「ドイツでは、最寄りの複数の居住用建物から300メートル上離れた狩猟区域内で発見された場合、野良猫とみなされる」はデタラメ~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏

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(Zusammenfassung)
Bundesjagdgesetz
§ 23 Inhalt des Jagdschutzes
Der Jagdschutz umfaßt nach näherer Bestimmung durch die Länder den Schutz des Wildes insbesondere vor Wilderern, Futternot, Wildseuchen, vor wildernden Hunden und Katzen sowie die Sorge für die Einhaltung der zum Schutz des Wildes und der Jagd erlassenen Vorschriften.
記事、
・呆れた動物愛護(誤?)専門家たち~ペトことと武井泉氏、
・「ドイツでは飼い犬の登録制度がある自治体はただ一つ」は大間違い~呆れた動物愛護(誤)専門家、武井泉氏、
・続・「ドイツでは飼い犬の登録制度がある自治体はただ一つ」は大間違い~呆れた動物愛護(誤)専門家、武井泉氏、
・「ドイツでは飼い猫については自治体においても登録制度はない」は大間違い~呆れた動物愛護(誤?)専門家、武井泉氏、
の続きです。
これらの記事では、武井泉氏による、広島県から委託を受けて作成した、海外の動物愛護政策等に関するレポート(動物愛護管理に係る海外調査報告書 平成29年8月 調査機関 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)が、嘘、誤り、偏向に満ちていてひどい内容であることを書きました。今回は、本資料における記述、「ドイツでは、最寄りの複数の居住用建物から300メートル上離れた狩猟区域内で発見された場合、野良猫とみなされる」が誤りであることを述べます。
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まず、動物愛護管理に係る海外調査報告書 平成29年8月 調査機関 三菱UFJリサーチ&コンサルティング、における、該当する記述はこちらです(6ページ)。

こちらでは「ドイツ」という記述ですが、前後の記述から、ドイツ連邦共和国一般についての記述と理解します。武井泉氏の本報告書においては、それが「ドイツ連邦政府、ドイツ州政府、自治体」のどれに関する記述なのか、またその根拠が「法令、行政指導、民間の指針」なのか明示されていなく、ご本人も混同しているようです。その点では不正確で、プロの報告書としては欠陥文書でしょう。
「(ドイツ連邦共和国では)猫は、最寄りの複数の居住用建物から300m以上離れた距離の狩猟区域内で発見された場合、野良猫とみなされる」とあります。しかしドイツ連邦共和国においては、法令においても、行政指導においても、そのような規定指導のたぐいはありません。
しかし後ほどの本報告書の記述から、これは「ドイツ連邦狩猟法の規定」の武井氏の曲解として理解し、話を進めます。また日本では、ドイツ連邦狩猟法では、民家から一定の距離が離れていれば、犬猫は狩猟が合法であるという事実が広く知られているという事実もありますので。
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後の7ページにこのような記述がありますので。「ドイツ全体の駆除頭数を示す公的統計は年間猫40万頭、犬6万5,000頭に達すると推定する動物保護団体もある」。その直前にティアハイムの殺処分について述べられており、ドイツの事情を知らない人は「ティアハイムの殺処分が=駆除で、年間46万5,000頭に及ぶ」と誤認させる問題がある記述です。
また、ティアハイムの殺処分についての根拠が、「法令なのか、行政指導なのか、民間の指針なのか」わかりません。ティアハイムの殺処分に関する記述は、「ドイツ動物保護協会 ティアハイム指針」(Tierheimordnung des Deutschen Tierschutzbundes Richtlinien für die Führung von Tierheimen der Tierschutzvereine im Deutschen Tierschutzbund e.V.)のことを」さしていると思われます。
これは民間団体の指針、ガイドラインの類で多分に理念的なもので強制力はありません。また「傷病動物の致死処分」は獣医師の単独で行えるとしています。その他の殺処分ケースでは、「ティアハイムの一人以上の役員、責任ある専門家、2人の獣医師(そのうちの1人はできるだけ行政獣医師であることが望ましい)からなる委員会により決定さる」とあります。つまり「ティアハイムの役員1人、専門家、2人以上の獣医師」の合計4人以上です。したがって武井氏の、「殺処分はティアハイムの所長と獣医師の2人の合意を持って行われ(7ページ)」は間違いです。この誤りについては、後ほど詳しく取り上げます。

(参考資料)
・国立国会図書館 諸外国における犬猫殺処分をめぐる状況 ―イギリス、ドイツ、アメリカ―
~
武井氏の、「ドイツ全体の駆除頭数を示す公的統計は年間猫40万頭、犬6万5,000頭に達すると推定する動物保護団体もある」との記述は。こちらからの引用と思われます。これは、PETAドイツによる推計値を引用しています。
ほかには、「ドイツ連邦共和国全土の年間の犬猫狩猟駆除数は、猫45万匹、犬6万5,000頭の合計51万5,000頭である」と推計している資料もあります。Aus der Bevölkerung Wir brauchen keine Jagd!
(動画)
Katzenmord in Waltrop / PETA 「ヴァルトロップでの猫虐殺」 2012/03/14 に公開
PETAドイツは、「ドイツ連邦共和国全土で年間に、猫40万匹、犬6万5,000頭が狩猟駆除される」と、こちらのビデオでも述べています。養鶏場が日常的に「飼い猫」と認識しながら、農場内の猫を射殺や罠で駆除していることを取材しています。
前置きが長くなりました。結論は、武井泉氏の、「(ドイツ連邦共和国では)猫は、最寄りの複数の居住用建物から300m以上離れた距離の狩猟区域内で発見された場合、野良猫とみなされる」=「ドイツ連邦共和国では、住居から300メートル離れていれば猫は野良猫とみなされて狩猟が合法である」は誤りです。
武井氏の記述では、「ドイツ連邦共和国では、猫のみが最寄りの住居から300メートル離れかつ狩猟区域内であれば野良猫とみなされて、狩猟が合法である」という意味になります。しかし真実は、法律の規定及び判例により次の通りです。
1、ドイツ連邦共和国の狩猟全般について規定している連邦狩猟法では、犬及び猫が狩猟対象である。
2、最寄りの住居からの距離は連邦狩猟法ではなく、各州の狩猟法により規定している。州により200mから500mの幅がある。なお「狩猟区域内」に限らない(一部の州では狩猟区域内に限るとしている)。
3、野良(=無主物)であるか否かは、狩猟の合法性は無関係である。
首輪をして飼い主がいることが明白な犬であっても、狩猟行為により射殺したハンターは無罪であるとの司法判断が確定しています。また、明らかに知人の飼い猫と知りつつ射殺したハンターは刑事訴追を受けませんでした。野良(=無主物)であるか否かにかかわらず、非占有であること。そして野生動物に被害を与える蓋然性があれば、ハンターはその犬猫に飼い主がいると認識していても、その犬猫を狩猟することが合法です。武井泉氏の噴飯報告書はさて置き、ドイツ連邦共和国における、犬猫の狩猟駆除については、日本では不正確な情報がいくつも流布されています。
例えばすでに述べた通り、「ドイツ連邦共和国では、最寄りの民家から300メートル離れてる犬猫は狩猟が許可されている」は、誤りです。さらに、「ドイツでは、猫の狩猟駆除を禁じた」、「ドイツではほかの狩猟鳥獣と同じように、犬猫は猟期には狩猟駆除できる」などです。これらの情報は、いずれも不正確もしくは誤りです。以前から気になっていましたので、これを機会に、情報を整理しま
す。
1、ドイツ連邦共和国では、犬猫は狩猟対象と連邦狩猟法で定めているが、具体的な距離を定めているのは各州の州法である。そもそも連邦法では、住居からの距離についての記述がない。州により、200mから500mの幅がある。
2、ドイツ連邦狩猟法23条においては、犬猫に限り、通年狩猟駆除が「ハンターの責務」とされている。猟期がなく、かつ狩猟区域に限らず狩猟駆除が推奨されているのは、ドイツ連邦狩猟法においては犬猫のみである。さらに他の狩猟鳥獣のように「狩猟を許可する」という任意規定ではなく、「ハンターの責務」と解釈できる条文の内容である。
3、ノルトライン-ヴェストファーレン州に限り、猫に限り、2015年に狩猟を禁じた(犬は引き続き狩猟対象)。また、ザールラント州では2014年に民間人ハンターの犬猫狩猟を禁じ、狩猟区域内の犬の射殺は、警察官の職務となった。したがって「ドイツ全土で犬猫の狩猟が許可されている」も、「ドイツでは猫の狩猟が禁じられた」も誤りである。
具体的に、ドイツ連邦狩猟法の、該当する条文を引用します。Bundesjagdgesetz 「ドイツ連邦狩猟法」。「犬猫から狩猟鳥獣を保護しなければならない」という、ハンターの「責務」として定めています。また具体的な規定(狩猟が可能な範囲など)を、州にゆだねています。これを「法律の委任」といいます。「最寄りの民家から300m」と言う、具体的な記述はありません。
VI. Abschnitt Jagdschutz
§ 23 Inhalt des Jagdschutzes
Der Jagdschutz umfaßt nach näherer Bestimmung durch die Länder den Schutz des Wildes insbesondere vor Wilderern, Futternot, Wildseuchen, vor wildernden Hunden und Katzen sowie die Sorge für die Einhaltung der zum Schutz des Wildes und der Jagd erlassenen Vorschriften.
第6節 狩猟鳥獣の保護
23条 狩猟保護の内容
狩猟の保護は、特に狩猟ゲーム(狩猟対象の野生鳥獣)を食害する犬猫から保護するためだけではなく、野生動物を犬や猫の食害、野生動物の食物不足、野生動物を感染症から保護することが、州の規則によって具体的に規定されています。
対して、一般の狩猟行為と、狩猟鳥獣に関する規定は、連邦狩猟法1条と2条です。1条で「狩猟者(狩猟免許保持者)が野生の狩猟鳥獣を狩猟することは『排他的権利』」としています。そして2条で、具体的な狩猟鳥獣の種を列挙しています。それらの種の猟期に関する規定や、狩猟区域は22条で定めています。
I. Abschnitt Das Jagdrecht
§ 1 Inhalt des Jagdrechts
(1) Das Jagdrecht ist die ausschließliche Befugnis.
§ 2 Tierarten
(1) Tierarten, die dem Jagdrecht unterliegen, sind:
第一節 狩猟の権利
1条 狩猟の権利の内容
(1) 狩猟の権利は排他的権利である。
2条 狩猟動物の種類
(1)狩猟法の対象となる狩猟鳥獣の種は:
つまり、ドイツ連邦狩猟法においては、第一節 狩猟の権利における、本法2条に定める狩猟鳥獣の狩猟においては、それを狩猟することは「ハンターの権利」としています。つまり「しても良い」、「許可する」ということです。対して、第6節 狩猟鳥獣の保護における23条の犬猫の狩猟駆除は、「狩猟鳥獣を保護するために犬猫の狩猟をハンターの責務」とし、それを推奨する内容です。
日本では、ドイツ連邦共和国における犬猫の狩猟駆除は、日本で言う狩猟鳥獣のうちに含まれると思われています。しかしそれは間違いです。ドイツ連邦狩猟法では、根拠となる条文が異なります。ドイツにおける犬猫の狩猟駆除は、日本でいうシカやイノシシの狩猟、有害駆除というよりは、むしろ特定外来生物法におけるアライグマなどの駆除に感覚的に近いかもしれません。ですから猟期の定めがなく通年狩猟が推奨されており、狩猟区域に限定されません(一部の州を抜く)。休猟期を設ける目的は、「狩猟鳥獣という資源の回復」が目的です。非占有犬猫は、根絶が望ましいということです。次回は、ドイツ連邦共和国における、犬猫の狩猟が可能なエリアなどの、各州の違いについてまとめます。
何しろ、武井泉氏による、広島県から委託を受けて作成した、海外の動物愛護政策等に関するレポート(動物愛護管理に係る海外調査報告書 平成29年8月 調査機関 三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、あまりにも誤りが多いので。むしろ誤りが多すぎれば、焦点を絞ることが難しいので、指摘が難しい(苦笑)。
これから指摘していきますが、例えばこのような記述もあります。5ページの、「犬に関する命令(規則)」(Tierschutz-Hundeverordnung)の記述で、「犬の飼い方に違反していると判断された場合は懲役が科せられる」とありますが、大間違いです。
行政罰のみです。日本でいう、過料です。ドイツは日本と異なり、行政罰の過料でも、とことん支払わなければ拘禁出来るとの法的根拠がありますが、刑事罰の「懲役」ではありません。そのほかでも、「ドイツ動物保護連盟のティアハム運営指針(Tierheimordnung des Deutschen Tierschutzbundes Richtlinien für die Führung von Tierheimen der Tierschutzvereine im Deutschen Tierschutzbund e.V.)」でも、メチャクチャな誤訳をしていますし、後ほど詳しく取り上げますが、「ティアハイムの平均犬引受数」などの数は全くのデタラメと思われます。同時期の、動物保護連盟が出している公表資料と数字がかけ離れているからです。この資料はあまりにも誤りが多い、というか、全てにおいて何らかの誤りや偏向があると言っても差し支えない。「これでもかっ」というほど、誤り、嘘のてんこ盛りです。これが大手のシンクタンクが作成した資料とは、驚きです。
「犬保護命令(規則)」 Tierschutz-Hundeverordnungの処罰規定は、§ 12 Ordnungswidrigkeiten 「行政違反」とあります。行政罰のみです。処罰は日本でいう、過料に相当する、金銭罰のみです。
なお、行政違反(Ordnungswidrigkeiten )は、刑事犯罪とは異なります。説明はこちら。Ordnungswidrigkeit。例として、交通違反の軽微な反則を上げています。このような噴飯報告書をチェック無しで広島県に提出した、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの能力は問題ですし、発注した広島県もどうかと思う。狂っています。
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