続・アメリカ合衆国ではTNRが一般的に行われているという、大手シンクタンク(三菱リサーチ&コンサルティング)のデタラメ記述

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(summary)
Governments supporting trap–neuter–return in USA
記事、アメリカ合衆国ではTNRが一般的に行われているという、大手シンクタンク(三菱リサーチ&コンサルティング)のデタラメ記述、の続きです。
広島県が三菱UFJリサーチ&コンサルティングに委託して作成した、動物愛護管理に係る海外調査報告書 平成29年8月 調査機関 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(著者 三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究員 武井泉氏 以下、「本報告書」と記述する)、ですが、これはドイツ、イギリス、アメリカ合衆国の動物愛護管理に関する調査報告書です。この報告書はすべてにわたり、嘘誤り偏向がびっしりと記述され、正確な記述はほぼないという、目を覆いたくなるほどひどい内容です。すでにドイツ、イギリスに関しては記事にしました(「続き」をご覧ください。過去記事をすべてリンクしてあります)。今回記事は前回記事に続き、アメリカ合衆国のTNRに関して述べます。本報告書の記述、「アメリカでは野良猫の場合は、TNR対策を採り野良猫の殺処分を抑制するという取り組みが一般的である」が嘘誤り、もしくは偏向であることを述べます。
動物愛護管理に係る海外調査報告書 平成29年8月 調査機関 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの、アメリカ合衆国に関する問題となる記述には、次のようなものがあります。
野良犬・野良猫へのTNRの実施状況
アメリカでは、野良猫(stray/feral cats)の場合は、日本と同様、猫を捕獲(trap)、不妊去勢手術を施して(Neuter/spay)、元の場所に戻す(Return/Release)、いわゆるTNR対策を採り野良猫の殺処分を抑制するという取り組みが一般的である。
1990年代には各州の条例で野良猫の管理のため、TNR条例が施行されるようになったという。
全米で500の自治体がTNR支持の条例を施行していることが明らかになっている。(40ページ)
私は常々嘘つきは、「一般的である」、「圧倒的な」、「ほとんど」と言った形容動詞、形容詞を多用すると述べてきました。本報告書でも、「アメリカは野良猫の管理はTNRが一般的」との記述があります。「一般的」とは、例えばアメリカ合衆国の、TNRを法制化している州、自治体の人口が、アメリカ合衆国全土の人口に占める割合はどうなのでしょうか。
本報告書の著者、武井泉氏の記述、「1990年代には各州の条例で野良猫の管理のため、TNR条例が施行されるようになったという」ですが、意味不明な記述で理解に苦しみます。が、「武井氏はアメリカ合衆国の州を自治体と認識しており、1990年代に全州でTNRに関する条例(州法?)が施行されたと理解して話を進めます。
となれば、武井泉氏の記述は真っ赤な嘘、誤りです。前回記事で述べた通り、アメリカ合衆国においては、2019年現在、TNRに関して法制化を行った州は、50州のうちわずか3州にすぎません(コネティカット州、デラウェア州、ユタ州)。しかもその州法が成立施行したのは、いずれも2014年(各州法原文を確認しています)です。
さらに、「全米で500の自治体がTNR支持の条例を施行していることが明らかになっている」とあります。しかし「500の自治体がTNR支持の条例を施行している」という事実は、これは武井泉氏がヒヤリングを行ったとされる、アメリカ合衆国の民間TNR団体の、Alley Cat Allies のHPや出版物などのいずれにも記述がありません。また、他の資料にもその事実を確認することはできませんでした。
前回記事で引用した、List of governments supporting trap–neuter–return)によれば、まず州法でTNRを規定している州は4州と先にのべた通りです。さらにアメリカ合衆国でTNRに関する自治体条例がある自治体数は、109自治体(コロンビア特別区を含む)とあります。
武井泉氏の、「アメリカ合衆国では500の自治体がTNRを支持する条例がある」が正しいと仮定するとしましょう。にアメリカ合衆国は自治体の規模が概して小さく、数が非常に多いのです。アメリカ合衆国における独立自治体は、約8万7,500あります(アメリカ合衆国の地方行政区画 「アメリカ合衆国の50州で計3,100ほどの郡がある。各州には郡とは別の地方行政区画として各種の自治体があり、これらは日本における市町村レベルの機能とほぼ同等で、合衆国全体で計84,400ほどある」)。8万7,500もある自治体のうち、わずか500余りの自治体がTNRを支持する条例があったとしても、それが一般的と言えますか。
また先に述べた通りアメリカ合衆国では、TNRに関する州法がある州は、50州のうちわずか3州です。したがって、「アメリカ合衆国ではTNRが一般的」とするのは不適切です。
アメリカ合衆国では、約半数の23州においては州のTNR制度がなく、かつTNRに関する条例を持つ傘下の自治体が皆無です。さらにアメリカは日本と異なり、野良猫への給餌や、事実上の野良猫への医療行為などのかかわりを禁じている自治体が数多くあります。処罰規定も厳しく、これらの行為を懲役刑をもって処罰する条例を持つ自治体が多数あります。
このような自治体では、州法や自治体条例でTNRを制度化していなければ、TNRを行うことは刑事罰の対象となるのでできません。日本は、野良猫への給餌や医療行為などのかかわりを禁じている自治体はほぼ皆無です。また禁止する条例がある自治体であっても処罰が軽く、さらに処罰されることはほぼありません。
ですから日本のように、TNRを制度化していない自治体内で勝手にTNRをすることは、アメリカ合衆国ではできないのです。アメリカ合衆国でTNRを州法により制度化している3州と、それ以外の州の、自治体条例でTNRを制度化している自治体が仮に500余りあったとしても(500自治体としても極めてまれ。アメリカ合衆国全土の自治体数は8万7,500自治体とされています。さらに、「アメリカ合衆国でTNRを条例により制度化している自治体数を109とする資料もあります)、それ以外の多くの自治体では、日本のように勝手にTNR活動はできないのです。繰り返しますが、アメリカ合衆国においては、「合法的にTNR活動ができる」州、自治体は、きわめてわずかしかないのです。したがって本報告書の、「アメリカでは、野良猫(stray/feral cats)の場合は、日本と同様、猫を捕獲(trap)、不妊去勢手術を施して(Neuter/spay)、元の場所に戻す(Return/Release)、いわゆるTNR対策を採り野良猫の殺処分を抑制するという取り組みが一般的である」は、明らかに誤り、嘘です。私としては、「一般的」とは、「~9割程度普及している」と理解していますので。
次回以降の記事では、アメリカ合衆国においては、条例などでTNRを合法化していない自治体では、「TNRを行う」ことが懲役刑を伴う犯罪である具体例」をあげます。実際に刑務所で服役した人も何人かいます。
(追記)
動物愛護管理に係る海外調査報告書 平成29年8月 調査機関 三菱UFJリサーチ&コンサルティング、ですが、本報告書の内容の検証を、私はさるところから昨年依頼を受けました。すでに1年近くを経過しています。
なかなか進まなかったのは繰り返し述べた通り、本報告補の嘘誤り偏向があまりにも多いことが大きな要因ですが、本報告書の文章が曖昧で、かつ支離滅裂なこともあります。
例えば前回記事でも述べたことですが、「(アメリカ合衆国においては)1990年代には各州の条例で野良猫の管理のため、TNR条例が施行されるようになったという」の記述は意味不明です。「アメリカ合衆国では、1990年代にすべての州がTNRに関する州法が施行された」という意味なのか、「アメリカ合衆国では1990年代に、すべての州の自治体で自治体条例が施行された」という意味なのか、分からない文章です。繰り返しますが、州は自治体ではありません。州の立法は州法(State Law)であって、自治体条例(Local government law)ではありません。しかし本報告書の誤りを指摘するためには、「(アメリカ合衆国においては)1990年代には各州の条例で野良猫の管理のため、TNR条例が施行されるようになったという」の記述の意味をまず特定する必要があります。この特定という作業がかなり困難を極めました。
なお、各の意味ですが、「一つ一つのどれもがみな」という意味です。繰り返しますが、アメリカ合衆国50州においては、現在TNRに関する州法の規定があるのは4州です。いずれの州においても、TNRに関する州法が施行されたのは2014年です。47州では、TNRに関する州の立法はありません。さらに23州では、州自体にTNRの立法はなく、TNRに関する条例を定めた傘下の自治体が皆無です。したがって、「(アメリカ合衆国においては)1990年代には各州の条例で野良猫の管理のため、TNR条例が施行されるようになったという」という記述は、どのように解釈しても、嘘誤りです。
大手のシンクタンクの研究員が、ドイツやアメリカの州を「自治体」としていることなどは、驚きを禁じえません。このような噴飯資料でも、県が公費を支出し、公文書としてその記述を採用しているのは、動物愛護という特殊な分野だけなのでしょうか。となれば、日本の動物愛護は、調査研究という面に関しては、後進国どころではない、まさに暗黒です。
(画像)
動物愛護管理に係る海外調査報告書 平成29年8月 調査機関 三菱UFJリサーチ&コンサルティングから。
この記述に基づき、武井泉氏の記述、「(アメリカ合衆国においては)1990年代には各州の条例で野良猫の管理のため、TNR条例が施行されるようになったという」は、「1990年代にアメリカ合衆国では全州でTNRを支持する立法を行い施行した」と解釈しました。

動物愛護管理に係る海外調査報告書 平成29年8月 調査機関 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの、ドイツに関する、嘘、誤り、偏向に関する記事
・呆れた動物愛護(誤?)専門家たち~ペトことと武井泉氏、
・「ドイツでは飼い犬の登録制度がある自治体はただ一つ」は大間違い~呆れた動物愛護(誤)専門家、武井泉氏、
・続・「ドイツでは飼い犬の登録制度がある自治体はただ一つ」は大間違い~呆れた動物愛護(誤)専門家、武井泉氏、
・「ドイツでは飼い猫については自治体においても登録制度はない」は大間違い~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・「ドイツでは、最寄りの複数の居住用建物から300メートル上離れた狩猟区域内で発見された場合、野良猫とみなされる」はデタラメ~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・続・「ドイツでは、最寄りの複数の居住用建物から300メートル上離れた狩猟区域内で発見された場合、野良猫とみなされる」はデタラメ~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・わなで殺傷されるドイツの猫と犬~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・違法なわなで殺害されるドイツの猫~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・違法ではないわなでも殺傷されるドイツの猫~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・ドイツのティアハイムは危険犬種の殺処分は必須という嘘~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・続・ドイツのティアハイムは危険犬種の殺処分は必須という嘘~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・ドイツではティアハイムから犬を入手する割合は2パーセント台?~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・続・ドイツではティアハイムから犬を入手する割合は2パーセント台?~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・ティアハイムの犬の平均譲渡率66%は正しかった(記事の訂正・お詫び)~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・「ドイツ憲法は動物の権利を保障した」と言う悶絶解釈~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・続・「ドイツ憲法は動物の権利を保障した」と言う悶絶解釈~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・続々・「ドイツ憲法は動物の権利を保障した」と言う悶絶解釈~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏~ドイツ編(まとめ)
動物愛護管理に係る海外調査報告書 平成29年8月 調査機関 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの、イギリスに関する嘘、誤り、偏向に関する記事
・大手シンクタンクのイギリスの動物政策に関する嘘デタラメ記述~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
・「イギリスではペットのケージ展示販売を禁じている」という狂った大手シンクタンクの報告書、
・「イギリスではぺットショップを経営するためには地方議会の認可が必要」という狂った大手シンクタンクの報告書、
・「イギリスでは野良犬野良猫の管理は自治体の役割である」という狂った大手シンクタンクの報告書、
・大手シンクタンク(三菱リサーチ&コンサルティング)のイギリスに関するデタラメ記述~まとめ
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