徳之島のTNRは歴史的愚策だった~増え続ける未去勢猫

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奄美群島では、猫による在来希少種の捕食被害が深刻です。TNR団体が奄美群島のうちの徳之島で2014年から猫のTNRを行っています。その総括と言うべき学術論文が2019年11月7日に発表されました。結論から言えば、徳之島のTNRは歴史的愚策です。2014年のTNRの開始以降も、猫(ノネコ、野良猫に関わらず)捕食圧は深刻です。また継続的なTNR活動におかかわらず、不妊去勢された猫の比率は13%と低水準で増えていません。さらに条例で禁止されているにもかかわらず、野良猫への給餌が行われています。これはむしろ在来生物の捕食圧を高めるのです。
希少な固有種が多く生息し、学術的価値が高い奄美群島。この奄美群島では、希少固有種のアマミノクロウサギなどが人が持ち込んだ猫により捕食圧を受けています。奄美群島の一つ、徳之島における希少動物の猫による捕食対策を時系列にまとめました。
2014年:環境省は、2014年に徳之島におけるノネコの捕獲事業(譲渡先が見つからなければ殺処分の可能性がある)を開始しました。一方それに反対する日本のTNR団体「(財)どうぶつ基金」が、徳之島でTNR事業を開始し、現在も継続しています。
2017年:しかし徳之島においては、TNR事業開始後もアマミノクロウサギ等の希少生物が猫に捕食される例が確認されましたそのことを重く見た環境省は、徳之島を含めた奄美群島でのノネコ捕獲事業の強化を公表しました。
2019年:猫の捕獲に反対するTNR団体と、猫の捕獲を強化の方針を打ち出した環境省が対立しています。
徳之島においては、TNRが「猫の捕獲(殺処分)」の代替案になりうるのでしょうか。つまり「捕獲(殺処分)」を行うのと同等に期待できる、「島内での猫による希少生物の捕食を減少させることができた」のでしょうか。この点について総括した、詳細な分析を行った学術論文が2019年11月7日に発表されました。
結論から言えば、徳之島におけるTNR事業は、「猫による希少生物の捕食圧を減少させる効果」は全くありませんでした。むしろTNRをすることで人口給餌される猫がおり(条例では飼い猫以外の猫への給餌は禁止されているのですが)、人口給餌は逆に野生動物への捕食圧を高めるという結論が導き出されました。それがこちらの論文です。Predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on Tokunoshima Island 「徳之島における人間が援助しているイエネコ種による絶滅危惧種の捕食」 2019年11月7日
この論文の要旨は次の通りになります。Predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on Tokunoshima Island 「徳之島における人間が援助しているイエネコ種による絶滅危惧種の捕食」 2019年11月7日
(現状)
1、徳之島の飼い猫以外の猫は、ノネコ(feral cat)と野良猫)(stray cat)が明確に区分できるという前提である。
2、野良猫は希少生物の捕食はしないとの前提で、TNRが行われている。捕獲(~殺処分)はノネコのみ。
3、(条例で禁止されているにもかかわらず)野良猫への給餌が行われている(糞の分析調査)。
(課題)
1、徘徊するノネコ(feral cat)と野良猫(stray cat)は生息域を自由に越境し、野良猫も希少生物を捕食している(糞の分析調査)。したがって両者は区分できない。
2、自由に徘徊している猫の不妊去勢済み猫の比率は13%と低く、TNRが効果をあげたとはいえない。
3、禁止されているにもかかわらず野良猫への餌やりは行われており、それはむしろ希少生物の捕食圧を高めている。なぜならば人口給餌により猫は助けられ、それらの猫が希少生物の生息地の自然地域に移動するからである。
(対策の提言)
1、飼い猫の完全室内飼いを行うこと。
2、島の猫対策はTNRではなく、捕獲(殺処分も含める)をするべきである。
3、室内飼いの飼い猫以外の猫への給餌を完全に断つこと。
各論については、次回以降の記事でいくつかを取り上げます。先に、私がこの論文の記述で驚愕したことを述べておきます。この論文によると、2018年に徳之島で捕獲した猫のうち、不妊去勢済みを証明する耳カットがあった猫は、全体の13%に過ぎなかったということです。その記述を、Predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on Tokunoshima Island 「徳之島における人間が援助しているイエネコ種による絶滅危惧種の捕食」 から引用します。
According to the local Tokunoshima Island government, 2,797 “stray” cats were captured and sterilized from April 2014 to March 2018.
However, only 13% of the captured cats were ear-tipped, and this proportion is not increasing.
The results imply the huge number of cats on the island and their successful reproduction.
We assume that stable and inexhaustible human-derived resources enable cats to sustain this large population.
地元の徳之島自治体によると、2014年4月から2018年3月までに2,797匹の「野良猫(stray cat)」が捕獲され、不妊去勢されました。
しかし捕獲された猫のうち、わずか13%しか不妊去勢済みを示す耳カットがなく、この割合は増えていません。
この結果は、島にいる膨大な数の猫と、それらの猫が繁殖に成功しているこを暗示しています。
安定的で継続的な、人由来による餌により、猫はこの大きな個体群の維持が可能であると考えられます。
2014年から現在にかけて継続してTNR事業が行われているにもかかわらず、経年を経ても自由に徘徊する猫の不妊去勢率は上がりませんでした。その要因については論文では触れていません。私は次のように分析します。
1、当初の野良猫の数の推計値が過少であった。そもそも野良猫とノネコは明確に区分できず、それらの双方の生息域を自由に行き来している。「野良猫」の推計値を基にしてTNRの必要数を計算したとしても無意味。
2、未去勢猫が不妊去勢済み猫に対して生存競争で優位になり、不妊去勢猫が早く死んだ。それを未去勢猫の繁殖個体によりすぐに充当された。
3、TNR事業を行った団体の、TNR数の公表が過大であった。
いずれも可能性が考えられますし、1、2、3の複合要因かもしれません。しかし私は「2」の要因が最も大きいと思います。この事実、すなわち「5年を経ても島内の不妊去勢済み猫の比率は上がっていない」というだけでも、徳之島におけるTNR事業が完全に失敗であったことを示しています。TNR団体は「TNRにより野良猫が減少し、いずれは島の希少生物の捕食は軽減~なくなる」と主張してこの事業を進めているからです。
TNR団体による記事、徳之島ごとさくらねこTNR事業 2014年10月04日においては、「徳之島にいる猫(推定3,000匹)の不妊去勢手術を実施する」と記述しています。おそらくこの3,000匹とは、「野良猫(stray cat)」のみの数であり、ノネコ(feral cat)を含めていないのではないでしょうか。
同団体の別の記事、第6回徳之島ごとさくらねこTNR 新聞記事 2016年02月02日 においては、
①TNRの期間 2014年~2016年にかけての約3年間
②TNR実施数 2,140(猫の生息総数3,000匹の71%)
との記述があります。そして同団体によれば、その後も徳之島でTNR事業を続けているとのことです。2016年時点で「島の(自由に徘徊している猫)の71%が不妊去勢され、その後もTNR事業が続けられ、その結果、2019年の不妊去勢猫の比率が13%と言うことはいずれにしても、完全にTNRにより猫の生殖抑制に失敗したということです。徳之島におけるTNRは、まさに歴史的愚策といっても差し支えないでしょう。
(動画)
徳之島ごとさくらねこ一斉TNR 2017/09/20
この動画では、徳之島のTNR団体が「アマミノクロウサギ猫被害死体ゼロに」としています。しかし今回取り上げた論文では、ノネコ野良猫とも、糞分析の結果から、アマミノクロウサギを含めて、在来希少生物が猫の捕食被害を受けているを証明しています。それは次回以降の記事で書きます。それにしても「悪性外来種とその捕食圧を受けている在来生物との共生を目指す」とは意味不明です。
(参考資料)
・ノネコから解放されたアマミノクロウサギ 〜駆除による回復評価〜 Population release of Amami rabbit by feral cat control in Tokunoshima island 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
・2017年02月01日 (お知らせ)ネコによるアマミノクロウサギの捕食について(徳之島) (環境省)
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