続・子犬の密輸が横行するフランスでペットショップの犬猫販売禁止は意味があるのか?

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France/Frankreich
記事、
・ペットショップでの犬猫販売を禁止するフランスは日本が見習うべき動物愛護先進国なのか?、
・子犬の密輸が横行するフランスでペットショップの犬猫販売禁止は意味があるのか?、
の続きです。
フランスでは「ペットショップでの犬猫の販売を禁止する」等の法案が2021年に可決成立し、2024年以降はペットショップでの犬猫販売ができなくなります。前回記事ではフランスをはじめとする西ヨーロッパ先進国では、動物愛護法制が遅れた東欧から安価な子犬が大量に輸入されていることを述べました。ドイツの事例を挙げましたが、今回はフランスについて書きます。フランスにおいても東欧から子犬の輸入が違法合法問わず相当数あります。ペッとショップでの犬猫販売を禁止しても、安価なこのような子犬の購入にとって代わるだけと思われます。
まずサマリーで述べた、「フランスでの2024年以降にペットショップでの犬猫の展示販売を禁止する」立法と、その概要(ペットショップでの犬猫販売禁止に関する事柄のみ)を、以下にニュースソースから示します(英語)。
・What you need to know about France’s new animal rights law 「フランスの新しい動物権利法について知っておくべきこと」 2021年11月18日
Pet shops will not be able to sell dogs and cats from 2024 – and won’t be able to display them in shop windows.
Only abandoned dogs and cats will be available for sale in pet stores, working with rescue shelters.
Online pet sales will be banned, with the exception of websites of licensed breeders and pet stores.
フランスではペットショップは2024年以降に犬と猫を販売できなくなり、ショーウィンドウで展示できなくなります。
ペットショップでは、動物保護のアニマルシェルターと協力して、遺棄された犬と猫のみを販売することができます。
認可されたブリーダーとペットショップのウェブサイトを以外での、オンラインでのペット販売は禁止されます。
私は前回記事、ペットショップでの犬猫販売を禁止するフランスは日本が見習うべき動物愛護先進国なのか?では、次の点を挙げて「フランスのペットショップでの犬猫販売禁止は犬猫の遺棄と殺処分減少にはあまり効果はないだろう」と述べました。今回は「1」について述べます。
1、ヨーロッパではヒトモノカネの移動が自由で、国境検問所もありません。西ヨーロッパ先進国では東欧等から安価な子犬が違法に輸入されている。
2、フランスではペットショップの犬猫販売禁止の法律が施行後も、ブリーダーやペットショップのペットのオンライン販売が合法です。ペットショップの店頭販売がなくなったとしても、むしろオンラインでの通信販売のほうが安易にペット購入ができ、ペットショップ購入がオンラインに流れるだけです。
3、フランスのペットショップでの犬猫販売禁止は、「保護団体と協力し遺棄された犬猫の販売は認める」との内容です。つまり商業生産された犬猫であってもいったん保護団体を経由することにより保護動物にロンダリングされてペットショップが販売できるということです。これは同様の法律があるアメリカ合衆国の一部の州自治体で実際に起きています。
ヨーロッパにおける、おもに東欧が生産しているの子犬の密輸に関しての論文から以下に引用します。これはイギリスの研究機関によるものですが、イギリス固有の問題のみならず、ヨーロッパ全土における問題に関しても言及しています。それらはフランスにも当てはまることです。
・European illegal puppy trade and organised crime 「ヨーロッパの違法な子犬の取引と組織犯罪」 サウス・ウェールズ大学教授 ジェニファー・マーハー 2021年8月24日
The pet trade is a lucrative commercial enterprise.
The reported value of industry turnover for those supplying pets and related goods is estimated to be several €10s of billions annually.
There is growing evidence that this trade has opened the door to criminality and is increasingly of interest to organised crime groups.
Puppy trafficking, as part of the European illegal pet trade was linked to serious and organised crime and argued to have become the third largest illegal trade in Europe.
It is impossible to accurately quantify the scale of the European puppy trade.
Distinguishing between the legal, irresponsible and illegal trade is challenging for authorities and consumers.
Online activities are highly adaptive and lucrative and make up a substantial portion of black markets .
Criminals are increasingly adapting the supply chain models of global online retailers.
With in-demand ‘handbag’ dogs “bought in Eastern Europe for as little as $29 and sold for as much as $1700, allowing even small-scale operators to make thousands of pounds every week”.
The trade of animals across the Austrian-Italian border found 53% of pets traded across the border had no documentation.
Those who purposefully smuggle and organise the illegal trade can use the legitimate trade to do so (e.g. laundering dogs).
Criminal actors exploit legislative loopholes, enforcement capabilities and consumer detachment to manipulate and hide behind the legal trade.
Evidence suggests paperwork can be easily forged, or fraudulent versions used to make the trade appear legal and that the puppy has the proper documentation, treatments and age to be sold.
The puppy trade is an organised industry.
The illegal aspect of the trade is structured around numerous offenders across-borders and intertwined inextricably with the legal trade.
Added to this is an increasingly lucrative market, with few potential risks for offenders.
So puppies are basically coming in from Central and Eastern Europe, but that’s your starting point, but these puppies will be distributed right across the country.
The individuals involved are becoming very clever.
They’re effectively using a distribution network to get them across the country.
Need for instant gratification, impulse buying with little research, trust in the internet as a buying tool, and willingness to buy without evidence of the conditions of the breeding or rearing.
The puppy trade provides an ideal opportunity to use deception online, while relying on consumers to make emotion-driven purchases and the absence of adequate regulation.
There is extensive suffering and death of the puppies and breeding mothers in the trade.
This will increase the potential for zoonotic diseases, negative behaviour and health, and the abandonment, and euthanasia of healthy dogs.
Despite growing concerns among NGOs, enforcement agencies, politicians and the public, the illegal puppy trade is a buoyant and lucrative enterprise, multifarious in its nature, harm and the complexities it poses.
Yet, criminal actors manipulate and hide behind the legal trade, with little risk of detection or punishment.
ペットの商業取引は儲かる営利事業です。
ペットおよび関連商品を供給する業界売上高の報道の数値は、ヨーロッパ全体では年間数百億ユーロと推定されています。
このペットの商業取引が犯罪への扉を開き、組織犯罪グループの関心が高まっているという証拠が増えています。
ヨーロッパの違法なペット取引の一部としての子犬の売買は重要で組織的な犯罪に関連しており、ヨーロッパで(麻薬、武器に続く)3番目に大きな違法取引になっているといわれています。
ヨーロッパの子犬の取引の規模を、正確に数値化することは不可能です。
当局と消費者にとっては、子犬取引を合法、無責任、違法な取引を区別することは困難です。
オンラインでの子犬販売は市場への適応性が高く、収益性が高く、闇市場のかなりの部分を占めています。
犯罪者は国際的なオンライン小売業者の供給網のモデルをさらに適応させています。
需要の高い「ハンドバッグ(小型犬でアクセサリーのように連れて歩ける犬種)」ドッグは「東ヨーロッパではわずか29ドルで仕入れて1700ドルで販売できるために、小規模の取引業者でも毎週数千ポンド(数十万円)を稼ぐことができます」。
オーストリアとイタリアの国境を移動した動物の取引では、取引されたペットの53%に必要な書類がありませんでした。
違法取引で意図的に組織化して犬を密輸している者たちは、合法的な取引を利用して違法な取引を合法な取引に偽装することができます(例としては犬のロンダリングがあります)。
犯罪者は法律の抜け穴、警察等の機関の能力不足、そして消費者の孤立を悪用して合法的な取引を利用して、違法な取引を隠します。
証拠は書類が簡単に偽造される可能性があり、または取引を合法的に見せるための違法な偽物が使用され、それにより子犬が販売されるための適切な文書、治療がなされていること、週齢であることを示しています。
子犬の取引は組織化された産業です。
子犬貿易の違法な側面は国境を越えた多数の犯罪者を中心に構成されており、合法的な貿易と密接に関連しています
これに加えて犯罪者の潜在的なリスクがほとんどない(摘発されることがほとんどない)、ますます儲かる市場があります。
子犬は基本的に中央ヨーロッパと東ヨーロッパから来ていますが、そこが出発点でこれらの子犬はヨーロッパ全土に販売されます。
関係者たちは非常に賢くなっています。
子犬の違法取引業者らは、ヨーロッパ全土の流通ネットワークを効果的に利用しています。
すぐに得られる満足感、ほとんど調べない子犬の衝動買い、購入の道具としてのインターネットの信頼、繁殖や飼育の状態の証拠がなくても購入したいという子犬購入者のニーズ。
子犬の取引は消費者が衝動に基づいた購入を行い、適切な規制がないことに依存しつつ、オンラインで嘘を用いる(犬の違法取引業者にとっての)理想的な機会を提供します。
子犬と繁殖中の母親は、これらの違法な子犬取引により大きな苦しみと死をもたらします。
違法な子犬取引により人獣共通感染症や、好ましくない行為と健康、そして健康な犬の放棄と殺処分の可能性が高まります。
非政府機関、警察等の取締り機関、政治家、一般市民の間で懸念が高まっているにもかかわらず違法な子犬の商業取引は、その性質、有害性、およびそれがもたらす複雑さは多様で、活況を呈した儲かる事業です。
しかし違法な子犬取引の犯罪者は、合法的な取引を偽装して隠れており、摘発や処罰されるリスクはほとんどありません。
上記に論文に示された通り、西ヨーロッパ諸国では、東欧産のきわめて安価な子犬が違法に大量に輸入されているのです。フランスでも例外ではないです。そのような事情がありながら、合法的なペットショップでの犬猫販売を禁止するフランスの立法は動物福祉にとって逆効果としか言いようがありません。ペットショップでの犬猫販売を制限すれば(実はこの法律はザル法で、法施行後もペットショップでの犬猫販売は続けられると推測しています)、違法な輸入子犬の購入にとって代わるだけだと思われます。
次回記事では、具体的にフランスでの違法な子犬輸入に関するニュースソースを取り上げます。フランスでも違法な子犬輸入が問題になっています。
(動画)
Trafic de chiots venus de l'est 「東欧からきた子犬の販売」 2014年6月30日公開
これはドイツとの国境にあるフランスの都市、ストラスブールでの映像です。臨時の国境検問で車両を検査したところ、東欧からの子犬の密輸が見つかりました。ドイツの都市ケールと、フランスのストラスブール間はライン川が国境で幹線道路が通っています。普段は国境検問所などはなくまったく自由に往来でき、歩いて渡ることができます。橋の中央に、国境を示すプレートが路上に埋め込まれています。国境での検問がなければ(普段はない)、自由に国境を越えて違法に子犬を持ち込めることがお分かりいただけると思います。
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