「ティアハイム・ベルリンの犬の譲渡では単身者はお断り」は妄想作文か?

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(Zusammenfassung)
Die Rechtsnatur dieser als Abgabe-, Vermittlungs-, Schutz- oder Überlassungsvertrag bezeichneten Vereinbarungen im tierheim ist strittig.
記事、「ドイツのティアハイムは犬の譲渡後に抜き打ち検査をおこない犬を取り上げることこある」という狂人の妄想、の続きです。
大学の教員の論文に、ティアハイムの犬等の譲渡契約に関する驚くべきデマ記述があります。「ティアハイムが犬を譲渡した後も飼主に対しては犬の情報を求め」、「譲渡後の飼養に制限を設け、それが守られているかティアハイムが抜打ち検査をする」、「守られていないことが判明すれば譲渡後の犬をティアハイムが飼主から取り戻すことがある」です。これらの契約条項は司法判断でいずれも無効かつ違法とされていることを前回記事で述べました。今回はこの論文の他の記述でも確認が取れず、作話の可能性が高いことを述べます。
サマリーで示した、ドイツのティアハイムの犬などの譲渡では、「ティアハイムが譲渡した後も飼主に対しては犬の情報を求め」、「譲渡後の飼養に制限を設け、それが守られているかティアハイムが抜打ち検査をする」、「守られていないことが判明すれば譲渡後の犬をティアハイムが飼主から取り戻すことがある」が行われるとする、大学教員の論文から引用します。
・犬の譲渡システム ―― ティアハイム・ベルリンを事例として ―― 岩 倉 由 貴 2014年3月
(ティアハイムの犬の譲渡では)一人暮らしで就業している人は犬の譲渡対象者になりづらい。
自宅外で仕事をしていれば長時間家を空けることになるからである。
申込書に仕事をしている場合は就業時間を記入する欄があり,ここに朝8時から夕方5時までと記入した場合,ティアハイム側からは,その時間に犬はどうするのか指摘される。
この時間は家で留守番をさせると答えると,長時間犬が一匹で過ごすことになるため譲渡は成立しない。(*)
また,職場に連れていくと答えると,職場の住所を記入することになり,日中飼い主に代わり散歩に連れ出すという企業もしくは個人の散歩サービスに依頼すると答えると,その散歩サービスの住所を記入することになる。
これらは申込書に記入する情報であるが,譲渡後には,申込書に記載された情報が正しいかどうか,抜き打ちで検査が行われ,そのときに使用されるものでもある。
上記項目において,職場に連れていくと書いたにもかかわらず,抜き打ち検査の時に職場にいないと問題となり,場合によっては,譲渡後であっても再度犬はティアハイムに戻されることとなる。
(*)
・「ドイツでは長時間犬に留守番をさせてはならない法律があるので共働き家庭は犬を預けなければならない」というわんちゃんホンポの大嘘記事
~
日本では「ドイツでは8時間以上、もしくは長時間犬に留守番をさせることが禁じられている」という情報がありますが、荒唐無稽なデマです。もちろんティアハイムの保護犬譲渡においても「犬を8時間以上留守番させてはならない」という条項は確認できていませんし、司法判断でもそのような条項は無効です。
この記述に関する出典は一切示されていません。偽ドイツ獣医師の京子アルシャー氏へのインタビューが根拠とされていますが)。結論から言えば、この論文が公表されたのは2014年ですが、それ以前にこのようなティアハイムの犬の譲渡に関する契約の有効性が裁判で争われており、いずれの裁判でも「無効であり違法である」との判決が確定しています。
契約が無効であり、かつ違法であるとの裁判所が示したティアハイムの犬等の譲渡の契約は次の通りです。この点について、前回記事で述べました。
1、ティアハイムが犬を譲渡した後も飼主に対しては犬の飼養に関しての情報を求める~保護団体(ティアハイム)が引き渡し後の動物の面会を求めること、および引き渡し後の動物の多くの情報を求めること) は引渡し先(新しい飼主)の意表を突くものであり、無効である。
2、譲渡後の飼養に制限を設け、それが守られているかティアハイムが抜打ち検査をする~ティアハイムが新しい飼主に動物に関する情報提供と動物の管理に対する等の広範な権利をとどめることは、購入者(新しい飼主)の個人の権利を明らかに侵害するのでそのような契約は無効。
3、譲渡後の飼養に制限を設け、守られていないことが判明すれば譲渡後の犬をティアハイムが飼主から取り戻すことがある~ティアハイムの動物の譲渡は一般的な売買契約であり、ペットショップの動物の販売を同じである。明らかに犬などの所有権がティアハイムから新しい飼主に移転しているので、それをティアハイムが取り戻すことは新しい飼主の権利の侵害であり違法でありありえない。
今回は上記の論文にある、「一人暮らしで就業している人は犬の譲渡対象者になりづらい」や、問題の論文に掲載されている、ティアハイム・ベルリンによる譲渡申込書とされる(が作文と思われる)ものの記述内容が作文である可能性が高いことを述べます。
(画像)
犬の譲渡システム ―― ティアハイム・ベルリンを事例として ―― 岩 倉 由 貴 から。ティアハイム・ベルリンの「譲渡申込書」の日本語訳とされるもの。

この論文の著者はなぜティアハイム・ベルリンの「譲渡申込書」の原文のものを掲載しなかったのでしょうか。ティアハイム・ベルリンのHPには犬の譲渡申込書が掲載されていますが、先に挙げた画像(論文に掲載されている「ティアハイム・ベルリン」の譲渡申込書」に一致しません。こちらが本物のティアハイム・ベルリンの犬の譲渡申込書です(Selbstauskunft Adoption Hunde)。
(画像)
ティアハイム・ベルリンHPから。Selbstauskunft Adoption Hunde


犬の譲渡システム ―― ティアハイム・ベルリンを事例として ―― 岩 倉 由 貴 に掲載されている、ティアハイム・ベルリンの「譲渡申込書」の日本語訳とされるものの記述で、ティアハイム・ベルリンが公開している「犬の譲渡申込書」にはない事柄は次の通りです。
2.職業についていますか→
8.犬の場合,1日3回,最低2時間の散歩を実行できますか→
9.既に他の動物を飼育していますか→(註 この項目はあるが、以下はない)
ワクチンは接種していますか→
10.動物虐待で摘発されたことはありますか→
11.ベルリン動物保護団体のメンバーもしくは寄付者ですか→
前回記事でも述べた通り、ティアハイムが動物の譲渡先の個人情報を著しく収集することは違法との判決が、問題の論文が公表される以前に複数確定しています。したがってティアハイムが犬の譲渡申込書で「職業についていますか」や、「動物虐待で摘発されたことがありますか(犯歴)」の申告を求めることは、それに該当すると思われます。なお論文本文での「一人暮らしで就業している人は犬の譲渡対象者になりづらい」ですが、ドイツ語検索では「ティアハイムの犬等の譲渡では一人暮らしで就業している人は難しい。断られることが多い」、さらにはティアハイム自身が「一人暮らしで仕事をしている人は譲渡が難しい。お断りします」と表明している資料も1つも見つかりませんでした(Tiervermittlung tierheim hund single)。
また「8.犬の場合,1日3回,最低2時間の散歩を実行できますか」もあり得ないでしょう。老齢や病気の犬を1日3回以上計2時間も散歩に連れ出せば虐待です。
おそらくこの「ティアハイム・ベルリンの犬譲渡申込書」の日本語訳は、問題の論文の著者による、聞きかじりや伝聞による妄想作文の可能性が高いです。契約書や申込書の類は必ずしも著作物とはされませんので、そのまま原文の物をスクリーンショットで掲載するか、それよりもティアハイム・ベルリン自身のHPのリンクを出典として示せばよいのです。おそらく論文の作者はティアハイム・ベルリンのHPすら確認していないと思います。
日本の保護団体では保護犬猫譲渡の譲渡の際には、法律上無効で違法と考えられる契約がほとんどのケースでされています。例えば「譲渡先の新しい飼主の自宅を抜打ち訪問調査する」、「譲渡した犬猫等の状態の詳しい情報を求める」、「譲渡前の著しい譲渡希望者の個人情報の入手」、「違反した場合は譲渡済みの動物を取り上げる」などです。この慣習の発端は、今回問題にしたデマ論文(犬の譲渡システム ―― ティアハイム・ベルリンを事例として ―― 岩 倉 由 貴)かもしれません。だとすればこのデマ論文は、社会に大きな悪影響を及ぼしたと言えます。
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