イギリスの犬の死因の8割は安楽死~「殺処分数」の国際比較は無意味

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About 80 percent of the cause of death in the UK of dogs are euthanized by a veterinarian (lethal disposal).
「日本は犬猫の殺処分数が多い動物愛護後進国だ」と主張する方が大変多いです。しかしそのような方に限って「殺処分」の定義を明確にしていません。殺処分の定義が不明確なまま感覚的に、さらに原典も調べずに「日本は犬猫の殺処分数が多い」と非難する人が多いのです。しかしアニマルシェルター(公営私営含めて)での犬猫の殺処分数に限っても、フランスは年間50万頭で人口比で日本の約30倍(*1)、オランダの犬では約40倍(*2)、カナダの犬では400倍近く(*3)もあります。アニマルシェルターでの殺処分数の公開を行っていない国(ドイツなど)があります。また民間人ハンターや警察官による合法的な駆除、統計に表れない飼い主が獣医師に依頼する安楽死を殺処分数に含めれば、殺処分数の正確な数の国際比較はほぼ不可能です。今回記事で取り上げるのは、イギリスの犬の死因の8割が飼い主が獣医師に依頼する安楽死という事実です。
(*1)
・contre le euthanasie chat et chien en france
(*2)
・Bert van Straten: Nederland euthanaseert ‘50.000’ gezonde honden per jaar! 「オランダは年間50,000頭の健康な犬を安楽死(殺処分)させる!」2015年3月18日
(*3)
・Some MUST READ Statistics On Canada's Pet Overpopulation Problem 「カナダのペット過密問題に関する統計を読まなければならないだろう」 2016年2月11日
まず、犬猫の殺処分の定義ですが、私は何度かこのサイトで述べています。それは以下の条件に満たしたものです。
1、便益を目的としない(例えば食用や工業原料、実験のためなどを除外する)動物の人為的な致死処分。
2、それが合法的であること。
3、制度化されており、相当数があること。
です。
さらにこれらが公的機関によって行われるものを「公的殺処分(行政による殺処分)」と私は定義しており、殺処分というワードをこのサイトで用いる場合はこの定義に従います。例えば、公的施設での殺処分数を国全体の数を統一した基準で集計して、正確な数を公表し、さらに公的な動物収容所(いわゆる「動物愛護センター」)で犬猫の殺処分を集約して行っている日本があります。
しかし公的動物収容所での公的殺処分が厳然とありながら、その数を非公開としているドイツなどの国もあります。また民間のアニマルシェルターで相当数の殺処分を行っている国が多いですが、民間のアニマルシェルターの殺処分数は正確性に欠けます。また公開していない施設も多いです。例えばイギリスの動物保護団体のRSPCAのアニマルシェルターは、内部告発者によれば「収容した犬猫のうち、健康であるにもかかわらず約半数を主に銃殺していた」のです。しかしそれ以前の公式の発表では、殺処分率は約10%と公表していました。民間のアニマルシェルターが殺処分数を少なめに公表するのは、それにより寄付金がより多く集まることを期待しているからです。
そのために、「犬猫の一次保護は行政が行い公的施設に収容する。公的な一連の殺処分や飼い主返還等の一連の処分後に民間シェルターに委譲する」制度を採用している国(イギリス、ドイツなど)や、州によって完全公立、施設は行政の所有で運用は民間、完全民間施設、といった複数の経営形態があるアメリカ合衆国などでは、アニマルシェルターでの殺処分数は正確ではありません。民間施設では、殺処分数を少なめに公表する、もしくは非公開だからです。
私は公的な動物収容所はもちろんのこと、民間のアニマルシェルターであっても、施設内での致死処分は殺処分に含めます。また犬猫を民間人ハンターや警察官が合法的に狩猟駆除や害獣駆除を行うことも殺処分に含めます。
さらに、犬猫の飼い主が民間の獣医師に安楽死処置を依頼することも殺処分に含めるのが妥当と私は思います。なぜならば、不要な犬猫を人為的に致死処分することは、施設に収容し施設内で行うことと、施設外で行うことも等しく「その犬猫が不要であるから致死処分を行う」という意味では同じだからです。
日本ですが、民間の獣医師は安楽死処置をほとんどの方が引き受けません。不要になってどうしても飼えなくなった犬猫は、日本では保健所が引き取ると制度化されているからです。日本と同様の、公的な動物収容所が不要犬猫を飼い主から直接引き取る制度があるのは、アメリカ合衆国の多くの自治体であります。(飼い主が民間の獣医師に安楽死を依頼する数も多い)。
イギリス、ドイツなどは公的動物収容所がありますが、収容するのは野良犬猫(イギリスは犬だけ)です。もちろんそこでは公的殺処分を行っていますが、飼い主から引き取る制度はありません。イギリス、ドイツなどでは、飼い主が不要な犬猫を、民間の獣医師に安楽死を依頼します。飼主が民間の獣医師に犬猫の安楽死を依頼する数を殺処分数に含めなければ、公的動物収容所が飼い主から直接不要犬猫を引き取る制度がない国の場合は、そうでない国と比較して殺処分数の数字が実数より少なくなります。
以上のように、殺処分数を公的な動物収容所(いわゆる「動物愛護センター」、アニマルシェルター)による公的殺処分数だけで国別の比較をしても無意味です。国によって制度が大きく異なるからです。公的な施設に収容した上での殺処分のみならず、「便益を目的としない」、「合法的な」、「制度化された」犬猫の殺処分は、公的施設内での殺処分だけではありません。例えばドイツでは犬などを警察官が市中で射殺する数は年間1万3,000を超えますが、これはこれらの条件をすべて満たし、なおかつ行政組織が行うものですから「公的殺処分」としてよいと思います。
また先に述べた通り殺処分は私的なものも含まれ、私設のアニマルシェルターでの殺処分、飼い主が獣医師に依頼する安楽死は含まれると思います。さらにイギリスやオーストラリアなどで数多く行われているレースドッグの殺処分も含まれるでしょう。イギリスでは毎年1万頭以上の廃レースドッグの殺処分が行われています。これは犬のトレーナーなどが自ら拳銃で殺処分することが広く行われています。これは公的な殺処分統計には反映されません。イギリスではそれが合法です。さらには犬猫の狩猟が合法的な国では、民間人ハンターが狩猟駆除で射殺することも殺処分の範疇でしょう。
私はこれらの広く解釈した殺処分について、今まで多くの資料を提示して記事にしてきました。今回は今まで取り上げなかった、「飼い主が獣医師に依頼する安楽死」について述べます。
「飼い主が獣医師に依頼する犬の安楽死」ですが、イギリスでは信頼性の高い資料があります。それによればイギリスの犬の死因の80%が獣医師による安楽死です。日本では獣医師はほとんど安楽死に応じないと聞きます(しかしそれに関する資料はありません)。イギリスでは犬の平均寿命と飼育数から概算で1年に90万程度の犬が死んでいると推測できます。そのうちの約80%が獣医師による安楽死ですので、イギリスでは1年間で70万頭以上の犬を、民間の獣医師が殺処分していることになります。この数は、2020年度の日本の犬の公的殺処分数の人口比で約250倍になります。
次回は、以下の資料から、イギリスの殺処分について考察したいと思います。なお以下の資料では、イギリスの犬の死因の約80%が獣医師による安楽死としています。
・The Veterinary Journal Volume 198, Issue 3, December 2013, Pages 638-643 The Veterinary Journal Longevity and mortality of owned dogs in England 「獣医ジャーナル(獣医学の学術誌) イングランドで飼われている犬の寿命と死亡率 」 2013年
・Canine Medicine and Genetics Longevity and mortality in Kennel Club registered dog breeds in the UK in 2014 「犬の医学と遺伝学(学術誌) 2014年の全英でケネルクラブに登録された犬種の寿命と死亡率」 2018年
(動画)
Euthanasia - Making The Difficult Decision To Put Your Pet To Sleep: PDSA Petwise Pet Health Hub 「安楽死-ペットを安楽死させるという決断をくだす」 2029年4月3日
イギリスの犬猫の安楽死に関するビデオ。北米、ヨーロッパではこの種のビデオが多く公開されており、ペットの安楽死をレクチャーするサイトも多数あります。また獣医師のペットの安楽死の広告も多数あり、「出張安楽死」を行っている獣医師も多くあります。
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