猫は鳥インフルエンザのパンデミックの原因になりうる~東京大学らの研究


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Domestic/Inländisch
昨年12月ですが、東京大学らは鳥インフルエンザ(H7N2型)が、「猫に感染し、ウイルスが猫の間で保持されていたことが明らかとなった。また、本ウイルスが猫を介して人やそのほかの動物に伝播する可能性が示唆された」との論文を発表しました。それは猫による鳥インフルエンザのヒト感染を拡大させ、パンデミック(大流行)を引き起こす可能性があるということです。猫は、飼育動物種の中では、例外的に人の占有管理を義務付ける法律が日本にはありません。野良猫の放置や猫の放し飼いは、感染症拡大のリスクを高めます。猫の飼育管理においては、日本は再考すべきでしょう。
サマリーで示した東京大学の論文ですが、そのプレスリリース(日経新聞)を引用します。東大、ニューヨークのネコで流行したH7N2インフルエンザウイルスの特性を解明 .
2017年12月22日。
なお、東京大学の発表はこちらです。ニューヨークのネコで流行した H7N2 インフルエンザウイルスの特性を解明 平成 29 年 12 月 22 日 東京大学 医科学研究所
ニューヨークのネコで流行したH7N2 インフルエンザウイルスの特性を解明
・2016年12 月から2017 年2 月にかけ、米国ニューヨーク市の動物保護シェルターで500 匹以上ものネコが、H7N2 ネコインフルエンザウイルスに感染した。
このネコから分離されたH7N2 ネコインフルエンザウイルスの性状を解明するため、哺乳類を用いて感染実験および感染伝播実験を行った。
・このH7N2 ネコインフルエンザウイルスは、1990 年代後半から2000 年代初めにニューヨーク近辺のトリ市場で発生が報告されていた低病原性H7N2 鳥インフルエンザウイルスに由来することがわかった。
・H7N2 ネコインフルエンザウイルスは、哺乳動物の呼吸器でよく増え、また、ネコ間で接触および飛沫感染することが分かった。
・H7N2 ネコインフルエンザウイルスの性状が解明されたことで、鳥インフルエンザウイルス由来のインフルエンザウイルスがネコに感染し、ネコの間で保持されていたことが明らかとなった。
また、本ウイルスがネコを介してヒトやそのほかの動物に伝播する可能性が示唆された。
このウイルスは、哺乳動物の呼吸器でよく増え、また、ネコ間で接触感染および飛沫感染することが分かりました。
本研究成果は、新たなインフルエンザウイルス株あるいは鳥インフルエンザウイルスが、ネコを介して、ヒトあるいは他の哺乳動物に伝播する可能性があることを示しており、今後のインフルエンザ流行あるいは新型インフルエンザウイルスの対策計画を策定および実施する上で、インフルエンザウイルスの中間宿主としてのネコの重要性を示しています。
この東京大学らの研究結果の報道は、かなり日本の動物行政関係者や動物愛護(誤)活動家らに衝撃を与えたようです。一部の動物愛護(誤)活動家らは、猫の鳥インフルエンザ感染拡大の危険性の火消しに必死になっている人もいるようですが(これは昨年SFTSが猫から感染した人の死亡例が報道された時も同様でした)。
しかし、鳥インフルエンザ(初期型のH1N1から今回報道されたH7N2型に至るまで)の人感染はかなり以前から確認されています。また、ネコ科動物は鳥インフルエンザに対する感受性が高く(感染しやすい)、イエネコやネコ科動物の感染例も早くから確認されています。鳥インフルエンザに感染したトラが複数殺処分された例もあります。実験レベルでは、H7N2型以外でも、猫間の感染、さらには猫から他の哺乳類の感染が確認されています。かねてより、鳥インフルエンザが変異し、人への感染拡大や、ネコ科動物が中間宿主となる危険性が指摘されていました。
今回の研究は、東京大学らによるもので、マスメディアも、報道せざるを得なかったのではないでしょうか。私が海外の論文検索などをかねてより行っていましたが、日本では、今までに人やネコ科動物の鳥インフルエンザ感染や、ネコ科動物から他の哺乳類への感染は全くと言っていいほど報道されてきませんでした。私は著しい偏向を感じます。
かつて2010年に宮崎県を中心とした、口蹄疫の大流行があり、多数の家畜が殺処分されました(2010年日本における口蹄疫の流行)。感染拡大を防ぐために、自動車のタイヤの消毒や、畜舎に出入りする人の消毒の徹底などが行われました。しかし、自由に移動する野良猫の対策は皆無でした。その後のこの口蹄疫の流行を分析した複数の学術論文では、「猫などの小動物が感染拡大の一因となった」としています(*1)。野良猫は自由に移動し、自動車と異なり、畜舎の中にまでよりウイルスを拡散させやすいのは、少し考えれば分かることです。野生動物より、人の生活圏に入り込んでいます。猫が感染しなくても、ウイルスを物理的に運ぶことで感染原因となります。しかし野良猫や放し飼い猫による、口蹄疫感染拡大のリスクを報じたメディアは皆無でした。「野良猫の危険性」を報じることを避ける了解でも、マスメディアにあるのでしょうか。この偏向には疑いを持たざるを得ません。
次回以降の記事では、鳥インフルエンザの次の論文や、ほかにニュースソースなどを取り上げます。先に書いたとおり、早くから「鳥インフルエンザによる人への感染(多数の死亡例あり)」、「イエネコを中心としたネコ科動物の多くの感染例~ネコ科動物は鳥インフルエンザに感染しやすい」、「鳥インフルエンザの猫から猫への感染例、猫からほかの哺乳類への感染例が発見されていた」のです。さらには「猫から人への感染」も疑われていました。
つまり、「猫が中間宿主となり、鳥インフルエンザの人感染のパンデミックが起きる可能性」が早くから指摘されていたのです。しかしそれらの論文や、その内容は、日本では全くと言っていいほど報道されませんでした。以下に例を挙げます。
・Outbreak of Avian Influenza A(H5N1) Virus Infection in Hong Kong in 1997 「1997年の香港における鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染の発生」 オックスフォードジャーナル(オックスフォード大学) 2002年5月1日
The first outbreak of avian influenza A(H5N1) virus in humans occurred in Hong Kong in 1997.
Infection was confirmed in 18 individuals, 6 of whom died.
人における鳥インフルエンザA型(H5N1)ウイルスの最初の流行は1997年に香港で起きました。
感染者は18人確認され、うち6人が死亡しました。
・Subclinical Infection with Avian Influenza A H5N1 Virus in Cats 「鳥インフルエンザH5N1ウイルスによる猫の無症候性感染について」 CDC(アメリカ連邦疾病管理予防センター Centers for Disease Control and Prevention)による論文 2007年2月。
2007年にすでに、CDCは、「猫から人への、致命的な鳥インフルエンザ感染の可能性」を指摘しています。
Avian influenza A virus subtype H5N1 was transmitted to domestic cats by close contact with infected birds.
Avian influenza has attracted worldwide attention because highly pathogenic avian influenza virus subtype H5N1 can cause fatal infections in humans and other mammals.
鳥インフルエンザAウイルス亜型H5N1は、感染した鳥類と濃厚に接触したイエネコ(いわゆる「猫」)に感染しました。
高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型が人や他の哺乳動物に致命的な感染を引き起こす可能性があるために、鳥インフルエンザは世界的な注目を集めています。
・Experimental Pandemic (H1N1) 2009 Virus Infection of Cats 「2009年に大流行した、新型インフルエンザ(H1N1)の猫のウイルス感染の実験」。2010年。
2009年に世界的に流行した死亡者数が1万8,000人とされる新型インフルエンザ(H1N1)は、人から猫への感染が実験で確認されました。その上で、新型インフルエンザ(H1N1)の最も可能性の高い感染経路が、猫人間の感染である可能性を指摘しています。
Infection with pandemic (H1N1) 2009 virus causes respiratory disease in cats.
Pandemic (H1N1) 2009 virus may cause respiratory disease in cats and that human-to-cat transmission is the most likely route of infection.
2009年に大流行した新型インフルエンザ(H1N1)ウイルスの感染は、猫では呼吸器疾患を引き起こします。
大流行した新型インフルエンザ(H1N1)ウイルスは、猫で呼吸器疾患を引き起こす可能性があり、そして人から猫への感染が、感染の最も可能性の高い感染経路であることを示しています。
・Avian Influenza A (H7N2) in Cats in Animal Shelters in NY; One Human Infection 「NYのアニマル・シェルターにおける、猫からの鳥インフルエンザA(H7N2)人へのひとつの感染症例」 CDC(アメリカ連邦疾病管理予防センター Centers for Disease Control and Prevention)による論文 ) 2016年12月22日。
An outbreak of avian lineage influenza A H7N2 (“H7N2”) virus infection among cats in an animal shelter in New York City was first reported on December 9, 2016.
CDC has confirmed one associated human infection in a person who had close, prolonged unprotected exposure to the respiratory secretions of infected, sick cats at an affected New York City animal shelter.
ニューヨーク市のアニマル・シェルターの猫への鳥インフルエンザA H7N2(「H7N2」)ウイルス感染が、2016年12月9日に初めて報告されました。
CDCは、感染した病気の猫の呼吸器分泌物に濃厚に長期間無防備に接触した人に、鳥インフルエンザが感染したことを確認しました。
(動画)
Outbreak Alert - New York officials report the first ever case of bird flu spread from cat to human 「鳥インフルエンザの大流行警報 - ニューヨーク市の行政関係者は、鳥インフルエンザが猫から人に感染した初めての症例を報告しています」。2016/12/28 に公開。
このニュースで報じられた症例は、アメリカではかなり大きく報道されました。東京大学らの、H7N2型鳥インフルエンザの、猫から人などへの他の哺乳類への感染の研究のきっかけとなったものです。2016年のことです。しかしこの事件は、日本ではほとんど報道されませんでした。今回、東京大学らの研究結果の日本での報道ですが、日本の研究機関がかかわらなかったのであれば、もしかしたらこの研究結果は日本では報道されなかったかもしれません。私はそのように疑います。
野良猫放し飼い猫が、口蹄疫の感染拡大の一因になったとする論文など。
・口蹄疫ウイルスと口蹄疫の病性について(総説) 農研機構 1997年
・口てい疫(口蹄疫)について 横浜市衛生研究所
・口蹄疫問題 国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 685(2010. 8. 3.)
・~宮崎牛~ 口蹄疫を踏み越えた日本一の牛肉 2015.8.18
その他、多数
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