日本の犬猫生産数は?~信頼できる基礎的統計資料もない日本の動物愛護は暗黒

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Domestic/inländisch
日本の動物愛護政策を考えるにあたっては、基礎的な、信頼できる統計資料が必須となります。しかし日本では、それすらないといっても過言ではありません。そのような分野は、動物愛護以外には、私は知りません。例えば「日本の年間犬猫商業生産数」では、環境省の数値の信頼性は疑問です。またマスメディアが、憶測や偏向を加えたさらに誤解を意図した歪曲した表現を用いるなど、まさに日本の動物愛護は暗黒です。動物愛護政策を考えるうえでは、犬猫の年間生産数、もしくは販売数は最も基礎的な資料と思われますが、それすら信頼に値する資料が日本にはありません。
「日本における犬猫生産数」ですが、現在までいくつかの資料があります。それらの資料を時系列に示します。
1、Ⅲ.犬・猫の調査結果 平成13年度資料
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犬・猫の推定年間総生産頭数(犬:89,300 頭、猫:8,500 頭) 合計97,800頭
外国からの動物取扱業者向け輸入量は年間約 800 頭とみられ、輸入先としては「小売店」 が約 530 頭、「卸売業者」が約 270 頭である。
一方、輸出量は年間約 400 頭であり、「生産者」から直接輸出されるケースが約 270 頭、 「卸売業者」から輸出されるケースが約 130 頭とみられる。
2001 年の推定年間総生産数は約 97,800 (註 輸出入の入超を合算すれば、98,200頭となる)頭であるが、生産者から流通に回ってい るのは約 88,900 頭となっており、流通割合は約 91%である。
ペット飼育者レベルまで到達するのは約 77,000 頭である。
本資料においては、小売業者(ペットショップ)が、5,211件(業者数は重複している場合がある)としています。ペットショップの日本の件数は、総務省経済センサス‐基礎調査(2014年 平成26年経済センサス‐基礎調査 調査の結果)によれば、2014年の日本のペットショップ数は、5,045件です(註 なお、「日本のペットショップ数は1万5,000件程度である」という一部メディアの報道がありますが、これは生産者、中間業者をすべて含めた数字です。この数を「ペットショップ数」としているメディアの記事は大間違いです *1)。日本では事業所の減少傾向が続いていることと、「業者数が重複している場合がある」ことを考慮すれば、おおむねペットショップ数は総務省調査と合致します。その点では信頼できるといえるかもしれません。
しかし、「外国からの動物取扱業者向け輸入量は年間約 800 頭とみられ」との記述は疑問です。動物検疫年報 農林水産省 の統計値によれば、平成14年度の犬猫の合計輸入数は、14,571頭です。実験動物などの輸入を考慮したとしても、本資料の「外国からの動物取扱業者向け輸入量は年間約 800 頭」は過少と思われます。
2、幼齢期の動物の販売について ~我が国における子犬(子猫)の販売流通実態について~(環境省)平成18年度
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2.流通量について
ブリーダーの年間生産量(推計):約100万頭
年 間 輸 入 量:約 1万頭
本資料は、「我が国における子犬(子猫)の販売流通実態について」とあるので、上記の100万頭との数字は、「犬猫の年間生産量(推計)」と読み取れますが、あり得ない数字です。同じく環境省がわずか5年前に出した推計値が、97,800頭ですので、短期間で10倍以上に犬猫の生産数が増えるわけがありません。しかし年間(犬猫の)輸入量は、農林水産省の統計値と一致しますので、この点については信頼できるかもしれません。
また本資料は、例えば「オーストラリア、ヴィクトリア州では犬猫の8週齢未満の販売を禁じている」などの誤りがあり、他にも誤訳ともいえる記述もある問題がある資料です。信頼に足る資料ではありません。
3、犬猫の販売85万匹の影に 業者登録、本人確認すらせず 朝日新聞 太田匡彦 2019年1月27日
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ペットショップなどで販売される犬や猫の数が2017年度、のべ85万匹を超えました。
犬猫の大量生産、大量販売が続いています。
朝日新聞は、13年9月施行の改正動物愛護法で繁殖業者やペットショップに提出を義務づけた「犬猫等販売業者定期報告届出書」の集計値について、事務を所管する自治体に14年度分から調査している。
本記事は、犬猫の「のべ」流通量を、著しく「生産量」もしくは「販売量」と誤認させる欠陥記事です。記事の記述をよく読めば、「繁殖業者やペットショップの集計値」とあります。つまり、生産者(ブリーダー)→中間業者(卸売り、オークション)→小売業(ペットショップ)の各流通過程での、取扱数を重複した数です。例えば同じ犬が、生産者→中間業者→小売業者、と何段階かの流通過程を経るたびに重複して集計されます。3段階の流通過程を経れば、生産数もしくは販売数の3倍の数になります。
しかしこの85万という数字ですが、太田匡彦氏は意図的に、この「のべ数」を「生産数」、もしくは「販売数」と誤認させる記述をしていると思われます。彼の「日本は犬猫を大量生産している」という、嘘プロパガンダのためです。しかしこの太田匡彦氏の記事の数値を、「日本の犬猫生産数、もしくは販売数」として引用している資料が多いのです(*2)。
以上より、日本においては、現在における「犬猫生産数」、もしくは「販売数」の信頼できる推計値すらありません。動物愛護の政策提言や政策の実施においては、このような最も基礎的な数値は必須であると思います。しかしそれすらないのです。先に述べた通り、数値の信頼性が著しく低いとともに、意図的に誤認させる報道がされているなどの問題もあります。
私見ですが、1、Ⅲ.犬・猫の調査結果 平成13年度資料 の、「犬・猫の推定年間総生産頭数(犬:89,300 頭、猫:8,500 頭) 合計97,800頭」は、過少であると思います。
2、幼齢期の動物の販売について ~我が国における子犬(子猫)の販売流通実態について~(環境省)平成18年度 の、「(日本の犬猫の)ブリーダーの年間生産量(推計):約100万頭」はあり得ない数字でしょう。本資料はほかにも誤りが多く、信頼に値しない資料です。
3、犬猫の販売85万匹の影に 業者登録、本人確認すらせず 朝日新聞 太田匡彦 2019年1月27日 の、「ペットショップなどで販売される犬や猫の数が2017年度、のべ85万匹」の85万匹ですが。この数字は、先に述べた通り、生産→中間業者→小売業者、の各流通段階を重複して集計した数字ですので、「生産数」、もしくは「販売数」のいずれでもありません。
つまり繰り返しますが、現在日本で公表されている犬猫の「生産数」、もしくは「販売数」はいずれも信頼に耐えうる数字のものはないということになります。私は、大雑把ではありますが、日本の犬猫の商業生産数を推計してみました。その方法は以下の通りです。
1、飼育総数を平均寿命で割れば、1年間の犬猫の取得数が算出できる。
2、それに対して、営利販売業者から購入した比率を掛ければ、1年間の犬猫の販売数が算出できます。
3、なお、犬猫飼育数および営利販売業者からの取得数、平均寿命の時系列の変化は考慮していません。ですから大雑貨な数字です。
用いた資料は次の通りです。
・平成30年 全国犬猫飼育実態調査
・2018 年 12 月 25 日 一般社団法人 ペットフード協会 平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査 結果
・犬猫の入手経路(調査 平成23年 環境省)
(画像)
犬猫の入手経路(調査 平成23年 環境省)
から

以上により、私が算出した現在の、「日本における年間の犬猫販売数」は、約44万頭です。これは「輸入犬猫」を含んだ数字です。犬猫の販売は、ブリーダーの直販も多いことですし、この販売数だと、流通段階が平均で2段階程度となります。妥当な数字かもしれません。手前味噌ですが、かつて私は「ドイツでティアハイムから入手する犬の割合は10%に満たない程度」という推計値を出して記事にしています。これは、ドイツ全土におけるティアハイムの犬引受数から、推計殺処分数を引き、その数のドイツの犬取得に占める割合で求めたものです。実は、ドイツの研究機関が出した「ドイツにおける保護犬猫の入手割合の推計値」がのちに見つかったのですが、私の手計算の推計値とまったく一致しました。
なお、朝日新聞記者である、太田匡彦氏も、日本における犬の生産数と販売数の推計を行っています(「のべ」流通数を著しく「生産数」もしくは「販売数」と誤認させる記事を書きながら呆れますが)。犬に「犠牲」強いるペットビジネス 大量生産大量消費の悲劇 2015年6月3日記事 によれば、2010年の日本の犬の生産数は59.5万匹、販売数は58万匹としています。個人的な感想ですが、私はこの数字は過大だと感じています。この件については、次回記事で述べます。
(動画)
West Virginia Puppy Mill Shuttered 「ウエスト・バージニアのパピーミルは閉鎖されました」 2008/08/26 に公開
若干古い動画ですが、このパピーミルには、約1,000頭の犬が飼育されていました。アメリカ合衆国では現在も、繁殖メス犬だけでも数千頭レベルの繁殖業者(パピーミル)が存在していると複数の資料があります。日本はアメリカやイギリスに比較すれば、犬の商業生産数、販売数ともに少なく、ブリーダーの平均規模も小さいことを裏付ける統計資料などは多数見つかります。
August 25, 2008/Parkersburg, WV: A massive West Virginia dog breeding operation is closed, and nearly 1000 dogs are rescued.
2008年8月25日/ウェストバージニア州パーカーズバーグ:大規模なウェストバージニア州の犬の繁殖業務が閉鎖されて、1000頭近くの犬が救助されました。
例えば、「日本のペットショップ数は約1万5,000件ある」としている記事には、次のようなものがあります。
・知っていますか?ペットショップの裏側で殺処分される、多くの尊い命
(2)動物取扱業者の登録・届出状況(都道府県・指定都市) 平成28年4月1日現在(環境省)資料によれば、「繁殖を行っていない犬猫の販売業者」は、3,907件です。その中には、卸中間業者でペットショップではないものも含まれます。また、「繁殖を行っているペットショップ」は、12,603件のうちに含まれます。
また、「ペット産業年間」(野生社)によると、2001年時点での日本のペットショップの数は、5,521件としています(Ⅱ.ペット産業の市場規模 )。
(*2)
朝日新聞記者、太田匡彦氏が、数年前から調査し記事にしている「犬猫のべ流通数」ですが、この2015年の記事の数値を「生産数」として引用していたサイトがあります(のちに記述内容をかなり」変更しています)。
・ペットの生体販売について考える(後編)
上記サイトにリンクされていた太田匡彦氏の2015年版の記事は削除されましたが、最新版の記事よりさらに、「のべ流通数」を「生産数もしくは販売数」と著しく誤認させる記述でした。現在は「のべ流通数」と記述し、あからさまな嘘となることを避けていますが(しかし太田匡彦氏の「日本は犬猫の大量生産大量販売であるという嘘プロパガンダを必死に広めたいとする姑息な、意図的に誤解させる記述であることは変わりありません)。
文章の読解力がない、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの研究員の知能もさることながら、彼らとの動物愛護に関するシンポジウムを開催した、「NPO法人人と動物の共生センター」の無能ぶりにも呆れます。このシンポジウムでの、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの研究員の発言の無知ぶりもひどいの一言に尽きます。まさに日本の動物愛護は暗黒です。
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