日本の人口比で数10倍~数百倍の犬猫を殺処分している国が「殺処分ゼロ」というデマ

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Canada/Kanada
記事、カナダ、ケベック州の年間犬猫殺処分数は人口比で日本の303倍
の続きです。
前回記事では、カナダ、ケベック州は極めてペット(ほぼ犬猫と思われる)の殺処分数が多い州で有ることを書きました。ケベック州の人口は約85万人ですが、2021年の推計年間のペット(犬猫)の殺処分数は30万頭です。この数は公的施設による殺処分ですが、人口比で日本の2022年の公的殺処分数の14,457頭の約303倍です。しかし驚くことに「カナダは殺処分ゼロ」、もしくは日本と比べて極めて少ないというデマ情報が蔓延しています。カナダ全体の公的殺処分数を含めた殺処分数の推計値はありませんが、仮にケベック州以外の州がゼロ(あり得ませんが)であったとしても、2021年公表のカナダの殺処分数は2022年度の日本の殺処分数の人口比で70倍になります。
前回記事で述べた通り、人口約85万人のカナダ、ケベック州のペット(犬猫)殺処分数ですが、サマリーで書いた通り極めて多いのです。最も新しい2021年に公表された推計値によれば公的殺処分数は年間30万頭で、日本の2022年の殺処分数14,457頭の、人口比で約303倍です。
しかし「カナダでは殺処分数がゼロ」、もしくは「殺処分数が日本と比べて極めて少ない」というニュアンスの情報が蔓延しています。その一部を引用します。
動物保護機関SPCAの役割とカナダにおける「ペットとの最期」とは? カナダの動物福祉事情<海外情報レポート・カナダ編②>
日本ではペットを飼えなくなった時の相談機関がないために、保健所で殺処分という結果になってしまいがちなのですが、カナダにはSPCAが相談の役割を担っていて心強いです。
SPCAは基本的にNo,Killをモットーにしています。
カナダ掲示板 (家族・結婚) - No.33775
日本の犬猫を助ける方法 2015-03-20 08:20:14
もりんご (ハリファックス)
日本の犬猫事情を知りました。
年間約16万匹もの命が子犬子猫、成犬成猫関係なしにガス室に送り込まれ殺されていると言うことです。
返信‐4 あ (トロント)2015-03-20 09:44
地元では殺処分ゼロだったような。
なぜなら、とある優しい方が全て飼育して里親探しずっとをしているからです。
カナダとの比較のみならず、ネット上では驚くべきデマが繰り返し拡散されています。それは「日本はペット(犬猫)の殺処分数が世界一である(世界一多い)」です。出所は不明ですが、大手週刊誌の記事らしい?
(画像)
杉尾ひでや 参議院議員 長野県選出のXの投稿から。

「日本は世界一ペットの殺処分数が多い」は荒唐無稽なデマです。日本はおそらく国際比較では最も殺処分数が少ない国の部類です。特に犬では国レベルでほぼ「殺処分ゼロ」を達した唯一の国である可能性が高いです。そもそも犬猫の殺処分数の国際比較は非常に困難です。その理由は以下の通りです。
1、まず犬猫の殺処分を1つの機関(日本では保健所が所管するいわゆる「動物愛護センター」)が集中して行い、国が集計して正確な数字を公表している国はおそらく日本だけです。例えばドイツは行政が行う殺処分が法律で定められ相当数あるにもかかわらず、連邦での集計はもちろんのこと、州でも一切公表していません。しかし獣医師会が情報公開請求を行ったところ、例えばヘッセン州では人口比で日本の1.1倍の犬を「禁止犬種法」が根拠のみで殺処分していました。この数値には狂犬病法や動物保護法が根拠の殺処分は含まれていません。
ドイツ以外でも政府機関が、犬猫の行政による殺処分の国全体の数を1単位で正確に集計している国は北米、ヨーロッパでは1国も確認できていません。それを行っている日本は極めて例外です。
2、日本以外の国では、犬猫の殺処分は複数のセクターが担っており、根拠法も所管する行政機関も異なるので集計が難しいのです。また行政→民間の2段階の犬猫の収容殺処分方式では、行政と民間を通じた殺処分数の総数がわかりにくいのです。
例えばドイツとイギリス(イギリスでは犬しか行政機関は扱わない)では所有者不明犬猫は一次保護は行政ですが、一定期間に緊急的な殺処分や飼主返還等の行政の事務手続きを終えたのちに、譲渡可能な犬猫を民間の保護施設に移譲します。このように2段階の保護を行う国の場合は、最初の行政の施設もしくは民間の保護団体の殺処分数を単独で示せば、殺処分数は少なくなります。
カナダの民間の保護施設のSPCAの殺処分数を「カナダ全土の殺処分総数」と誤認させる資料があります。この数字には極めて多い行政による殺処分数は含みません。意図的なのかは分かりませんが、読者はカナダの殺処分数が実数より著しく低いと誤認します。結果として読者を「だます」資料になっています。
蛇足ですが、民間保護施設の殺処分数・率は、少なく公表されているというのは常識です。例えばアメリカ、ヴァージニア州のPETAのアニマルシェルターではno‐kill を標榜していましたが、多い年の殺処分率は97%超でした。イギリスのRSPCAのアニマルシェルターは長らく「殺処分率は10%程度」と公表していました。しかし元従業員が実名で暴露した事実によれば、約半数の犬猫を拳銃で殺害していました。ですから1単位で正確に集計している日本の公的殺処分数と、海外の民間団体のお手盛りの殺処分数を比較することは無意味です。
3、「殺処分の定義」はどうなのか、どこまでを「殺処分」に含めるのかでも数が違ってきます。例えばドイツは行政や民間が保護施設内で行う殺処分は「殺処分」に含めるのは疑義は生じないでしょう。では、合法的に犬猫を狩猟で年間数十万頭を殺害するのは殺処分に含まれるのか含まれないのか、警察官が年間に犬などを1万5,000頭以上路上で射殺するのはどうなのかという問題が生じます。このような犬猫の殺害は日本ではほぼありません。これらの高位推計値を殺処分数に含めれば、優にドイツは犬猫を人口比で50倍以上殺処分していることになります。
イギリスでは所有者不明の迷い犬や野良犬を公的施設に収容して、そこでは殺処分が行われます。他にも警察が無許可飼育の禁止犬種、咬傷犬を没収して強制的に施設で殺処分します。警察による犬の殺処分は、行政による殺処分数には含まれません。またイギリスはレースドッグが行われていますが、民間が行っている多数の廃レースドッグの殺処分は殺処分に含まれるのでしょうか。廃レースドッグの殺処分の推計数は、これだけでも日本の犬の公的殺処分数を超えます。
このように犬猫の殺処分数の国際比較は非常に困難です。それをよいことに、「海外先進国では犬猫の殺処分がゼロ、もしくは日本と比べて非常に少ない」という、資料を正しく引用せずにデマを拡散している人たちがいます。
日本以外の国では上記の理由により殺処分数が非常にわかりにくいのです。民間の推計値や、殺処分数を正確に集計している一部の外国の自治体の数値から分析すれば、日本は国際比較では犬猫の殺処分数が最も少ない部類の国なのです。行政施設+民間施設の保護施設内の犬猫殺処分数だけでも、北米やヨーロッパの先進国ではおおむね人口比で犬猫の殺処分数は日本の数倍から数10倍、さらには3桁以上あるのです。次回以降の記事では、外国政府機関(自治体)による詳細な公表値をいくつか挙げて、日本との殺処分数の比較を行いたいと思います。
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