間違いだらけの「しっぽの声」(杉本彩氏監修)〜「ティアハイムでの安楽死は複数の専門家が協議する」というデマ

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(Zusammenfassung)
・Tierheimordnung des Deutschen Tierschutzbundes
Die schmerzlose Einschläferung ist nur vom Tierarzt entscheiden und durchzuführen.
*本記事は、8,008ブログ記事中4位を獲得しました。
前回記事でも取り上げましたが、しっぽの声という、動物愛護をテーマにした漫画があります。杉本彩氏が監修(笑)しています。私は断片的にしか内容を知りませんが、海外の記述に関してはすべて誤りがあります。「ティアハイムでの安楽死は複数の専門家とスタッフが慎重に協議を重ねた上で行われる」も誤りです。ティアハイム内が行う安楽死(殺処分)ですが、ティアハイムの統括団体であるドイツ動物保護連盟は「ティアハイムの運営指針」で安楽死(殺処分)に関しても示しています。傷病を理由とする安楽死(殺処分)は、獣医師1人の判断でできるとしています。
問題の、しっぽの声の1シーンは次のとおりです。
この中では「「ティアハイムでの安楽死は複数の専門家とスタッフが慎重に協議を重ねた上で行われる」との記述があります。
(画像)


結論から言えば、「ティアハイムでの安楽死は複数の専門家とスタッフが慎重に協議を重ねた上で行われる」の記述は誤りです。そのような法令の規定はもちろん皆無です。また民間の自主規制でもありません。ごく一部のティアハイムでは「すべての安楽死(殺処分)で複数の獣医師と管理者の同意が必要」としていますが(ティアハイム・ベルリン)、この「しっぽの声」の記述は「すべての安楽死(殺処分)で、すべてのティアハイムが複数の専門家とスタッフが協議した上で行われる」という意味になり、誤りです。
サマリーで述べたとおり、ティアハイムの統括団体である、ドイツ動物保護連盟(Deutscher Tierschutzbund)は、ティアハイム運営指針(Tierheimordnung des Deutschen Tierschutzbundes )を示しています。この中ではティアハイムの収容動物の安楽死に関しても定めています。「傷病を理由とした安楽死(殺処分)は、獣医師単独の判断で実行できる」と明記されています。以下に、該当する記述を示します。
VII. Einschläfern von Tieren
1. Grundsatz
b) Die Einschläferung (Euthanasie) unheilbar kranker Tiere, die nur unter Schmerzen, Leiden oder
Schäden weiterleben könnten, ist ein selbstverständliches Gebot des Tierschutzes.
Die schmerzlose Einschläferung ist nur vom Tierarzt(註 単数形「1人の獣医師」 複数形だと Tierärzteになる) entscheiden und durchzuführen.
2. Ausnahmen
In folgenden Ausnahmefällen ist, nach Ausschöpfung aller anderen Möglichkeiten, in Übereinstimmung mit
den Bestimmungen des Tierschutzgesetzes die Einschläferung unumgänglich:
a) Bei Tieren, die starke, nicht behebbare, konstante Verhaltensstörungen zeigen, und deren Weiterleben mit schweren Leiden verbunden wäre, oder
b) bei Tieren, die infolge abnormer und nicht behebbarer Verhaltensstörungen eine akute Gefahr für sich oder ihre Umwelt darstellen.
動物の安楽死
第一原理
b)苦痛や症状が継続する可能性がある、苦しんでいるだけの終末期の動物の安楽死は、動物福祉上必要なのは明らかです。
苦痛回避の安楽死は、獣医師(1人の決定でよい)のみにより決定され実行されます(獣医師が判断すれば他の職員は反対できないと解釈できる)。
2.例外
次のような例外的なケースでは、他のすべての可能性を実行したのちであれば、動物保護法の規定により安楽死は不可避です。
a)重度の回復不能な、一定の行動障害を示す動物において、それがその動物にとって生きる上で深刻な苦しみをもたらすと思われる動物において、または、
b)異常かつ回復不能な行動障害の結果として、その動物自身、またはその環境に対して緊急な危険ををもたらす動物。
日本で流布されている「ティアハイムでの収容動物の安楽死(殺処分)は、複数の専門家と獣医師が協議の上同意を得なければできず極めて厳格である」という情報はデマです。その元凶は私の推測ですが、おそらくすでにネット上からご本人が必死で削除している、偽ドイツ獣医師の京子アルシャー氏の吹き出しそうな噴飯記事が元と思われます。
Web魚拓でその記事が残っています。ドイツ 殺処分ゼロの理由 京子アルシャー 2010年4月13日 です。この偽ドイツ獣医師京子アルシャー氏の記事の内容は、少し冷静に考えればあまりの荒唐無稽さで悶絶死しかねない内容ですが、一時は多くの動物愛誤家のみならず、マスメディアですら引用されていました。
「すべての脊椎動物は苦痛を取り除く目的だけでしか殺すことができず、必ず麻酔による安楽死でなければならない(ドイツで売られているニシンは自然死したものか末期の傷病で薬剤で一尾一尾安楽死したものなのか)」や、「家畜の屠殺では麻酔薬による安楽死でなければならない(そのような肉を食べれば高確率で死にます。ドイツ人が今まで絶滅しなかったことが不思議)」などという記述を信用する方々は、知能が正常に満たないでしょう。その他の「ティアハイムでの犬の安楽死で1人の獣医師の判断で行えば刑事訴追される」などの記述も、全て根拠のないデタラメの羅列です。この点については、私は記事にしています。
・偽ドイツ獣医師によるドイツでの犬の安楽死のデマ記事
ところで杉本彩氏は、「日本以外の先進国ではペットショップでの生体販売がない」とう、自分の著作紹介で述べています。「日本以外の先進国ではペットショップでの生体販売がない」などと本気で思っているのでしょうか。もしそうならば、動物愛護に関しての知識は小学生以下でしょう。このような方が「動物愛護の専門家(笑)」としてマスコミにしゃしゃり出たり、今回指摘した「しっぽの声」の監修(笑)をしているのです。
おそらく今回指摘した「しっぽの声」のティアハイムでの安楽死(殺処分)の記述は、京子アルシャー氏による噴飯記事を参考にしたと思われます。小学生以下の知識の動物愛護の専門家(最終学歴は中学なんですが)と、偽ドイツ獣医がマスコミにまでしゃしゃり出て、デマ情報を拡散し、熱狂的なカルト信者がその教義(デマ情報)を信奉しているのは滑稽を通り越して醜悪です。杉本彩氏にはしばしば、デマ情報の流布に対しては苦言のメールを送っていますが、いまだにデマ情報の拡散にご執心で、正確な情報提供は一つもありません。本当に有害です。
(画像)
杉本彩氏と、氏自身による著作紹介。


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