続・犬猫の殺害に寛容なドイツ~日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか

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(Zusammenfassung)
Bundesjagdgesetz
§ 23 Inhalt des Jagdschutzes
Der Jagdschutz umfaßt nach näherer Bestimmung durch die Länder den Schutz des Wildes insbesondere vor Wilderern, Futternot, Wildseuchen, vor wildernden Hunden und Katzen sowie die Sorge für die Einhaltung der zum Schutz des Wildes und der Jagd erlassenen Vorschriften.
記事、
・日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか~杉本彩氏の動物虐待の厳罰化主張に対する疑問、
・アメリカ、カリフォルニア州では私有地内に侵入する犬猫の毒餌による駆除は合法~日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか、
・アメリカ、カリフォルニア州では動物虐待の法定刑は懲役1年以下または2万ドル以下の罰金もしくはその併科~日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか、
・イギリスの動物虐待罪の法定刑は、357日以下の懲役または2万ポンド以下の罰金、もしくは併科~日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか、
・イギリスと日本の動物虐待に対する処罰の比較~日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか、
・動物福祉に先進的なオーストリアの動物虐待の法定刑は懲役2年以下~日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか、
・人の占有下にない犬猫は、狩猟駆除が推奨されているオーストリア~日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか、
・スイスで猫をハンマーで撲殺し写真を公開した男の処罰は罰金240スイスフラン(2万7,600円)~日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか、
・スイスの動物虐待罪に対する平均の処罰はわずか300スイスフランの罰金~日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか、
・犬猫の殺害に寛容なドイツ~日本は動物虐待に対する処罰が甘いのか、
の続きです。
これらの記事では、杉本彩氏らが「日本は外国と比べて動物虐待に対する処罰が甘い。動物愛護管理法における動物虐待罪の法定刑の上限引を、懲役5年以下、罰金500万円以下に引き上げるべきである」と主張していることを書きました。
前回記事では、ドイツでは犬猫に関しては連邦狩猟法及び各州の狩猟法により通年狩猟駆除が推奨されており、犬猫の狩猟による殺害に対しては寛容であることを書きました。今回は、具体的に根拠法を挙げていきたいと思います。
前回記事で書いた通り私は、その国の動物虐待に対する処罰が寛容なのか、それとも厳しいのかの比較は、総合的に次の事柄を考慮しなければならないと思います。
1、法定刑
2、法律の適用範囲、犯罪が成立する構成要件
3、実際の司法判断
ドイツにおいては、動物保護に関して包括的に定めている法律は、「連邦動物保護法」(Tierschutzgesetz)です。前回記事では、ドイツにおいては、「1、法定刑」は、「理由がない動物の殺害(虐待)」は、懲役3年以下、または罰金2万5,000ユーロとしています。
日本の動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)44条1項で定める「みだりな愛護動物の殺傷」の法定刑は「懲役2年以下または罰金200万円以下」です。ですから法定刑の上では(表面上は)、日本よりドイツのほうが動物の正当な理由がない殺害(虐待)に対する処罰が重いといえます。
しかしドイツは犬猫に限り、通年連邦狩猟法と各州の狩猟法により狩猟駆除が推奨されており、非占有の犬猫の狩猟による殺害が合法で、かつその範囲が広く解釈されています。対して日本の動物愛護管理法では、44条3項で定める愛護動物は人の占有になくても、さらには無主物であっても法の保護を受けます。したがってドイツにおいては、犬猫の殺害においては、「2、法律の適用範囲、犯罪が成立する構成要件」という見地からは、日本よりはるかに寛容です。
日本では当然有罪となるようなケースでも、ドイツでは刑事訴追がない、または無罪とされています(*1、*2、*3 例えば飼い主から3メートルしか離れていない、リードをしていない犬を射殺したハンターや、近所の顔見知りの飼い猫を飼い猫と知りつつ射殺したハンターは刑事訴追を受けませんでした。また、飼い主明示をしている首輪をしているリードをしていない犬を射殺したハンターは無罪でした)。
次に、ドイツの動物保護や狩猟に関する、具体的な法律と該当する条文をあげます。
・ドイツ連邦動物保護法(Tierschutzgesetz)
この法律では、ドイツ連邦共和国において、包括的に動物保護に関する事柄を定めています。動物の殺害に関する規定は、第3節 動物の殺害 4条(Dritter Abschnitt Töten von Tieren § 4~§ 4b )にあります。基本的には、「脊椎動物はその殺害が合理的であり、かつ意識喪失状態か有効な疼痛管理(麻酔下)により苦痛回避を行うことでのみ殺害することができる(脊椎動物は合理的で、かつ意識喪失状態か麻酔による苦痛回避をしなければ殺害することができない)」としています。
しかしその規定は、狩猟法における狩猟殺害や有害獣駆除においては除外されるとしています。本条では、動物に殺害においては、ドイツ連邦狩猟法(Bundesjagdgesetz)が優越することが明確に示されています。4条(1)の後段では、「狩猟法で許可されている場合や有害動物駆除においては麻酔等による苦痛回避義務はなく、やむを得ない苦痛の範囲内では殺害できる」とありますが、それは広く解釈されています。例えば、ライブトラップで捕獲した狩猟鳥獣や犬猫を銃殺する、撲殺、刺殺は合法とされています。
§ 4
(1) Ein Wirbeltier darf nur unter wirksamer Schmerzausschaltung (Betäubung) in einem Zustand der Wahrnehmungs- und Empfindungslosigkeit oder sonst, soweit nach den gegebenen Umständen zumutbar, nur unter Vermeidung von Schmerzen getötet werden.
Ist die Tötung eines Wirbeltieres ohne Betäubung im Rahmen weidgerechter Ausübung der Jagd oder auf Grund anderer Rechtsvorschriften zulässig oder erfolgt sie im Rahmen zulässiger Schädlingsbekämpfungsmaßnahmen, so darf die Tötung nur vorgenommen werden, wenn hierbei nicht mehr als unvermeidbare Schmerzen entstehen.
§ 17
Mit Freiheitsstrafe bis zu drei Jahren oder mit Geldstrafe wird bestraft, wer
1. ein Wirbeltier ohne vernünftigen Grund tötet oder
2. einem Wirbeltier
a) aus Rohheit erhebliche Schmerzen oder Leiden oder
b) länger anhaltende oder sich wiederholende erhebliche Schmerzen oder Leiden zufügt.
§ 18
(1) Ordnungswidrig handelt, wer vorsätzlich oder fahrlässig
(4)Geldbuße bis zu fünfundzwanzigtausend Euro.
4条
脊椎動物はその殺害が合理的であり、かつ意識喪失状態か有効な疼痛管理(麻酔下)により苦痛回避を行うことでのみ殺害することができる。
狩猟行為で狩猟やそのほかの法律の条文で麻酔を伴わない脊椎動物の殺害が許可されている場合、または許容される有害動物の防除対策の範囲内であれば、やむを得ない苦痛の範囲内で殺すことができる。
17条
3年以下の懲役または罰金が科される。
1、正当な理由がなく脊椎動物を殺害する(註 4条により狩猟駆除もしくは有害動物防除は正当な殺害)、または
a) 脊椎動物に残虐な痛みや苦しみをあたえること、または
b) 長期または反復して深刻な痛みまたは苦痛を生じさせること。
18条
(1) 故意または過失により犯罪を犯した者。
(2) 2万5,000ユーロ以下の罰金が科される。
・ドイツ連邦狩猟法(Bundesjagdgesetz)
23条で、犬猫の狩猟駆除を規定しています。犬猫の狩猟駆除は、他の狩猟鳥獣とは異なる扱いを受けています。他の狩猟鳥獣の狩猟は、「狩猟免許者の権利」としているのに対し、犬猫の狩猟は狩猟免許者に対して、「狩猟鳥獣を捕食する犬猫から狩猟鳥獣を保護するために犬猫を狩猟駆除するのは責務である」としています。
そのために一般の狩猟鳥獣が猟期の制限があるのに対して、犬猫は通年狩猟駆除が合法です。また狩猟可能な区域に対しても、別途の規定があります。
VI. Abschnitt Jagdschutz
§ 23 Inhalt des Jagdschutzes
Der Jagdschutz umfaßt nach näherer Bestimmung durch die Länder den Schutz des Wildes insbesondere vor Wilderern, Futternot, Wildseuchen, vor wildernden Hunden und Katzen sowie die Sorge für die Einhaltung der zum Schutz des Wildes und der Jagd erlassenen Vorschriften.
第6節 狩猟鳥獣の保護
23条 狩猟保護の内容
狩猟の保護は、特に狩猟ゲーム(狩猟対象の野生鳥獣)を食害する犬猫から保護するためだけではなく、野生動物を犬や猫の食害、野生動物の食物不足、野生動物を感染症から保護することが、州の規則によって具体的に規定されています。
・ハンブルク州 狩猟法(Hamburgisches Jagdgesetz )
狩猟に関する具体的な規定は、連邦狩猟法により下位法の州法にゆだねられています。これを法律の委任と言います。例としてハンブルク州の狩猟法を挙げました。
ハンブルク州狩猟法22条においては、「犬猫を狩猟することはハンターの義務である」と明確に記述してあります。またライブトラップで捕獲した犬猫を殺害することも合法です。その際は、ドイツ連邦動物保護法4条による、苦痛回避義務はありません。また、その犬猫の飼い主の有無は、殺害の合法性に影響を与えません。つまり、飼い主がいることが明確な犬猫(飼い明示がある首輪などをしている)であっても、ライブトラップで捕獲したのちに、銃殺、刺殺、撲殺(いずれも狩猟法で禁じていない)が合法と解釈できます。
狩猟区域に限らず、住宅地から200mしか離れていない場所で一年を通してライブトラップ(箱わななど)で犬猫を捕獲した後に撲殺などすれば、日本では完全に動物愛護管理法(か、飼い主がいれば器物損壊罪に問われる可能性がある)違反で有罪になることは間違いないです。なお、ドイツ連邦狩猟法においては、仮に狩猟免許を持たなくても、銃器を用いない場合は、無資格狩猟行為は行政罰の金銭罰のみです。
§ 22 Inhalt des Jagdschutzes
2. wildernde Hunde und Katzen zu töten.
Katzen gelten als wildernd, wenn sie in einer Entfernung von mehr als 200 m vom nächsten bewohnten Haus angetroffen werden.
Das Recht, wildernde Hunde und Katzen zu töten, erstreckt sich auch auf solche Tiere, die sich in Fallen gefangen haben.
Es gilt nicht gegenüber Hirten-, Jagd-, Blinden-, Dienst- und Polizeihunden, soweit sie als solche kenntlich sind und solange sie zu ihrem Dienst vom Berechtigten verwandt werden oder sich dabei vorübergehend der Einwirkung des Berechtigten entzogen haben.
(2) Der Jagdausübungsberechtigte ist verpflichtet, den Jagdschutz in seinem Revier auszuüben.
§22狩猟鳥獣保護の内容
2. 狩猟鳥獣を捕食する犬と猫を殺すこと。
猫は、最寄りの住宅から200m以上の距離にある場合には、狩猟鳥獣を捕食しているとみなされる。
狩猟鳥獣を捕食する犬や猫を殺す権利はさらに、捕獲された犬や猫にまで及ぶ。
牧羊犬、猟犬、盲導犬、介助犬、警察犬は、それが特定されている限り、また受益者(=犬の飼い主、使用者)の勤務に関連しているか、または受益者から一時的に離れて行動している場合に限り、本条は適用されない。
(2)狩猟をする権利を行使する者は、その狩猟区域において狩猟鳥獣保護を行うことが義務付けられている。
次回以降の記事では、ドイツにおける、「3、実際の司法判断」について具体的な裁判を取り上げて考察したいと思います。結論から言えば、ドイツにおける動物保護法違反では、法定刑が厳しいにもかかわらず、判決は概して驚くほど寛容であると感じます。例えば飼い犬を自宅マンションから投げ落として殺害した飼い主の処罰が1,000ユーロの罰金のみ、18匹の猫をアパートの一室に閉じ込めて故意に餓死させた事件では、900ユーロの罰金のみでした。いずれも日本円で10万円を少し超える金額です。
また、無主物(野良)の犬猫(は適用が前提として狩猟法である。狩猟法違反の多くは行政罰の金銭罰にとどまる)の殺害、虐待においては、懲役刑の刑事罰の判決例は、ドイツ連邦法務省及び大学の判例データーベースでは、一例も確認していません。また、インターネットでの検索においでも同様です。それはドイツにおいて、無主物(野良)の犬猫の殺害が極めて稀ということではなく、処罰自体がないとしか判断せざるを得ません。無主物(野良)の犬猫の大量殺害事件や虐待事件は、頻繁に報道されているからです。
(動画)
Jägerlatein im Wahrheits-Check / PETA 「ハンターの真実をチェックする」 PETA ドイツ (PETA Deutschland e.V.) 2015/06/16 に公開
PETA ドイツによる、ドイツにおける反狩猟キャンペーンビデオ。2:20~から、次のナレーションがあります。
Mindestens fünf millionen waldbewohner sowie mehrere hunderttausend katzen und hunde werden jedes jahr erschosenn.
Die jagd ist voller mord an empfindsamen mit geschöpfen.
少なくとも500万人の森林に生息する生き物(野生動物)と、数十万頭の猫と犬が毎年殺されています。
狩りは非常に心が痛む、生き物の虐殺に満ちています。
*1、*2、*3、の出典は、それぞれ以下の記事にリンクしてあります。
(*1)
・Hund 3 Meter neben seinem Halter erschossen 「ハンターは、飼い主から3mしか離れていない犬を射殺した」 2015年2月(PETAドイツ)
~
飼い主から3mしか離れていない犬を射殺したハンターは、その犬にリードをしていなかったために刑事訴追を受けなかった例。
(*2)
・続々・動物虐待に対する刑罰は、ドイツは日本より厳しいのか~ドイツでは、明らかに飼い犬と判別できる犬を射殺しても犬が人に占有されていなければ無罪になる
~
飼い主明示をした首輪をした犬を射殺したハンターが、狩猟法上合法とされ、無罪となった裁判例。出典は、上記の記事にリンクしてあります。
(*3)
・日本の犬猫の保健所引取りは、ドイツの制度より動物愛護に配慮していますー猫編
~
メインクーン種の猫の飼い主は、1,000ユーロの飼い猫を、近隣の知人から射殺されて憤慨しています。しかしハンターは、猫が放し飼い(非占有)であったために、刑事上の責任は不問とされました。猫を射殺したハンターは、この猫が飼い猫であり、飼い主も知っていたとされています。夏に、住宅地の至近距離で飼い猫を射殺して不問ということは、日本ではありえません。出典は、上記の記事にリンクしてあります。
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