「ノネコ・野良猫は在来生物と共存関係にある」という妄言~「ノネコ殺処分・安楽死計画の根拠は科学的ではない」の非科学性を検証する

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(Summary)
・Australian feral cats wreak the most damage
・Feral cats now cover 99.8% of Australia
記事、「ノネコ殺処分・安楽死計画の根拠は科学的ではない」の非科学性を検証する、の続きです。前回記事では、現在環境省により行われている、奄美群島と沖縄でのノネコ・野良猫駆除事業に対する批判について書きました。両地域では、ノネコ・野良猫が生息しており、希少な在来生物であるアマミノクロウサギ(奄美群島)や、ヤンバルクイナ(沖縄本島)などを食害しているからです。この事業(ノネコ・野良猫の駆除。殺処分もありうる)に対して、いわゆる「野良猫愛護(誤)」が「科学的ではない」と反対しています。しかし逆に、彼らの主張は非科学的です。今回は、「1、ノネコ・野良猫は長い期間在来生物や人間と共存関係に有り、現在でもそうである。従って駆除する必要はない」との主張の非科学性について論じます。
「1、ノネコ・野良猫は長い期間在来生物や人間と共存関係に有り、現在でもそうである。従って駆除する必要はない」と主張している、いわゆる野良猫愛護(誤)に関する主張を例示します。
・ノネコ殺処分・安楽死計画の根拠は科学的ではない。沖縄、奄美大島。2017年10月23日 。
~
1000年以上も前からノネコとアマミノクロウサギは島で共存してきた存在だという。
・2月22日は「猫の日」。今、奄美群島がネコを巡ってゆれています!。2018年2月22日。
~
奄美大島では、江戸時代の嘉永3(1850)年の薩摩藩士・名越左源太の「南島雑話」において、多くのネコが山の中に入って生活し、当然アマミノクロウサギなどの野生動物を捕食していた。
アマミノクロウサギは、1920年代くらいまで、人里に下りてきて畑の作物を荒らす害獣で、また、盛んに人々によって狩猟され食べられてきたほど数多く生息していました。
つまり、ネコとアマミノクロウサギは、もう何百年間も、ともに島の環境で共存して、共栄していたのです。
奄美群島に猫が生息しているとの最も古い記録は、江戸時代の嘉永3年(1850年)です。これは、薩摩藩の武士が奄美大島に流罪になった際の記録、「南島雑話」に記されています(*1)。おそらく奄美群島に猫がもち込まれたのは、江戸時代に入ってからだと思われます。なぜならば、猫はかつては大変貴重な珍獣で、最上級階級しか飼えないペットでした。そのために、江戸時代中期までは猫は盗まれたり逃げたりしないように、係留飼育するのが当たり前でした。猫が日本で爆発的に増えて一般化するのは、五代将軍徳川綱吉が制定した生類憐れみの令(1685-1709年)によって猫の係留飼育を禁じた後のことです。
先に例示した、(ノネコ殺処分・安楽死計画の根拠は科学的ではない。沖縄、奄美大島。)の記述、「1000年以上も前からノネコとアマミノクロウサギは島で共存してきた存在だという。」は根拠がありません。おそらく誤りと思われます。猫が奄美群島に持ち込まれたのが江戸中期頃だとすれば、現在まで200数十年の期間といったところでしょうか。
現在奄美群島のアマミノクロウサギの生息数は、奄美大島で2,000~4,800頭、徳之島で約200頭と推定されています。これは2003年時点の推計値で、現在はさらに減っている可能性もあります(*2)。特に徳之島では個体数が200頭であり、環境省により、絶滅危惧種に指定されています。
例示した、2月22日は「猫の日」。今、奄美群島がネコを巡ってゆれています!、においては「アマミノクロウサギは、1920年代くらいまで、人里に下りてきて畑の作物を荒らす害獣で、また、盛んに人々によって狩猟され食べられてきたほど数多く生息していました」とあります。つまり現在は、約100年前に比べて、アマミノクロウサギは激減したという状況です。アマミノクロウサギがノネコなどの外的要因により、絶滅が危惧されるほど激減した状態は、「アマミノクロウサギは猫や島民と共栄している状態」とはまったく言えません(この人、頭が相当悪いのでは?)。
外来生物が移入して在来生物を捕食などで圧迫し、在来生物の減少と外来生物の増加をもたらすとの動物相の変化は、すぐに起きるものではありません。数十年、数百年という長い期間をかけて、徐々に在来生物→減少、外来生物→増加、が進行します。そしてある閾値を超えると、一気に在来生物の減少が進み、絶滅に至ります。
「1920年代はアマミノクロウサギは相当数いた(科学的な推計値は残っていませんが)」ですが、実際は個体数は減少していたかもしれませんし、閾値内で個体数を保っていられたという状態とも考えられます。それが近年になって、閾値を超え、一気に減少したと思われます(交通事故や開発事業などの複合的な要因もありますが)。
オーストラリアにおける猫の移入などが原因となった、在来生物の絶滅および絶滅が危惧されるほど減少した例と、奄美群島のアマミノクロウサギの減少は共通するところがあります。隔絶した地勢条件により、特異な生態系が存在すること。強力な在来の捕食者がないために、在来の小動物が非常に外来生物(猫など)の捕食圧を受けやすいなどです。
オーストラリアのヨーロッパからの移民の移住が本格化したのは、1700年代末です。おそらく猫も、この頃に移入されたと思われます。猫が移入されてからの期間も、オーストラリアと奄美群島は近いと思います。オーストラリアでは、1700年代末から今日に至るまで、猫が原因となった絶滅種は哺乳類で16種です。さらに28種が、猫が原因で滅危惧種になっています。そのために、オーストラリア連邦政府は、極めて厳格に猫の駆除事業を行い、「根絶が望ましい」としています。
2月22日は「猫の日」。今、奄美群島がネコを巡ってゆれています!、における「アマミノクロウサギは、1920年代くらいまで、人里に下りてきて畑の作物を荒らす害獣で、また、盛んに人々によって狩猟され食べられてきたほど数多く生息していました」の「害獣」との記述ですが。当時は害獣だったかもしれませんが、現在は絶滅危惧種です。
かつては、ヨーロッパオオカミは家畜や人を襲う「害獣」で、苛烈に駆除されていました。しかし現在は極めて稀少で、絶滅危惧種として手厚く保護されています。このライターの「アマミノクロウサギは害獣だった」との記述の意図がわかりません。現在では、アマミノクロウサギは生態系保全という見地から、手厚く保護しなければならない対象です。
オーストラリアにおける、猫が原因となった哺乳類・鳥類についての資料を引用します。16種の哺乳類が野良猫が原因で絶滅したのは定説となっています。オーストラリアでは、「これらの絶滅危惧種生息地でTNRすべき」という意見は、政府関係者や生態学者により、「クレイジー」なことと一蹴されています。
・Australian feral cats wreak the most damage 「オーストラリアの野良猫が最も大きな被害及ぼす」。2015年2月3日。
FERAL CATS IN AUSTRALIA are causing devastation to more than 400 native species, according to a new survey of their impact.
In Australia feral cats have already contributed to the extinction of 16 mammals.
Small and medium native animals have been declining catastrophically.
In this study researchers found records of feral cats hunting 28 IUCN Red Listed species, including the critically endangered woylie, mountain pygmy possum, and Christmas Island whiptail-skink.
オーストラリアの野良猫は、その影響に関する新しい調査によると、400種以上の在来種に被害を及ぼしています。
オーストラリアでは、野良猫はすでに16匹の哺乳類の絶滅に寄与しています。
中小の在来動物は、(野良猫の影響により)壊滅的に減少しています。
この研究では、絶滅の危機にさらされているワイリー、マウンテン・ピグミー・ポッサム、クリスマス・アイランド・ウィッテイル・スキンクを含む28種の、IUCNレッドリストの(絶滅危惧種)種を狩る、野良猫の記録が見つかりました。
・Feral cats now cover 99.8% of Australia 「野良猫は現在、オーストラリア全土のうち99.8%に生息域を広げています」。2017年7月17日。
The research provided a starting point for agencies responsible for managing cat populations and would enable better planning for baiting, trapping, shooting or other eradication programs.
Feral cats are presumed to be responsible for the extinction of about 20 native Australian species and for putting many more on the threatened species list.
They are particularly damaging to populations of critical weight range marsupials – meaning any animal that is less than 3kg.
Australia is the only continent on Earth other than Antarctica where the animals evolved without cats, which is a reason our wildlife is so vulnerable to them.
この研究は、野良猫の個体群を管理する機関の、毒餌駆除、罠による捕獲、射殺、その他の野良猫根絶プログラムのスタートとなりました。
野良猫は約20種の在来のオーストラリアの動物種の絶滅の原因と推定されおり、絶滅危惧種のリストに掲載されている多くの動物種に圧力を与えています。
野良猫たちは、特に重要とされる(体重が3キロ未満の)有袋類の個体数に害を及ぼしています。
オーストラリアは、南極以外では地球上で猫がいない状態で動物が進化した唯一の大陸であり、それがオーストラリアの野生生物が猫に対しては非常に脆弱な理由です(註 奄美群島などの島嶼の生態系も、猫がない状態で独自の進化を遂げてきました)。
(動画)
Feral cat cull in Australia 「野良猫はオーストラリアで野生動物を虐殺する」 2017/02/19 に公開
The Minister for the Environment and Energy, Josh Frydenberg is expected to announce in March the first round of grants to encourage communities to trap and humanely euthanise feral cats.
The Australian government aims to wipe out 2 million feral cats.
ジョシュ・フライデンベルグ環境エネルギー大臣は2017年3月に、野良猫を捕獲し、人道的に安楽死させるために、地域住民に促進させる、第1回の交付金支給(500万オーストラリアドル 約4億2,000万円)を発表する予定です。
オーストラリア政府は、200万匹の野良猫を撲滅することを目指しています。
(*1)
・Title 『南島雑話』の構成と成立背景に関する一考察 沖縄県教育委員会
(*2)
・アマミノクロウサギ 環境省
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