「絞殺、射殺」ティアハイムの殺処分はどこまでが合法なのか

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(Zusammenfassung)
Wie weit ist Tierheim Tötung von Tieren legal?
記事、ティアハイムでの犬の感電殺(家畜の屠殺方法)による殺処分が合法なドイツ、の続きです。
ティアハイムの殺処分の方法に関していくつかの報道があります。例えばハンブルク・ティアハイムでは犬をロープで絞殺し、動物保護法違反で代表者が起訴されています。その他には「職員を咬んで怪我をさせた犬の殺害のために警察官を呼び射殺が行われた」、「ティアハイム自ら犬を銃殺し元職員が告発を行った」などがあります。ティアハイムの殺処分の方法は、どこまでが合法なのでしょうか。なお日本で流布されている、「ドイツでは犬猫の殺処分は麻酔薬での安楽死でなければならない」はデマです。
サマリーで示した、「ティアハイムの殺処分の方法に関する報道」ですが、次のようなものがあります。
・Tierquälerei im Tierheim Süderstraße 「ティアハイム・シェーダーシュトラーセでの動物虐待」 2005年
ティアハイムの所長の指示により、ロープにより犬を殺害していたケース。本件ではティアハイムの所長が起訴され、有罪が確定しています。しかしティアハイムの所長の起訴事実は、主な罪状はティアハイムの資金を横領した経済犯罪です。
Der Trick des Tierheimchefs, dem beispielsweise auch die Hündin "Sugar" ausgesetzt wurde, um die ein monatelanger Rechtsstreit geführt wurde, besteht ganz einfach darin, den Hund von zwei PflegerInnen mit zwei Leinen in entgegengesetzte Richtung ziehen zu lassen.
Dadurch wird der Hund immer stärker am Hals gewürgt.
例えば、1ヶ月間の裁判で明らかにされた、雌犬「シュガー」でのティアハイムの所長の方法ですが、単に犬を2人の男性飼育員が2本のロープで反対方向に引っ張る(首を絞めて殺す)ことでした。
その結果、犬はきつく首を絞められて殺されます。
・Tierheim: Hund erschossen 「ティアハイム 犬の射殺」 2014年6月27日
このケースは、ティアハイムに収容していた犬がティアハイムの職員を咬み怪我をさせたため、ティアハイムは警察官を呼び、犬の射殺を依頼したという事件です。当然警察官が犬を射殺を実行したことは職務権限内で法的責任は問われていません。
Dreieich - Die Polizei hat im Tierheim Dreieich einen Hund erschießen müssen, nachdem dieser zwei Mitarbeiterinnen gebissen hatte.
Der Vorfall ereignete sich bereits am Dienstag, wie Polizeisprecher Ingbert Zacharias gestern auf Anfrage bestätigte. Nach seinen Worten handelte es sich um einen sogenannten Listenhund. Die durch Bisse verursachten Verletzungen der beiden Frauen wurden im Krankenhaus behandelt.
ドライアイヒー警察は、ティアハイム・ドライアイヒで2人の従業員が犬に咬まれた後に、犬を射殺していました。
昨日、警察の広報官である、イングベルト・ザカリアス氏に確認を求めたところ、事件は、火曜日に発生したとのことです。
ザカリアス氏によれば、射殺された犬は、いわゆる法律で飼育禁止が禁止されているリストの犬(ドイツ連邦法とドイツ全州における州法においては、特定の闘犬品種とその雑種の飼育を原則禁止しています。大変厳しい飼育基準を満たさなければ、犬は押収されて殺処分されます)でした。
2人の女性の、問題の咬傷の傷害ですが、女性たちは病院で治療を受けました。
・Tierheim tötet Hunde 「ティアハイムは犬を殺す」
これはドイツの動物関係のフォーラムです。ティアハイムの元従業員が、勤務先のティアハイムが「譲渡が難しい犬種」であることを理由に射殺していたことが暴露されています。この件について元従業員は、「刑事告発を行う」と述べています。ティアハイムの実名が公開されていますので、信ぴょう性は高いと思われます。
また、Wer weiß in wie vielen.「誰もがこのようなことが多く起きていることを知っている」とありますので、ドイツのティアハイムで犬などを射殺することは珍しいことではないと読み取れます。しかし今のところ、ティアハイムが収容動物を射殺したことにより起訴された、有罪になった例は確認できていません。
Angeblich zahlt das Amt für Fundtiere 4 Wochen Unterhalt an die private Pension .
Da dort nicht vermittelbare Hunde einfach erschossen und auf dem angrenzenden Acker verscharrt wurden!
Desweiteren werden wir Strafanzeige wegen groben Verstoßes gegen das Tierschutzgesetz stellen.
Wer weiß in wie vielen.
犬の飼育費用の4週間分が、野良犬迷い犬を管理する行政機関から支払われているとされています(註 行政が収用を委託した動物に対しては、飼育費がティアハイムに一定期間公費で支給されます)。
譲渡できない犬は、単に射殺されて隣接する空き地に埋められました!
私たちは(このティアハイムの行為が)、ドイツ連邦動物保護法にすべてが違反するとして、刑事告発を行います。
誰もが、このようなことが多く起きていることを知っています。
これらの事件からうかがえることは次の通りです。「1、ドイツのティアハイムにおいては絞殺による殺処分は違法である」。「2、ドイツのティアハイムにおいては、銃殺での殺処分有罪になった事件は確認できていないが、実際は行われている。銃殺は必ずしも違法とは言えないと思われる」です。
「2、」の銃殺ですが、イギリスでは保護施設が収容した犬猫などを殺処分する方法として、かなり一般的に行われています。例えばイギリスの権威ある動物保護団体、RSPCAのアニマルシェルターでは、健康上問題のない犬猫を数千頭単位で、主に家畜用と殺銃で殺処分していました。私はこの件について記事にしています。ペットを大量銃殺していた、最も権威あるイギリスの動物愛護団体
では、ティアハイムの殺処分の方法では、何をもって合法違法が線引きされるのでしょうか。これは前回記事でも述べましたが、ドイツ動物保護法4条1項において、「殺害前に原則として意識喪失状態であること」か否かです。「絞殺」の場合は、死に至るまで意識があり、時間が長くかかり苦しむということで、本条文の規定に反するということでしょう。
一方銃殺では、頭部の射撃で脳組織を破壊すれば一瞬で意識喪失状態に至ります(イギリスでは死を確実にするためにはその後にピッシング(脊髄切断)を行って速やかに死に至らしめることが必要とされています)。頭部への銃撃による殺害は、ドイツでは牛の一般的なと殺方法です。そのために銃殺は、ティアハイムでも合法と判断されているのだと私は推測します。以下に、再びドイツ動物保護法(Tierschutzgesetz)の、該当する条文を引用します。
Dritter Abschnitt
Töten von Tieren
§ 4
(1) Ein Wirbeltier darf nur unter wirksamer Schmerzausschaltung (Betäubung) (*1)in einem Zustand der Wahrnehmungs- und Empfindungslosigkeit oder sonst, soweit nach den gegebenen Umständen zumutbar, nur unter Vermeidung von Schmerzen getötet werden.
第3章
動物の殺害
§4
(1)脊椎動物は効果的な疼痛除去(意識喪失、気絶)の状態の感覚および無感覚状態か、あるいはそうでなければ所与の条件下で合理的な範囲内で苦痛を回避する方法でしか殺すことができない。
(*1)この条文の、Betäubungを「麻酔」と訳している文献が散見されますが誤訳です。Betäubungは麻酔という意味も含みますが、「意識がない状態」、「気絶した状態」を広く含む、広義の「意識喪失」を意味します。麻酔に限定して用いるのならば、Anästhesie、麻酔が効いている状態は、Anästhesiezustand、またはAnesthesia Zustandです。
しかしドイツ動物保護法の殺害に関して規定している条文、4条1項は、日本で著しく誤った解釈で流布されています。「ドイツでは犬猫の殺処分(註 家畜のと殺でも麻酔薬による安楽死でなければならないとする資料も散見されます)は、必ず麻酔薬による注射の安楽死でなければならない」です。しかし先の述べた通り、ドイツ動物保護法4条1項における、「脊椎動物の殺害」の規定は、「殺害前に原則として意識を喪失させているか無感覚状態であること(それが不可能ならば状況に応じて合理的な範囲で苦痛除去に配慮した方法であること)」です。
「ドイツでは犬猫の殺処分は麻酔薬による安楽死でなければならない(家畜の屠殺も含める)」というデマが日本で定着している原因は、ドイツ獣医師を詐称している、京子アルシャー氏のドイツ動物保護法の誤訳がその1つだと私は推測しています。京子アルシャー氏は、第10回 ドイツ 殺処分ゼロの理由(損保会社が運営していたサイト。現在は削除されている)で次のように述べています。
現在ドイツの動物保護法では動物の殺行為について以下のように明確に定められている。
§4(1)Ein Wirbeltier darf nur unter Betäubung oder sonst, soweit nach den gegebenen Umständen zumutbar, nur unter Vermeidung von Schmerzen getötet werden.
(脊椎動物は麻酔下においてのみあるいは状況により痛みを回避することでのみやむを得ず殺されることとする)(*1)
この法律に則り、犬や猫を殺すにはまず獣医学的所見という正当な理由が必要である。
現実的な例を挙げると、ティアハイムに収容された犬や猫を一人の獣医師が不治の病と診断のうえ安楽死を決定したとすると、安楽死させられた犬や猫の死体は大学の病理検査に送られ、そこで安楽死を決定した獣医師と同じ病理結果を得られなければ正統な理由なく動物を殺したということで起訴の対象となる(註 今からでも京子アルシャー氏に、そのような裁判例を1例でも挙げていただきたい。ドイツ連邦司法省の判例データベースでは1つも確認できていません)。(*2)
また例え不治の病だとしても酷い痛みを伴わず投薬など治療を継続することで生活に支障がないとされる動物は安楽死の対象にはならない。
それでも、やむを得ず動物を殺す際はかならず安楽死でなくてはならない。
現在ドイツの動物保護法から読み取ると安楽死とは「痛みと苦しみを伴わない死」のことであり、家畜の堵殺のみならず犬の場合も麻酔薬を用い痛みと苦しみを回避することでのみ殺すことが許される。(*3)
(*1)この記述ですと、「ドイツでは脊椎動物(魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)の殺害は、すべて回復不能の傷病の苦痛を取り除く目的でしか殺害できず、かつ安楽死でなければならない」という意味になります。ドイツで食されているニシンは、すべて末期の傷病で麻酔薬で安楽死されたものか自然死したものなのでしょうか。中毒死したドイツ人がいないことが不思議です。正しい訳は、「脊椎動物は意識喪失下または(それが不可能な場合は)、所与の状況下で合理的な範囲で苦痛を回避した方法でのみ殺害ができる(拙訳)」です。つまり「脊椎動物を殺す場合は麻酔などであらかじめ意識を喪失させているか、それができない場合は状況に応じて合理的な範囲で苦痛を回避する方法でしか殺害できない」ということです。
(*2)ティアハイムの統括団体である、ドイツ動物保護連盟(Tierschutzbund)はティアハイム運営指針(Tierheimordnung des Deutschen Tierschutzbundes)を出しており、「傷病を理由とする動物の安楽死は獣医師1人の判断でできる」としています。
(*3)動物の安楽死用の麻酔薬、ペントバルビタールは毒性が強く、本薬により安楽死された家畜の肉を食べれば、かなりの割合で人が死にます。それ以前にEU(EUに限らずほぼすべての国で)では、医薬品成分が残留した食肉の流通を禁じています。
この京子アルシャー氏の、「ドイツでは犬など(家畜のと殺においても)の殺害では、麻酔薬による安楽死でなければならない」ですが、日本の動物誤活動家らの、「注射による犬猫殺処分」の執着をもたらしました。「二酸化炭素死による殺処分の反対」です。「注射による薬剤投与による殺処分」を、テロまがいで要求した動物愛護家らもいます。串田誠一衆議院議員は昨年の国会質問で、「欧米では二酸化炭素による殺処分を禁じており、注射による安楽死しか行われていない」と嘘発言しています(この発言の根拠は、杉本彩氏が講師を務めた「殺処分ゼロ議員連」での勉強会のようですが)。
二酸化炭素による犬猫殺処分を法律で禁止しているのは、アメリカの州の一部です。アメリカ、カナダでは現在も多くの州で行われています。またイギリス、ドイツは二酸化炭素死を法律では禁じていません。行われていないだけです。イギリスやドイツでは犬猫の銃による殺処分や、ドイツでは犬の感電殺(電気スタニング)が違法ではないと検察庁が判断しました。必ずしも欧米先進国が、犬猫殺処分で麻酔薬の注射による安楽死を行っているわけではありません。
現在日本では、動物の安楽死に用いられるペントバルビタールの供給がストップしています。しかし日本の動物愛護活動家らが注射による薬剤投与での殺処分方法に固執するあまり、実は全く安楽死とは言えない筋弛緩剤の注射での単独投与による犬猫の殺処分が、日本の公的機関で行われています。
注射による薬剤投与が必ずしも安楽死ではありません。その薬剤の薬理作用によります。筋弛緩剤は筋肉の動きを止めるだけで、意識を喪失させることはありません。したがって意識下での大変苦しい窒息死です。現に、多くの国で準拠されている、「全米獣医師会 動物の安楽死ガイドライン2020年版」(AVMA Guidelines for the Euthanasia of Animals: 2020 Edition*)では、二酸化炭素、感電殺、銃殺は安楽死として認めています。しかし、筋弛緩剤の単独投与は「動物の安楽死方法として認められない」と明記されています。ニセ獣医師京子アルシャー氏の、ドイツ動物保護法の誤訳は、本当に有害と言わざるを得ません。
(動画)
Rind wird betäubt 「牛は気絶する」 2011/02/27公開(閲覧注意)
betäubtは、「意識を喪失した状態」です。Betäubungは左の名詞形で「意識を喪失した状態、気絶した状態(広くは麻酔が効いているとの意味も含みますが)」です。ドイツの法定の牛のと殺方法は、家畜用と殺銃でまず脳組織を破壊し、その後に放血させて失血死させます。ドイツ動物保護法4条1項ではこの単語が出てきますが、京子アルシャー氏の「家畜のと殺は麻酔薬を用いた安楽死でなければならない」が誤訳であることがお分かりいただけると思います。
イギリスでは、この家畜用と殺銃で、動物保護施設が多くの犬猫を殺処分しており合法です。ドイツでも「ティアハイムが犬を銃殺した」という報道がありますが、ティアハイムが収容動物を銃殺したことで刑事訴追を受けた報道及び判例は確認できていません。
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