとうございます。
> 次々に不動産詐欺は手口を変えて出ます出ます(笑)
居住不動産の所有者からその不動産を買取り、引き続きその不動産が買主が元所有者に貸すという手法は、競売物件ではよく行われます。
大概貸し手に有利です。
買取価格が市価よりはるかに安いわりに、リフォーム費用がかかりません。
また、元所有者が後に買い取ることもできます。
それを任売でも広げるということでしょう。
通常の賃貸借家約に比べてトラブルの発生は多いです。
事例は多すぎますので、こちらでは書きません。
不動産実務家ならば、いろいろとその可能性を思いつくはずです。