「注射は安楽死」という無知蒙昧~二酸化炭素の殺処分反対は反動物福祉となった

Please send me your comments. dreieckeier@yahoo.de
Bitte senden Sie mir Ihre Kommentare. dreieckeier@yahoo.de
メールはこちらへお寄せください。 dreieckeier@yahoo.de
Domestic/inländisch
記事、二酸化炭素死は安楽死である~二酸化炭素の殺処分反対は反動物福祉となった、の続きです。
「二酸化炭素死は安楽死ではないから反対」という、犬猫愛護(誤)活動が数年来先鋭化していました。そのために多くの動物愛護センターは二酸化炭素殺処分の設備を廃棄したりして、「動物愛護の先進度」をアピールしていました。現に、二酸化炭素による殺処分を廃止したとする自治体が多数あります。しかし実はむしろ二酸化炭素による殺処分を廃止したことにより、より苦痛な殺処分方法が採用され、動物福祉の後退を招いています。それは安楽死に用いる麻酔薬、ペントバルビタールの入手が困難になり、代わりに筋弛緩剤の単独投与で殺処分を行う愛護センターが出てきているからです。筋弛緩剤の単独投与による致死処分は安楽死ではありません。苦痛を伴う死です。
前回記事では、日本で行われている公的殺処分のうち、・二酸化炭素死と、・ペントバルビタール(麻酔薬)の注射、がいずれも多くの国で準拠されている、「全米医師会 動物の安楽死におけるガイドライン 2020年版(「以下、全米獣医師会安楽死ガイドライン」と記述する)」AVMA Guidelines for the Euthanasia of Animals: 2020 Edition*)で推奨される安楽死方法であることを述べました。
しかし日本では動物愛護(誤)活動家らが、「二酸化炭素による殺処分は安楽死ではない。苦痛を伴う窒息死だ。全廃して注射による安楽死に変更しろ」と、公的機関(愛護センター)に圧力をかけています。そのために多くの公的機関(愛護センター)は二酸化炭素による殺処分を廃止し、二酸化炭素の殺処分設備を廃棄したところもあります。
残念ながら、動物愛護(誤)活動家らは無理蒙昧なために、「薬剤の注射であればすべて苦痛がない安楽死」としか理解していないようです。前回記事でも述べたことですが、安楽死の定義とは、「動物の苦痛を最小化、もしくは排除する手法で、人為的に動物の寿命を終わらせること」です。具体的には麻酔下(痛みが遮断されている、もしくは意識喪失状態)で殺処分を行うことです。ですから注射での薬剤投与であっても麻酔効果がない殺処分方法であれば、それは安楽死ではなく虐待死です。
例えば前回記事で取り上げた、ペントバルビタールという麻酔薬を注射で投与する方法は麻酔状態で死に至るために安楽死といえます。全米獣医師会も推奨する安楽死として認めています。現に多くの国でペントバルビタールは、犬猫などの動物の安楽死薬として広く用いられてきました。
しかし、そのペントバルビタールが日本などで入手ができなくなっているのです。ペントバルビタールの生産国は主にドイツなどのEUに属する国です。ドイツが死刑が疑われる用途にペントバルビタールを不正輸出したことにより、EUは域外へのペントバルビタールの輸出をさらに厳格化しました。EUは死刑制度を全廃し、他国にも死刑の廃止を求めているからです。以来、日本ではペントバルビタールが入手できない状態が続いています。
そのために、一部の公的施設(愛護センター)は、ペントバルビタールに代わり、筋弛緩剤の注射で犬猫を殺処分するようになりました。先にも述べたことですが、安楽死とは「麻酔下(痛みが遮断されている、もしくは意識喪失状態)で殺処分を行うこと」です。筋弛緩剤の薬理効果は、「神経・細胞膜などに作用して、筋肉の動きを弱める医薬品」です。筋弛緩剤を投与されれば呼吸筋がマヒして呼吸ができなくなり、窒息死します。筋弛緩剤は意識を喪失させることはありません。脳細胞は筋肉ではないからです。
筋弛緩剤による殺処分は意識下の窒息死で、大変苦痛な、残酷な殺処分方法です。現に、全米獣医師会安楽死ガイドラインにおいても「筋弛緩剤による殺処分は安楽死ではなく許容できない」と明記されています。「全米医師会 動物の安楽死におけるガイドライン 2020年版(「以下、全米獣医師会安楽死ガイドライン」と記述する)」AVMA Guidelines for the Euthanasia of Animals: 2020 Edition*)全米獣医師会の「動物の安楽死ガイドライン」から、該当する箇所を引用します。
UNACCEPTABLE AGENTS
Magnesium sulfate, potassium chloride, and neuromuscular blocking agents are unacceptable for use as euthanasia agents in conscious vertebrate animals.
許容できない薬剤
硫酸マグネシウム、塩化カリウム、および神経筋遮断薬(neuromuscular blocking agents 筋弛緩剤)は意識下の脊椎動物での安楽死剤としての使用は許容できません」。(40ページ)
つまり動物愛護(誤)活動家らの、「二酸化炭素による殺処分は残酷で安楽死ではないから廃止し、注射による安楽死に変更せよ」という、公的機関(愛護センター)への圧力は、むしろ殺処分における」より苦痛な手法の採用となり、結果として動物福祉の著しい後退、虐待的な殺処分の実施につながったということです。
まさに無知とは恐ろしい。さらに今でも「二酸化炭素による殺処分を廃止しろ」と、テロまがいの活動を繰り広げている愛誤すらあります。残念なことに末端の愛誤のみならず、政治家などの影響力のある方々も同様です。まさに無知蒙昧な愛護(誤)活動家らが動物福祉の後退をまねている、狂った日本といえます。
(画像)
衆議院インターネット中継 開会日 : 2019年2月27日 (水) 会議名 : 予算委員会第六分科会 串田誠一(日本維新の会) より
この中で串田誠一議員は次のように質問しています。「二酸化炭素によるガス室での犬猫殺処分を行っているのは日本だけである。欧米は、犬猫の殺処分は、すべて注射による安楽死である。日本も、二酸化炭素による殺処分を法律で禁止すべきである」。
串田誠一議員の本国会質問を通して聴いたところ、串田誠一議員は「注射による薬剤投与の殺処分はすべて安楽死」という認識のようです。この方は弁護士で文系ですが、国会質問を行うのであれば、動物の安楽死の手法ぐらいは事前に調べるべきでしょう。なお串田誠一議員は「殺処分ゼロ議員連での勉強会で学んだ」とも発言していますが、講師は杉本彩氏です。杉本彩氏は「日本以外の先進国ではペットショップがない」などという卒倒しそうな発言を繰り返している無学な方です。

(画像)
Gas Chamber Euthanasia: What you might not know about your local animal shelter 「ガス室での安楽死:それはもしかしたら、あなたが地元のアニマルシェルターについて知らないものかもしれません」 2016年5月12日 から
この図表を見る限り、states that do not use gas chambers and have legislation banning the use 「殺処分ガス室を使用せず、使用を禁止する法律がある州」は22州なのですが。記事本文では25州とあります(?)。またガス室による殺処分が行われてる州は10州なのですが。それと未確認州ですが、ガス室による殺処分が行われている可能性は否定できません。
アメリカでは約半数の州で、ガス室(二酸化炭素もしくは一酸化炭素)による、犬猫の殺処分が合法で行われています。後ほど取り上げますが、アメリカの州法では多くの州で現在もガス室での殺処分が合法です。しかし筋弛緩剤の注射による殺処分は違法で1州も認められていません。

(参考資料)
・動物の殺処分、ガス室と静脈注射の特徴
・筋弛緩剤の投与による動物の殺処分は安楽死にあたるのでしょうか。
・「FAQ:筋弛緩剤の投与による動物の殺処分は安楽死にあたるのでしょうか。」と「FAQ:動物の殺処分、ガス室と静脈注射の特徴」に米国獣医学会の研究会報告を紹介する日本獣医師会のページを追記しました。
- 関連記事