アニマルホーダーの動物を押収して強制的に殺処分する規定があるドイツ動物保護法~環境省のデタラメ資料㉒

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(Zusammenfassung)
Krefelder Tierheim soll Tiere aus Kostengründen getötet haben.
環境省が2017年に公表した、ドイツに関する資料、平成 29 年度 訪独調査結果 平成 29 年 5 月 30 日 特定非営利活動法人アナイス (以下、「本資料」と記述する)、があります。本資料は全編にわたり嘘、誤りがびっしりと詰め込まれた、まさに見るに耐え難い資料です。
本資料ではドイツ動物保護法(Tierschutzgesetz)に関する記述で、「アニマルホーダーの動物は行政が押収できるが飼い主の所有権は失われない」とあります。しかしそれは誤りで、「不適正飼育者の動物は行政が売却もしくは殺処分する権限がある(つまり飼い主の所有権をはく奪できる)」と明記されています。
サマリーで示した、環境省が2017年に公表した、ドイツに関する資料、平成 29 年度 訪独調査結果 平成 29 年 5 月 30 日 特定非営利活動法人アナイス (以下、「本資料」と記述する)の、問題記述を引用します。
飼い主がアニマルホールディングになっていて、死亡したりすると一度に 100 頭とかの動物がティアハイムに収容されてきて対処できなくなる。
動物を虐待したり、ネグレクトしたりしている人には、まず行政の勧告が行われ、勧告が履行されないと、押収して動物を保護する。
その際に要する飼育コストは、飼い主に請求される。
このことは動物保護法に規定がある。
動物保護法には、苦痛を与えてはいけない、虐待してはいけないなどと法律に大枠が書いてあるので、行政が動物を押収できる根拠となっている。
ただし、押収というのは所有権がなくなるわけではなく、態度が改善されれば、その動物は飼い主に返還されることもある。
基本法において、動物は物ではないと規定されているので、単なる物のようには扱われない。(16~17ページ)
アニマルホーダー(Animal hoarder)を、「アニマルホールディング」と記載するのはお笑いですが。環境省のこの記述は、誤りです。アニマルホーディングに代表される不適正飼育者から行政が動物を押収して処分(売却や殺処分。すなわち行政にその動物の所有権が移行しなければ権限を行使できない)する権限は、動物保護法(Tierschutzgesetz)16条aに規定があります。環境省の本資料の記述では、「飼い主の動物の所有権がなくなるわけではない」とあります。しかし動物保護法の規定では、「押収時点での飼い主の所有権の喪失」と学説でも解釈されています。
また動物保護法16条aでは、不適正飼育者から動物を押収した後に行政が、その動物を強制的に殺処分する権限も定めています。環境省の本資料では、「元の飼い主の所有権が喪失しないために後に返還請求できる」とありますが、第三者に売却したり殺処分したりしたのちは返還できません。また殺処分に関する記述がないために、「いかなる場合でも不適正飼育者の動物であってもドイツでは殺処分しない」と読者を誤認させます。ドイツでは、アニマルホーダーの飼育動物は多くは殺処分一択であり、多くのティアハイムもそのような方針を示しています。でたらめもいい加減にしていただきたい。
ドイツ、動物保護法(Tierschutzgesetz)から、該当する条文を引用します。
Zehnter Abschnitt
Durchführung des Gesetzes
16a
(1) Die zuständige Behörde trifft die zur Beseitigung festgestellter Verstöße und die zur Verhütung künftiger Verstöße notwendigen Anordnungen.
2 Die Behörde kann das Tier auf Kosten des Halters unter Vermeidung von Schmerzen töten lassen, wenn die Veräußerung des Tieres aus rechtlichen oder tatsächlichen Gründen nicht möglich ist oder das Tier nach dem Urteil des beamteten Tierarztes nur unter nicht behebbaren erheblichen Schmerzen, Leiden oder Schäden weiterleben kann.
第10章
法の権限
16条a
1項 所管官庁は以下の違反を是正し、将来の違反を防止するために必要な措置を講じなければならない。
2号 行政当局は、動物の売却が法的に、または事実上の理由で不可能である場合、または行政獣医師が動物の痛み、苦しむこと、または傷病の回復が見込めない状態でしかその動物が生存できないと判断した場合は、飼い主の費用で動物を殺害して動物の苦痛を回避させることができる。
(註 この条文はアニマルホーダーなどの不適正飼育者から動物を押収して強制的に殺処分することを想定しています。日本では飼い主の意思に反して強制的に殺処分する規定は動物愛護管理法他では定めていません)
上記の動物保護法(Tierschutzgesetz)16条aに関する学説(論文)のサイトがあります。Zur Rechtmäßigkeit und Transparenz von Einziehungsanordnungen nach §16a Tierschutzgesetz 「動物保護法16条aに基づく動物の押収の合法性と透明性について」 2014年2月14日
In der Praxis und nach der Systematik des §16a Tierschutzgesetz können bei besonders schwerwiegenden Tierschutzfällen eine vorläufige Fortnahme von Tieren, eine Haltungsuntersagung und schließlich auch ein Eigentumsentzug gegenüber dem jeweiligen Halter und Eigentümer erforderlich werden.
実際には、動物保護法16条aの規定に基づく特に深刻なケースでの動物の保護に関しては、動物を暫定的に飼い主から除去することと、それぞれの飼い主に対する動物の所有の禁止と、最終的には飼い主の動物から動物を取り上げる(所有権のはく奪)も必要になる場合があります。
さらに環境省の本資料における、「基本法において、動物は物ではないと規定されているので、単なる物のようには扱われない」という記述ですが、これも誤りです。ドイツ基本法(Grundgesetz für die Bundesrepublik Deutschland 「憲法」とも訳される)では、そのような規定は一切ありません。おそらくドイツ民法(Bürgerliches Gesetzbuch)90条aの規定を本報告書作成者は誤認していると思われます。さらに解釈にも誤りがあります。それが次回記事で述べます。
(動画)
Tierschutzliga - Animal hoarding - Frau hatte über 300 Hunde. 「Tierschutzliga-「アニマルホーダーの女性は300頭以上の犬を飼っていました」 2019/12/06(ドイツ)
(参考資料)
・Tier- und Artenschutzinfos Tierheimpforzheim 「ティアハイム・プフォルツハイムHP」
Tiersammler: Die Krankheit und das Verbrechen
Die durch physische und psychologische Vernachlässigung ausgelösten Verhaltensstörungen, vernichten die Chancen auf Rehabilitierung und Neu adoption vollständig.
Für viele dieser Tiere ist die Euthanasie die einzig humane Option.
アニマルホーダー:それは疾患であり犯罪です
身体的、精神的なネグレクトによって引き起こされるアニマルホーダーが飼育している動物の行動障害は、リハビリと新しい飼い主への譲渡の可能性を完全に破壊します。
これらの動物の多くにとっては、安楽死は人道的な唯一の選択肢です。
なお環境省の本資料の誤りを指摘する記事は、「続き」にまとめてあります。
・犬などのペットの非対面インターネット販売の規制が全くないドイツ~環境省のデタラメ資料①、
・続・犬などのペットの非対面インターネット販売の規制が全くないドイツ~環境省のデタラメ資料②
・「ベルリンでは1歳未満の犬の販売を禁止した」という誤訳~環境省のデタラメ資料③
・ドイツの犬リード義務は厳しく、違反者の犬は射殺されてもやむを得ない~環境省のデタラメ資料④
・犬のリード義務が極めて厳しいドイツ~環境省のデタラメ資料⑤
・続・犬のリード義務が極めて厳しいドイツ~環境省のデタラメ資料⑥
・ドイツ、ニーダーザクセン州の厳しい犬のリード義務~環境省のデタラメ資料⑦
・続・ドイツ、ニーダーザクセン州の厳しい犬のリード義務~環境省のデタラメ資料⑧
・ベルリン州の犬の咬傷事故は日本の5.5倍~環境省のデタラメ資料⑨
・ドイツの犬の咬傷事故の多さは深刻~環境省のデタラメ資料⑩
・悪質ブリーダーに苦しめられるドイツの犬~環境省のデタラメ資料⑪
・続・悪質ブリーダーに苦しめられるドイツの犬~環境省のデタラメ資料⑫
・「動物保護に反する立法は無効」というドイツ基本法(憲法)の悶絶講釈~環境省のデタラメ資料⑬
・「ドイツは基本法(憲法)で実験動物の保護が規定された」という悶絶講釈~環境省のデタラメ資料⑭
・「ドイツは基本法(憲法)でペット動物の所有物という観点から解放された」という悶絶講釈~環境省のデタラメ資料⑮
・「ドイツでは動物は可能である限り治療が前提となる」という、環境省のデタラメ資料⑯
・続・「ドイツでは動物は可能である限り治療が前提となる」という、環境省のデタラメ資料⑰
・「ドイツでのティアハイムでの安楽死の統計はない」という環境省のデタラメ資料⑱~殺処分率36%のティアハイムが統計を公表していますが(笑い)
・「経済的理由」で収容猫すべてを殺処分したティアハイムの行為は合法~環境省のデタラメ資料⑲
・続・わなで捕らえたのちに飼犬飼猫を殺害することが合法なドイツ~環境省のデタラメ資料㉑
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