「ティアハイムが犬の購入者に去勢を義務づける契約は無効」というドイツの判決

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(Zusammenfassung)
Kastration von Hunden in Deutschland
記事、
・犬の去勢が法律で禁止されているノルウェー~去勢への意識が低いヨーロッパ、
・スウェーデンの犬の去勢率はわずか1%~去勢の意識が低いヨーロッパ、
・ドイツでは犬の去勢は違法との連邦政府の見解と司法判断~去勢の意識が低いヨーロッパ、
の続きです。
日本では「動物愛護先進国欧米では犬の不妊去勢に対する意識が高く、当然のように行われている」という情報が流布されています。アメリカ合衆国では犬の去勢(以下の記述では雌の不妊含む)の意識は高く、犬の飼主が飼犬の去勢を行うのは当然という意識はあると思います。しかしヨーロッパではそうではありません。ドイツは動物保護法(Tierschutzgesetz)の解釈上、犬猫の去勢が違法ともされています。司法判断でも「犬の去勢は動物保護法違反であるため、ティアハイムが購入者に犬の去勢を義務づける契約は無効」とされています。
サマリーで示した、日本で流布されている「動物愛護先進国の欧米では、犬猫の去勢を行うことが当然視されている。しかし日本ではそうではなく。日本は犬猫の不妊去勢の意識が低く実施率も低い」という情報ですが、このようなものがあります。いくつか例示します。
・ちばわんは「不妊・去勢手術こそが、動物愛護の第一歩である」と考えます。⇒詳しく見る 2017年7月25日
欧米先進国では、一般の飼い主の間でも不妊・去勢手術を施すのが当然のことと考えられているのに、日本ではまだまだそうなっていません。
日本が動物愛護に関して後進国と言われている理由は、それが最も大きな原因と言っても過言ではありません。
もちろん、ドイツでもノルウェーでも、不妊・去勢は動物愛護の観点から日常的に行われています。
法律で禁止などされてはいません。
・避妊・去勢手術 桜ヶ丘ペットクリニック
動物愛護先進国である欧州(イギリス、ドイツ、北欧諸国)では、自分の犬猫に避妊・去勢手術を受けさせることは、当然のことと考えられています。
上記に引用したサイトの情報は、いずれもデマです。サマリーで示した通りドイツでは、「動物保護法上、犬猫の去勢は違法である」と解釈されています。司法判断でも「動物保護法では犬の去勢は違法であるので、ティアハイムが犬の購入者に去勢を義務づける契約は無効である」とされています。
Kastration von Hunden 「犬の去勢(註 雌犬の不妊を含みます)」 2018年7月16日 から引用します。
Urteil:
Kastration von Tierheim-Hunden
Wer einen Hund oder eine Katze aus dem Tierheim übernehmen will, muß sich oft in einem Vertrag verpflichten, das Tier kastrieren zu lassen.
Eine derartige Vertragsklausel wurde durch das Amtsgericht Alzey für unwirksam erklärt.
Die Durchführung der Kastration bei einem Hund widerspricht § 1 des Tierschutzgesetzes, da ohne vernünftigen Grund dem Tier Schmerzen, Leiden oder Schäden nicht zugefügt werden dürfen.
Liegt für das Tier zusätzlich noch ein Narkose- oder Eingriffsrisiko vor, so verbietet sich ein solcher Eingriff ohnehin.
AG Alzey, AZ 22 C 903/95
判決:
ティアハイムの犬における去勢
ティアハイムから犬や猫の譲渡を受けるには、ティアハイムと契約を交わして犬猫の去勢をしなければならない。
このような契約条項は、アルゼイ地方裁判所により無効と判決されました。
犬を去勢することは、合理的な理由なく動物に痛み、苦痛または傷害を与えることはできないとの、ドイツ動物保護法1条に違反します。
動物が麻酔または外科処置の危険性がある場合でも、そのような外科処置(去勢)はいずれにしても禁止されています。
アルゼイ地方裁判所 事件番号 AZ 22 C 903/95
「ティアハイムで譲渡(販売)する犬の、新しい飼い主に対する犬の去勢を義務づける契約は犬の去勢そのものが動物保護法違反となるので無効」という裁判所の判決は、複数確定しています。それを受けてティアハイムの統括団体である、ドイツ動物保護連盟は、犬の去勢に対するガイドライン、つまり、「ティアハイムでは、犬の購入者に犬の去勢を義務づける契約は違法であるので行ってはならない」、を示しています。
ドイツ、動物保護連盟 Unfruchtbarmachung von Hunden Deutscher Tierschutzbund E.V. 2017年4月 「犬の去勢について」 から引用します。
§ 6 des TierSchG verbietet die teilweise bzw. vollständige Entnahme von Organen, worunter auch die Kastration fällt.
„Tiermedizinisch indiziert“ bedeutet, dass es im Rahmen einer veterinärmedizinisch anerkannten Heilbehandlung zur Gesundhaltung eines bestimmten Tieres unerlässlich erscheint, einen Eingriff vorzunehmen, der zur Unfruchtbarkeit des betreffenden Tieres führt.
Dementsprechend ist es auch nicht möglich, im Vermittlungsvertrag neue Halter von Tierheimhunden pauschal vertraglich zur Kastration eines Tieres zu verpflichten.
Die Rechtsprechung hat in mehreren Fällen derartige Verpflichtungsklauseln in Abgabe- bzw. Pflegeverträgen für nichtig erklärt (u.a. Amtsgericht Alzey, Az. 22 C 903/95; Amtsgericht Grimma Az. C 170/14).
Dass der Kastration eines Hundes – anders als bei der Katze, bei der eine Fortpflanzung auch bei entsprechender Aufsicht durch den Tierhalter nicht kontrolliert werden kann - aus rechtlicher Sicht immer eine Einzelfallentscheidung nach tierärztlicher Prüfung voranzugehen hat.
Pauschale Kastrationen sind rechtlich unzulässig.
Eine Ausnahme gilt nur im Rahmen gesetzlicher Verpflichtungen zur Unfruchtbarmachung im Rahmen der Gefahrenabwehr für Hunde bestimmter Rassezugehörigkeit, wie sie in einigen Landeshundegesetzen geregelt sind.
ドイツ動物保護法6条では、(脊椎動物の)器官の部分的または完全な切除を禁じており、これには去勢も含まれます。
「獣医学上必要」とは、特定の動物を健康に保つために獣医学上認められている医療の範疇で、当該動物の不妊につながる手術を行うことが不可欠であると思われることと意味します(註 6条においては例外として、当該動物の治療に不可欠の場合であれば、当該動物の器官の一部若しくは全部を切除することを認める条項があります。つまり治療目的以外の去勢手術は違法ということです)。
したがって、ティアハイムの犬を仲介(譲渡)する場合に新しい飼い主にその犬の去勢を義務づける契約はできません。
いくつかのケースでは判例により、(ティアハイムの犬の)販売契約または飼育委託(預かりボランティア)契約においては、そのような義務条項(註 購入者や預かり人にその犬の去勢を義務づけること)は無効であると判決されています(例:アルゼイ地方裁判所 事件番号 AZ 22 C 903/95、グリマ地方裁判所 事件番号 Az C 170/14)。
法的な観点から、犬の去勢は、飼い主による適切な管理によっても繁殖を制御できない猫とは異なり、常に獣医学上の判断を行う必要があります。
一般的に、犬の去勢は法的には許可されません。
例外は、いくつかの州で犬法で規制されている特定の品種(註 ドイツには各州に犬法があり「飼育繁殖等を禁止する犬種」が法律で定められています。飼育には特別の許可が必要とされ、無許可もしくは許可が得られなかった犬を州行政府が飼い主から没収して強制的に殺処分する権限が定められています)の犬の、危険防止の枠内で去勢するための、法的義務の枠内でのみ適用されます。
まとめると、ドイツ、動物保護連盟は、傘下のティアハイムに対して次のように指針を示しています。
1、猫は飼い主の制御が難しいので、繁殖制限のための去勢を飼い(買い)主に義務付ける契約は有効である。
2、犬は繁殖制限は去勢までしなくても、飼い主が制御することにより可能であり、裁判所の判決にある通り原則犬の去勢は動物保護法違反なので、飼い主(買主)に犬の去勢を義務づける契約は無効である(から行ってはならない)。
3、犬においては、犬法で定める禁止犬種は法律の規定により去勢を行わなければならない。
なお、「3、」ですが、補足して説明をしておきます。ドイツではいわゆる「禁止犬種法」が各州に定められています。その概要は、「危険とされる犬の飼育、繁殖、、輸入等を原則禁止する。無許可で飼育されている犬は行政が没収して強制的に殺処分する権限がある」です。禁止犬種を例外的に飼育するためには、犬の気質テストに合格しそのほかの条件を満たしたうえで許可を得る必要があります。その要件の1つに、「犬の去勢」があります。
一例としてハンブルク州の「犬法(州法)」から引用します。Hamburgisches Gesetz über das Halten und Führen von Hunden (Hundegesetz - HundeG) 「犬の飼育と扱いに関するハンブルク州法」 から引用します。
§ 14 Haltungsverbot, Erlaubnispflicht
(1) Das Halten gefährlicher Hunde ist grundsätzlich verboten. Wer einen gefährlichen Hund halten will, bedarf der Erlaubnis der zuständigen Behörde.
§ 15 Voraussetzungen für die Erteilung der Erlaubnis
(1) der Hund operativ kastriert ist,
14条 危険な犬の飼育の禁止および飼育許可要件
1項 危険な犬の飼育は固く禁じられています。 危険な犬を飼いたい場合は所轄官庁の許可が必要です。
15条 危険な犬の飼育許可の付与に関する要件
1項 犬が外科的に去勢されていること。
「1、」に関する補足説明はこちら。ドイツ動物保護法においては、2015年に「猫の繁殖制限に関する立法」を州などに行う下位法の委任立法に関する条文が新たに加えられました。そのために動物保護法の本改正以降は、猫に関しては「むしろ去勢はすべき」という認識に代わっています。ドイツ連邦動物保護法(Tierschutzgesetz)から引用します。
§ 13b
Die Landesregierungen werden ermächtigt, durch Rechtsverordnung zum Schutz freilebender Katzen bestimmte Gebiete festzulegen, in denen
1.an diesen Katzen festgestellte erhebliche Schmerzen, Leiden oder Schäden auf die hohe Anzahl dieser Tiere in dem jeweiligen Gebiet zurückzuführen sind und
2.durch eine Verminderung der Anzahl dieser Katzen innerhalb des jeweiligen Gebietes deren Schmerzen, Leiden oder Schäden verringert werden können.
In der Rechtsverordnung sind die Gebiete abzugrenzen und die für die Verminderung der Anzahl der freilebenden Katzen erforderlichen Maßnahmen zu treffen. Insbesondere können in der Rechtsverordnung
1.der unkontrollierte freie Auslauf fortpflanzungsfähiger Katzen in dem jeweiligen Gebiet verboten oder beschränkt sowie
2.eine Kennzeichnung und Registrierung der dort gehaltenen Katzen, die unkontrollierten freien Auslauf haben können, vorgeschriebenwerden.
13条b
州政府は域内での放し飼いの猫の保護のために法令によって、特定の地域を指定する権限を与えられています。
1.これらの猫に見られる著しい痛み、苦しみ、または怪我は、それぞれの地域で猫の放し飼いが多いことに起因する可能性があるためです。そして、
2.それぞれの地域で、これらの猫の数を減らすことにより、猫たちの痛み、苦しみ、または怪我を減らすことができます。法令で地域を指定し、放し飼いの猫の数を減らすために、必要な措置を講じます。
1管理されていない放し飼いの未去勢不妊未実施の猫は、各地域で禁止または制限されます。
2.管理されずに自由に徘徊する可能性がある飼い猫は、識別と登録が規定される可能性があります。
(画像)
Tiere im Tierheim Hunde ティアハイム・ベルリンの販売中の犬の紹介ページ。右下のアイコンの一覧で、ハサミのイラストで、Kastrierte Hunde とあるのは「去勢済みの犬」という意味です。
正方形の犬の写真をクリックすると、その販売犬の状態が一覧で右にアイコンで示されます。つまり上記の、「ハサミのイラストのアイコン」の表示がない犬は無去勢で、「無去勢のまま販売」(譲渡)するという意味です。既に去勢された犬の割合が低いことがお分かりいただけると思います。

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