「警察官が捜査中に犬を射殺するのは合法で憲法の財産権の侵害には当たらない」とのアメリカ合衆国連邦裁判所判決

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(Zusammenfassung)
OLG Köln, Urteil vom 16.03.2011 - 16 U 93/10
Ein Anspruch auf Ersatz der durch die psychischen Folgen der Tötung des Hundes entstandenen Beeinträchtigungen besteht nicht.
記事、
・判決に見る「犬はあくまでも物のドイツ」、「犬を人並に扱う日本」、
・猫をエアライフルで撃った男を器物損壊罪で軽い処罰としたドイツの地裁判決〜ドイツの司法判断は動物は物扱い?、
・犬の過失致死での損害賠償額はドイツは日本より著しく低い〜猟犬の射殺での損害賠償額は16万円台、
・犬の交通事故死で飼主は加害者に慰謝料を請求したが最高裁は棄却した〜オーストリア、
・アメリカのほとんどの州ではペットの死傷での慰謝料を認めていない、
・アメリカで過失で犬を死なせたことにより慰謝料が認められた例外的な判決、
・アライグマのわなで死んだ犬の損害賠償額は5万円余で慰謝料請求は棄却された〜インディアナ州控訴審判決、
・アメリカの州最高裁判決ではペットの死の慰謝料を否定、また物損額の認定は著しく低い、
・アメリカ州最高裁判決「故意で犬を射殺された飼主への賠償額は155$(1万7,000円台)だった」、
・ペットの殺害での損害賠償額は欧米は驚くほど低い〜アメリカ、
・ドイツ連邦裁判所(終審)では犬の交通事故死での慰謝料を「論外」として棄却した、
・「物の毀損とペットの死」は近親者の死亡とは厳格に区別され慰謝料はありえない〜ドイツ高裁判決、
・ペットの殺害での損害賠償額は欧米は驚くほど低い〜ヨーロッパ、
の続きです。
渋谷寛弁護士は「日本は法的な感性は欧米に比べてそうとう遅れていて、ペットを何らかの事情により殺された場合の飼い主の慰謝料については裁判上も認められていますが認容額は極めて低い」と述べています(明治大学法曹界 会報(平成14年5月30日発行)に掲載 ペット法学会に参加して 弁護士 渋 谷 寛)。つまり「欧米ではペットを殺された場合は日本よりはるかに高い慰謝料が認容されている」です。しかしそれは真逆の大嘘です。高額の慰謝料どころか物損の評価は日本より著しく低いのです。またアメリカでは「警察官が職務で犬を射殺するのは財産権の侵害にはならない」=補償の必要なし、という連邦裁判所の判決があります。
愛誤弁護士、渋谷寛氏のサマリーでも述べた問題のある資料の記述ですが、以下に引用します。明治大学法曹界 会報(平成14年5月30日発行)に掲載 ペット法学会に参加して 弁護士 渋 谷 寛
ペットに関する我が国の法的な感性は欧米に比べてそうとう遅れていうるといえましょう。
ドイツ民法典(BGB)第九〇条a1文には「動物は物ではない。」(1990年改正、2文・3文省略)。物と動物の違いに着目しているのです。
日本では動物はあくまでも(不動産以外の有体物なので)物の中の動産に分類されます(民法第85条・86条参照)。
しかし、生命をやどしているか、痛みを感じることができるか否か、この違いを無視すべきではないと思います。
今後我が国においても動物の法律上の地位を可及的に人間と同等に向上させるべきであると考えています。
ペットを何らかの事情により殺された場合の飼い主の精神的苦痛即ち慰謝料については、裁判上も認められていますが、認容額は極めて低く数万円にしかならないことが多いようです。
今年の3月28日、宇都宮地裁第1民事部(合議)において、飼いネコを獣医の避妊手術のミスで死亡させられた事例で、ネコの価格賠償50万円、買い主の慰謝料20万円、その他解剖費・弁護士費用等も含めて合計93万円あまりの賠償を命じる判決が出て新聞にも掲載されました。
ペットの死亡事故の賠償慰謝料額も時代の変化を反映して増加しつあるように思えます。
動物が命を絶たれることなく怪我をしたにとどまった場合はどうでしょうか。
動物の精神的苦痛それ自体を損害と考え動物自身の慰謝料を認めることができるのではないかと考えています。
渋谷寛弁護士は、「日本は法的な感性は欧米に比べてそうとう遅れていて、ペットを何らかの事情により殺された場合の飼い主の慰謝料については裁判上も認められていますが、認容額は極めて低い」と述べています。つまり「欧米ではペットの死亡での飼主の慰謝料は日本と比べてはるかに高額が認容されている」という意味になります。
しかしそれは真逆の大嘘です。私はこの連載でオーストリア最高裁がペットの過失死での慰謝料を棄却し、ドイツでは民法でペットの死での慰謝料請求を認めていないことを書きました。ドイツでも連邦裁判所(日本の最高裁判所に相当)で、犬の死による慰謝料請求が棄却されています。またアメリカ合衆国ではほとんどの州でペットの死による損害はあくまでも物損で時価評価し、慰謝料を認めていないことも述べました。故意悪意によりペットを殺害されても、慰謝料が棄却された州最高裁判決もあります。
さらにアメリカ合衆国連邦裁判所では、「警察官が職務で犬を射殺する行為は合理的であり、合衆国憲法の違法な没収には当たらない)財産権の侵害にはならない)」との判決が2016年に確定しています。ドイツでは民法で特別法の規程があれば動物の所有権を制限できますので、警察法に基づく職務権限での警察官の犬の射殺では補償はありません。日本では警察官の家宅捜索でその家人の犬を射殺した事件はおそらく一度もないでしょう。またそのような事があれば賠償問題も生じます。
欧米はペットの殺害では慰謝料は終審で棄却されており、さらに物的損害の評価も日本と比べて著しく低いのです。さらに警察官による犬などのペットの射殺は極めて多く、しかも補償はありません。渋谷寛弁誤士の、「欧米では動物の法的地位は人と同等で、殺された場合の慰謝料の認容額は日本よりはるかに高い」は真っ赤な嘘、荒唐無稽なデマ、まさに真逆も真逆のデタラメです。以下に、アメリカ合衆国連邦裁判所判決のニュースを引用します。
・Federal court rules police can shoot a dog if it moves or barks when officers enter a home 「アメリカ合衆国連邦裁判所は、警察官の家宅捜索で犬が動いたり吠えたりした場合は警察官が犬を射殺できると判決しました」 2016年2月27日
A police officer can shoot a dog if it barks or moves when the officer enters a home, under a new federal court ruling issued this month.
The ruling comes after police in Battle Creek, Michigan, shot two pit bulls while searching a home for evidence of drugs in 2013.
The dogs’ owners, Mark and Cheryl Brown, filed a lawsuit against the Battle Creek Police Department and the city, claiming that killing the dogs amounted to the unlawful seizure of property in violation of the Fourth Amendment.
The district court sided with the police officers and the Browns filed an appeal with United States Court of Appeals.
On Dec. 19, the appeals court issued a ruling stating that the officers acted reasonably in the case and the Browns’ constitutional rights were not violated.
“The seizures of the dogs in this case were reasonable given the specific circumstances surrounding the raid,” the court ruled.
Judge Eric Clay stated “a police officer’s use of deadly force against a dog while executing a search warrant to search a home for illegal drug activity is reasonable under the Fourth Amendment when… the dog poses an imminent threat to the officer’s safety.”
警察官は今月言渡しがされた連邦裁判所の新たな判決の下では、職務で家に入るときに犬が吠えたり動いたりした場合に犬を撃つことが可能となります。
この判決は、ミシガン州バトルクリーク市の警察が2013年に被疑社宅で麻薬の証拠を探しているときに2頭のピットブルを射殺した後に提起されたものです。
犬の飼い主であるマークさんとシェリル・ブラウンさんは、バトルクリーク警察署と市に対して訴訟を起こし、警察が憲法修正第4条に違反して犬を違法に没収したと主張しました。
1審の地方裁判所は警察を支持し、ブラウンズさんは合衆国連邦控訴裁判所に控訴しました。
12月19日に控訴裁判所は警察官はこの事件では合理的に行動したとし、ブラウンズさんの憲法上の権利は侵害されなかったと述べ、判決を言渡しました。
「この事件での犬の没収(殺害することで私有財産を国庫に帰属させたとの意味)は、捜索を取り巻く特定の周囲の状況を考えると合理的だった」と裁判所は判決を言渡しました。
エリック・クレイ裁判官は、「警察官が捜索令状により職務を行い違法薬物に関する家宅捜索する際に、警察官が犬に対して致死的な実力行使をすることは、犬が警察官の安全に差し迫った脅威を与える場合は、合衆国憲法第4修正条項の下でも合理的である」と述べました。
・ Pursuant to Sixth Circuit I.O.P. 32.1(b) File Name: 16a0293p.06 「控訴審判決 原文全文
・Fourth Amendment 「アメリカ合衆国憲法 修正第4条」 原文全文
Amendment IV
The right of the people to be secure in their persons, houses, papers, and effects, against unreasonable searches and seizures, shall not be violated, and no warrants shall issue, but upon probable cause, supported by oath or affirmation, and particularly describing the place to be searched, and the persons or things to be seized.
アメリカ合衆国憲法 修正第4条
不当な捜索や没収に対しては人、家、書類、およびその結果において何人も安全である権利があり、それは侵害されてはならず令状は発行されないものとします。しかし疑われる原因がありそれに基づいて裁判所への宣誓または許可によって裏付けられ、特に捜索される場所および人並びに没収対象の物について説明があった場合はその限りではありません。
家宅捜索中の犬の射殺=私有財産の毀損=財産権の侵害を没収(犯罪に関係のある物の所有権を国に移し国庫に帰属させること)、とするのはやや飛躍したという感じがしないではありませんが。いずれにしても連邦裁判所控訴審では、家宅捜索中に警察官が犬を射殺することは職務上合理的な行為であり、アメリカ連邦憲法修正第4条(国民の警察の違法な捜査で私有財産を没収されない権利)には違反しないと判決しました。つまり警察の捜査で飼犬が射殺されても、その物損に対する補償はない、と連邦裁判所が判断したということです。
ドイツでも頻繁に警察官が捜査中に飼犬を射殺する事件は発生しますが、私が調べた限り犬の飼主が金銭的補償を求めて訴訟を提起した例はありません(牛ではある)。元々ドイツなどヨーロッパでは犬猫等のペットの殺害(物の毀損)では賠償額はきわめて低く、また慰謝料は請求できないために裁判が割に合わないことがあると思います。また民法90条aで「動物は物(=財物。所有権が及ぶもの)ではない」と規定され、警察官が警察法に基づく正当な職務で犬等のペットを射殺しても、保証を求めるのは難しいと思われます。
(動画)
Outrage Grows after Bodycam Shows NJ Officer Shoot, Kill Dog That Charged at Him | NBC New York 「警察官に取り付けられたボディカメラのニュージャージー州の警察官が飛びかかってきた犬を射殺した行動を写した映像で怒りが高まっています| NBCニューヨークの報道」 2019年7月30日
アメリカ連邦裁判所控訴審では、「警察官が正当な職務で家宅捜索を行った際に犬を射殺するのは合理的で、アメリカ連邦憲法修正4条の警察による不当な財産の没収(財産権の侵害)には当たらない」と2016年に判決しました。このようなケースでも、物損で犬の飼主が警察に対して保証を求めるのは難しいでしょう。
渋谷寛愛誤弁誤士の「日本は欧米より格段に動物に対する法的な感性が遅れている。ペットの死では日本よりはるかに高額の慰謝料が認容される、人と動物の法的地位が同等だからだ」って何(笑)。
(動画)
Body camera video shows fatal shooting of puppy by Loveland police 「警察官のボディカメラの録画は、ラブランド警察(オハイオ州)による犬への致死的な銃撃を示しています」 2021年8月26日
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