「オランダには野良犬がいない」という大嘘~オランダは日本より野良犬の捕獲数が多く(人口比)殺処分率も高い

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Netherlands/Niederlande
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「オランダには野良犬がいない」としている、日本のメディアの報道や、ブログ記事があります。しかしそれらの情報では、根拠となるオランダの信頼できる一次ソース(例えば公的統計や政府見解、大学の学術調査など)示しているものは一つもありません。オランダの信頼できる資料では、むしろそれに反するものが多く見つかります。オランダでは、捕獲されてアニマルシェルターに収容される野良犬の数は日本より多く、人口比では8倍近くもあります。それは、オランダには日本より多くの野良犬が存在するということではないでしょうか。
日本では、複数のマスメディアが「オランダには野良犬がいない」と報道しています。またいくつかの個人ブログでもあります。しかしオランダの法律では、行政が野良犬を捕獲することを定めています。専業の公務員である動物管理官が野良犬を捕獲して、アニマルシェルターに収容てを委託し、アニマルシェルターが殺処分を行っています。オランダ国内で捕獲~アニマルシェルターに収容される野良犬の数は、人口比で日本より多いのです。また野良犬の殺処分率は半数を超え、日本の公的殺処分率よりはるかに高いのです。それらについては、オランダの名門大学、ユトレヒト大学獣医学部による、オランダのアニマルシェルターの学術調査報告書に記述されています。
Medical differences between stray and owner surrendered dogs in Dutch animal shelters J.M. Janse, Veterinary Medicine student, Utrecht University, January 2014 「オランダの動物保護施設における野良犬と飼い主が飼育放棄した犬の獣医学的差異 J.M. Janse ユトレヒト大学獣医学部学生 2014年1月」(英語) から引用します。
In the Netherlands there are about 1,5 million dogs.
Around 25 000 dogs are taken in by animal shelters yearly.
These dogs are owner surrendered dogs, stray dogs and confiscated dogs.
A stray dog is a dog unaccompanied by a responsible person in a public area.
This might include dogs who are lost or dogs who are abandoned by their owners.
in 2011 48% of all dogs in a shelter were owner surrendered and 26% were stray dogs.
The remaining dogs in the shelter were confiscated for various reasons, or were born in the shelter or came from another shelter.
2,3% of all dogs was euthanized for medical reasons or their disorder caused death.
The odds of dying or being euthanized is a factor 6,28 higher for stray dogs compared with owner surrendered dogs.
Stray dogs in a poorer health condition.
The presumption of a higher prevalence of dogs with a disease among stray dogs compared with owner surrendered dogs is confirmed by this study.
4,2% of stray dogs and 0,4% of owner surrendered dogs died due to their disorder(s) or were euthanized.
Notaro et al found a euthanasia percentage of 26,5% in dogs brought in the shelter by citizens, a percentage of 54,3% in dogs brought in by animal control officers and a percentage of 31,6% in owner surrendered dogs.
However, dogs brought in by animal control officers include besides stray dogs also confiscated dogs.
Stray dogs brought in by citizens did not differ from owner surrendered dogs in percentage of euthanasia.
オランダには、約150万頭の犬がいます。
年間約25 000頭の犬が、アニマルシェルターに連れて行かれます。
これらの犬は飼い主に所有権を放棄させたか、野良犬および行政により押収された犬です。
野良犬とは、公共の場所で責任ある者が同伴していない犬です。
これには、行方不明の犬や飼い主に捨てられた犬などがあります。
2011年のアニマルシェルターに収容された全犬の48%が、飼い主に所有権放棄させたものであり、26%が野良犬でした。
アニマルシェルターのほかの犬は、様々な理由で行政から押収されたか、アニマルシェルターで生まれたか、別のアニマルシェルターから来たものです。
オランダでは、オランダ国内の全犬(150万頭)のうち、年間2.3%(3万4,500頭)が医学的な理由で安楽死させられたか、または医学的な理由による障害が死亡の原因となりました。
死亡または安楽死させる確率は、飼い主に所有権放棄させた犬と比較して、野良犬の方が6,28倍高くなります。
より健康状態が悪い野良犬
飼い主が所有権放棄させられた犬と比較すれば、野良犬は有病率がより高いという推定は、この研究によって確認されています。
(オランダの全犬のうち)野良犬の4.2%と飼い主に所有権放棄させた犬の0.4%が、傷病により死亡したか、または安楽死させられました。
Notaroらによれば、一般市民がアニマルシェルターに持ち込んだ犬の安楽死の割合は26.5%、動物管理官が持ち込んだ犬の割合は54,3%、飼い主に所有権放棄させた犬の割合は31.6%でした。
しかし、動物管理官によって持ち込まれた犬には、野良犬以外に行政により押収された犬も含まれます。
一般市民によって持ち込まれた野良犬は、安楽死の割合においては、飼い主に所有権放棄させた犬と違いはありませんでした。
上記の学術調査はタイトルが、Medical differences between stray and owner surrendered dogs in Dutch animal shelters 「オランダの動物保護施設における野良犬と飼い主が飼育放棄した犬の獣医学的差異」とあり、野良犬の健康状態の調査です。それはすなわち、オランダには相当数の野良犬が存在することが前提の調査です。stray dogs は、「野良犬」もしくは「迷い犬」としか訳せません。また元飼い主が「犬の健康状態が悪いために捨てた」ことも、野良犬の健康状態が悪い一因としても挙げられています。飼い主に捨てられた犬、それは野良犬です。
引用した学術調査では、アニマルシェルターに収容された犬のうち、野良犬の割合は26%としています。オランダで1年間にアニマルシェルターに収容される犬の総数は25,000頭ですので、野良犬の数は、6,500頭です。実はこの数は、日本の公的機関(「動物愛護センター」などという名称)が引き取った野良犬(所有者不明犬)の絶対数、6,218頭より多いのです(犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況(動物愛護管理行政事務提要より作成) 平成30年12月28日 (平成29年度) )。日本はオランダの人口の7.4倍ですので、人口比では、オランダは日本の7.7倍も野良犬のアニマルシェルターの収容数が多いのです。つまりオランダは日本より野良犬の数が多いと考えられます。
「オランダには野良犬がいない」のみならず、「オランダには野良猫がいない」としているマスメディアの報道があります。この点については、私は記事、日本の公的殺処分の約3倍(人口比)の猫を狩猟駆除しているオランダ~「オランダは殺処分ゼロ」の大嘘、で、オランダ、ワーゲニンゲン大学の論説を引用しています。この論説によれば、オランダの野良猫の推定数は、人口比で日本の~3.2倍です。
「オランダには野良犬がいない」、「オランダには野良猫がいない」としているマスメディア記事で、オランダの信頼できる出典を示しているものは一つもありません。マスメディアは、その情報の出典を示す責任があると私は思います。
オランダ 野良犬がいない、オランダ 野良猫 いない、で検索すれば、かなりの数の「オランダには野良犬がいない」、「オランダには野良猫がいない」という情報がヒットします。
単なる思い付き、個人の妄想の過ぎないものを、「事実」として流布するのは有害です。情報の発信者には、責任を自覚していただきたい。
(画像)
「オランダには野良犬がいない」としているサイト。ついに野良犬ゼロを達成した国があります · 2018年5月30日 もちろん、「オランダに野良犬がいない」との根拠となる、オランダの原語の信頼できる文献、学術論文や公的な統計資料などの出典は示されていません。
その他にも「抑留所とアニマルシェルターは異なる」との記述ですが、私が今回引用した、オランダ、ユトレヒト大学獣医学部の文献では、animal shelter としかありません。徘徊している野良犬が行政官が捕獲して収容するのも、animal shelter です。それと「純血種犬の購入に高額の税金を課す」というオランダ語での資料は見つかりませんでした。

動物王国 ついに野良犬ゼロを達成した国があります · 2018年5月30日、ですが、他にも問題がある記述があります。
「政府がペットの去勢運動にたくさんの資金を投下したのも効果的でした。なんたって、全国一律で去勢にかかる費用は無料となった」、ですが、これは英語、オランダ語でも確認できる資料は一切ありませんでした(Netherlands dog castration free Nederland hond castratie gratis)。
民間のボランティア団体が、限定的に犬猫などの無料の去勢手術を行っているところはあります。しかしオランダ政府や自治体が無制限に犬猫の去勢手術を行っているという情報はありませんでした。例えば限定的に、猫の不妊去勢手術を行っている団体は日本にもあります。嘘もいい加減にしていただきたい。
この記事は、さらにその他でも問題のある記述があります。改めてそれらの点について記事にします。それにしても出典を示さず、情報の裏も取らず、単なる思い付き、妄想レベルの情報を、公に事実と誤認させるような流布はいい加減にやめていただきたい。
日本の海外の動物愛護に関する情報は、ほぼそうです。まさにそれが、動物愛誤家がいう、「日本は動物愛護後進国」である証左と言えるでしょう。
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