ドイツの法令に関する記述がすべて誤りという、あまりにもひどいSippoの記事

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(Zusammenfassung)
Fehler in den japanischen Medien zum deutschen Tiergesetz.
私は朝日新聞とその関連メディアでの、動物愛護に関する欺瞞をしばしば取り上げています。例えば「アエラ」やネット配信の「Sippo」などです。特に海外に関しては、完全に正確な記事を私は見たことがありません。最近も朝日新聞では目に余る捏造記事があり、Sippoでは、ドイツの法制度に関する記述がすべて嘘誤りというひどい記事がありました。今回は、Sippo の、ドイツの法令に関する記述がすべて誤りという、あまりにもひどい内容の記事を取り上げます。またこの記事ではドイツの法令以外でも、著しい偏向記述があります。
サマリーで示した、「ドイツの法令に関する記述がすべて誤り」という、あまりにもひどい朝日新聞の関連メディア、Sippo の記事はこちらです。日本の常識は世界の非常識!? 動物福祉で一歩先行くドイツのリアルが知りたい! 2021年4月5日 以下に問題記述を引用します。
「動物福祉 ドイツ」という言葉で検索するとドイツの進みっぷりが出てきます。
例えば、動物保護法では、ケージの大きさや自然光が入らねばならない、などの物理的な飼育規定が決められており、犬猫好きからすれば当たり前のことです(*1)。
ドイツには、行儀がよく、よく訓練された犬がたくさんいます。
しかし、多くのドイツ人は、犬のしつけができていないことを恥ずべきことと感じます(*5)。
犬を始めとした動物の生きる権利については、法律で認定されています(*3)。
例えば外での繋ぎ飼いは犬小屋が与えられているとみなされません。ドイツの人は、違反者をみるとすぐ通報する(*2)。
ドイツでは、野良犬を見かけることはまずありません。ティアハイムに、犬を自ら持ち込むことはあっても、野山に捨てることはしません(*6)。
ドイツの殺処分をしないという体制です(*4)。
順を追って説明します。
(*1)
「動物保護法では、ケージの大きさや自然光が入らねばならない、などの物理的な飼育規定が決められており、犬猫好きからすれば当たり前」との記述ですが、動物保護法は、Tierschutzgesetz(連邦法)以外には考えられません。まず「動物保護法ではケージの大きさや自然光が入らねばならない、などの物理的な飼育規定が定められている」ですが、そのような規定は本法にはありません。
最低ケージサイズや自然光の確保などの飼養基準が定められているのは法令では犬だけです。根拠となる法令は動物保護法ではなく、「動物保護犬規則」(Tierschutz-Hundeverordnung)です。犬以外では行政指導文書で、牛、豚、鶏に限り、最低ケージサイズ等が定められています。以下に、動物保護法(Tierschutzgesetz)と、動物保護犬規則(Tierschutz-Hundeverordnung)から該当する条文を引用します。
・動物保護法(Tierschutzgesetz)
Zweiter Abschnitt
Tierhaltung
§ 2a
(1) Das Bundesministerium für Ernährung und Landwirtschaft (Bundesministerium) wird ermächtigt, durch Rechtsverordnung mit Zustimmung des Bundesrates, soweit es zum Schutz der Tiere erforderlich ist, die Anforderungen an die Haltung von Tieren nach § 2 näher zu bestimmen und dabei insbesondere Vorschriften zu erlassen über Anforderungen.
第二部章
動物の飼育
2条a
1項 連邦食糧農業省(連邦省)は、連邦委員会の同意を得て、法定の規則(省令)により、2条に従って動物の飼育に関する要件を規定し、特に動物の飼育に関する具体的な規制を制定する権限を与えられています。
つまり動物保護法においては、動物の飼育に関する「物理的な」つまり具体的な数値規制は、省令によって定めることを委任しています。動物保護法においてはSippoの記事の記述にある、「ケージの大きさ」等の、物理的(=具体的な数値による)飼育規定は一切定めがありません。したがってSippoの「動物保護法では、ケージの大きさや自然光が入らねばならない、などの物理的な飼育規定が決められており」の記述は誤りです。
・動物保護犬規則(Tierschutz-Hundeverordnung)
§ 5 Anforderungen an das Halten in Räumen
(1) Ein Hund darf nur in Räumen gehalten werden, bei denen der Einfall von natürlichem Tageslicht sichergestellt ist.
§ 6 Anforderungen an die Zwingerhaltung
5条 室内で犬を飼うための要件
(1)犬は、自然光は入ることが確保されている部屋でのみ飼育することができます。
6条 屋外の犬舎で飼育するための要件(この条項で具体的な犬舎の最低ケージの広さなどの数値規制が規定されている)。
また「犬猫好きからすれば当たり前」という記述が続き、「動物保護法では、ケージの大きさや自然光が入らねばならない、などの物理的な飼育規定」が猫に及ぶという意味になります。しかし先に述べた通り、ドイツでは法令で最低ケージサイズや自然光の確保などの動物の飼養基準が法令で定められているのは犬だけであり、猫は飼養基準の物理的な飼育規定(数値による飼養基準)は一切ありません。ドイツにおいては猫は8週齢未満で親から分離して販売してもよく、矮小で身動きできないようなガラスケージで5週齢の子猫を展示販売しても合法です。なお日本では、猫も8週齢未満での販売は禁止されています。猫の飼養基準は、日本はドイツよりも法的規制が厳しいといえます。
したがってSippoの「動物保護法では、ケージの大きさや自然光が入らねばならない、などの物理的な飼育規定が決められており、犬猫好きからすれば当たり前」との記述は、「ドイツでは法令で猫の飼養における最低ケージサイズや自然光の確保が規定されている」という意味になり、完全に誤りです。
(*2)
「外での繋ぎ飼いは犬小屋が与えられているとみなされません。ドイツの人は、違反者をみるとすぐ通報する」との記述ですが、「ドイツでは外での繋ぎ飼い派全ての犬において違法」という意味になります。しかしドイツでは犬の繋ぎ飼いを禁じているのは妊娠中の犬など一部に限られています。
犬の繋ぎ飼いを規定している法令は、「動物保護犬規則」(Tierschutz-Hundeverordnung)です。以下に該当する条文を引用します。
§ 7 Anforderungen an die Anbindehaltung
(7) Die Anbindung ist verboten bei
1.einem Hund bis zu einem Alter von zwölf Monaten,
2.einer tragenden Hündin im letzten Drittel der Trächtigkeit,
3.einer säugenden Hündin,
4.einem kranken Hund, wenn ihm dadurch Schmerzen, Leiden oder Schäden zugefügt würden.
7条 犬の繋ぎ飼いの要件
7項 以下の犬においては繋ぎ飼いは禁止されています。
1号 生後12ヶ月までの犬
2号 妊娠中で、妊娠期間の後期の3分の1の雌犬
3号 授乳中の雌犬
4号 係留飼育することにより痛み、苦しみ、または害を及ぼす可能性がある病気の犬
妊娠末期か授乳中の雌犬を除外した健康な成犬であれば、係留飼育はドイツでは禁止していません。 したがってSippoの、「外での繋ぎ飼いは犬小屋が与えられているとみなされません。ドイツの人は、違反者をみるとすぐ通報する」との記述ですが、「ドイツでは外での繋ぎ飼いは全ての犬において違法」という意味になり誤りです。
(*3)
「犬を始めとした動物の生きる権利については、法律で認定されています」ですが、ドイツでは「動物の生きる権利(Recht zu leben 生存権)」を記述した法令は一切ありません。ドイツに限らず動物に権利(Recht)を法律により付与し、保証した国家は、正常な民主国家であればただの一つもないと断言します。またドイツにおいては学説においても、動物に権利が付与されていることは否定されています。
Sippoの本記事のライターは、その該当する法令と条文を原文で提示していただきたいです。これほどまでにひどい記述を平気でするとは、精神に異常をきたしているのではないかと心配になります。
その他にも、今回取り上げたSippoの記事は、法令の誤り以外でも、著しい偏向、嘘しか記述がないといっても差し支えないほど、目を覆いたくなるような、あまりにもひどい記事です。大手のマスコミがこのようなデマ記事を堂々と掲載し続けていることに、私は日本の動物愛護の将来に絶望します。その他の記述に関しては、本ブログサイトで何度も指摘してきた事柄ですが、機会があれば指摘します。朝日新聞と関連のメディアで動物愛護、特に海外に関する記事を執筆しているライターはバカとキチガイの寄せ集めです。全員、精神科を受診された方がよいと思います。
(画像)
太田匡彦氏(Sippoのデスクと思われる人物)による記事、AREA(言わずと知れた朝日新聞系の雑誌)'09.9.7号『犬を殺さないドイツの常識』。「ティアハイム・ベルリンでは1匹も犬を殺さない」、「ドイツではティアハイムから犬を入手するのが常識」。このように真実に反することを堂々とマスメディアに書ききってしまう神経は、私にとっては理解不能です。
のちの画像でも示しますが、ティアハイム・ベルリンはHPで「当施設は一定条件においては殺処分を行っている」と明記しています。またドイツの犬猫の入手割合は2014年の推計で保護犬猫(ティアハイム以外の譲渡も含む)の割合はわずか10パーセント程度です。現在は当時より外国からの子犬輸入が激増しているため、さらにその割合が低下していると思われます。

(画像)
ティアハイム・ベルリンのHPでは、「当施設では収容動物の殺処分を行っています」と明記されています。Tierschutz in Berlin seit 1841 「ベルリン動物保護協会 ティアハイムベルリン ホームページ」 の、service をクリック、さらに、Häufig gestellte Fragen 「よくある質問」をクリックすると、次の画面が現れます。さらに、Häufig gestellte Fragen 「よくある質問」。最後に、Werden Tiere eingeschläfert? 「ティアハイム・ベルリンは安楽死(殺処分)していますか?」をクリックすれば、以下の画面が現れます。

Werden Tiere eingeschläfert?
・Ein Tier ist so sterbenskrank, dass es nicht mehr zu retten ist und von seinen Leiden erlöst werden muss.
Sämtliche Einschläferungen von Tieren bedürfen de Einwilligung mehrerer Veterinäre sowie der Zustimmung des TVB.
Jeder Fall wird in einem Euthanasiebuch dokumentiert.
Einschläferungen erfolgen grundsätzlich nach Ausschöpfung aller Behandlungsmöglichkeiten; medizinisch-technische Voraussetzungen stehen in bester Ausstattung zur Verfügung, die finanziellen Aufwendungen für den Komplex medizinische Versorgung steigen stetig.
・Ein Tier zeigt gemäß der Tierheimordnung des Deutschen Tierschutzbundes so starke, nicht behebbare und konstante Verhaltensstörungen, dass ein Weiterleben entweder nur mit schweren Leiden verbunden wäre oder eine akute Gefährdung der Umwelt vorhanden ist.
Über solche Ausnahmefälle entscheidet dann eine sachkundige Kommission.
ティアハイムベルリンは動物を安楽死(殺処分)しますか
その動物が死に直面し治療不可能で、その苦しみから解放しなければならない場合は行っています。
すべての動物の安楽死は、数人の獣医師の同意とベルリン動物保護協会(註 ティアハイム・ベルリンの上部団体)の同意を必要とします。
安楽死の各症例は、記録簿に記載されています。
基本的には、すべての治療法の選択肢が尽きた後に行っています。
医療上および技術上の要求は可能な限り最も高度な設備で行うことが可能でありますが、複雑な医療のための財政的負担は年々増加しています。
ドイツ動物保護連盟のティアハイム運営指針によれば、動物が強度の回復不可能なかつ恒常的な行動障害を示していて、それが継続的な生きるうえで動物に深刻な苦痛の原因となる場合、もしくは周辺環境に深刻な危険を及ぼす場合。
そのような例外的なケースの安楽死は、知見のある委員会によって決定されます。
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