続・「アメリカでは猫の殺害が懲役16年になった判決」は日本の動物愛護管理法違反事件の参考にならない



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(Summary)
No charges for Texas veterinarian who killed cat with bow and arrow
BELLVILLE, Texas - A Houston-area veterinarian who killed a cat with a bow and arrow will not face charges at this time after an Austin County grand jury declined to indict her for animal cruelty, reports CBS affiliate KHOU.


 前回記事、「アメリカで猫の殺害が懲役16年になった判決」は日本の動物愛護管理法違反事件の参考にならない、の続きです。今年、税理士である大矢誠被告人が、野良猫(非占有、無主物の猫)を私有地内で捕獲して殺害する様子の動画をインターネットで公開しました。その容疑大矢被告人は逮捕、起訴され、一審で「懲役1年10ヶ月執行猶予4年」の判決が言い渡されました(*)。起訴前から、「日本の動物虐待に対する罪は軽すぎる。大矢誠被告人の実刑にすべし」という署名サイトがいくつも立ち上がりました。では海外先進国と比較して、日本の動物虐待に対する処罰は軽いのでしょうか。「日本の動物虐待に対する処罰が軽すぎる」という根拠に、「アメリカで猫の殺害が懲役16年になった判決」を根拠として挙げている方が多いです。しかしこのアメリカの判決は、大矢誠被告人の事件とは異質です。前回記事では、アメリカの本事件は主たる犯罪が「窃盗罪」であり、大矢誠被告人の事件とは異質であることを書きました。アメリカでは、大矢誠被告人と近似の事件である、私有地内に侵入した近隣の飼い猫を弓矢で射殺した女性獣医師は刑事訴追を受けていません。さらにアメリカの複数の州では、野良猫の狩猟を推進しており、飼い猫とは法律上異なる扱いをしています。

(*)【猫惨殺裁判】杉本彩 執行猶予判決に怒る 「法律で裁かれなくても見合った罰は下るはず」(2017年12月13日)
なおこの記事でも、「アメリカでは猫殺害事件では懲役16年の判決となった」とありますが、この事件が窃盗罪であることに触れていません。
都合の良いつまみ食い、「事実の抜き書き」報道であり、マスメディアの報道としてあるまじきことだと思います。


 日本の動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)44条4項の1においては、特定の動物を「人が占有していない。非占有」であっても、占有されているものと同位の保護をしています。つまり44条1項の、「みだりな殺傷」の処罰は、特定の動物に対しては、人の占有、非占有にかかわらず、同じ処罰を受けます。
 しかし、「特定の動物が人の占有非占有にかかわらず同位の保護を受ける」規定がある、日本の動物愛護管理法は、国際的にはむしろ例外です。私が今まで述べてきたとおり、ドイツの連邦動物保護法(Tierschutzgesetz)が適用されるのは、「人に占有」されている動物だけです。特に犬猫は、仮に飼い主があったとしても、飼い主が管理していない状態(非占有)であれば、ドイツ連邦狩猟法(Bundesjagdgesetz)23条により、一年を通じて積極的な狩猟駆除の対象とされています。オーストリアも同様です。オーストラリアは積極的な犬猫の狩猟駆除を国家事業として行い、民間人ハンターにも推奨しています。特にニュージーランドの一部自治体では、「野良猫の駆除は土地所有者の義務である」とされています。スイス、オランダは猫に関しては外来生物と同じ扱いで、一年を通じて狩猟駆除が推奨されてます。これらの国にはもちろん犬猫の保護を規定した法律がありますが、占有(飼い犬猫)と非占有(野良犬猫、もしくは飼い主がいても管理していない状態)とは明確に区分しています。

 大矢誠被告人が殺害した猫は野良猫(非占有。無主物)です。つまり上記の国々(ドイツ、オーストリア、スイス、オランダ、オーストリア、ニュージーランド)では、飼い猫の殺害の規定を受けません。例えばドイツでは、狩猟免許を持っていれば、大矢誠被告人の行為を罰することはできません。ドイツには、動物の、特段残酷な殺害を加重処罰する「動物虐待規定(animal cruelty)」はありません(「連邦狩猟法」Bundesjagdgesetz19条では、狩猟動物の殺害においてできるだけ苦しめないとはありますが、処罰規定はありません)。仮に狩猟免許がなくても、無資格狩猟は行政罰のみです(ただしドイツ16州のうち、ノルトライン-ヴェストファーレン州のみは猫の狩猟を禁じている。違反は5,000ユーロまでの行政罰)。
 同様に、アメリカの複数の州では、野良猫を積極的に狩猟駆除すべきと定めています。例えばワイオミング州ですが、1年を通じてほぼ無制限に野良猫の狩猟が合法です。また、野良犬猫もしくは無登録の犬猫(飼い主があったとしても)は、殺害して良いとされています。つまり大矢誠被告人が殺害した猫は野良猫であり、ワイオミング州では合法となります。以下に、ワイオミング州の根拠となる州法を引用します。


Predatory Animal Control Laws, Rules, and Regulation
CHAPTER 6 - PREDATORY ANIMALS
ARTICLE 1 - CONTROL GENERALLY
11-6-101. Permission to eradicate upon refusal of entry by property owner.
Whenever predatory animals become a menace to livestock owned or controlled by any resident of Wyoming and the owner or lessee of any real estate in the vicinity where the livestock is ranged or pastured refuses permission to the owner of the livestock,his agents or employees, to enter upon the real estate for the purpose of destroying such predatory animals, entry may be obtained as provided by W.S.
11-6-102. Application to county commissioners; hearing; determination; limitation on use of firearms.
The owner of the livestock may file a written application with the board of county commissioners of the county where the real estate is located, applying for permission to eradicate predatory animals.
ARTICLE 3 - WYOMING ANIMAL DAMAGE MANAGEMENT PROGRAM
11-6-302. Definitions.
(a) As used in this article:
(ix) "Predatory animal" means:
(A) Coyote, jackrabbit, porcupine, raccoon, red fox, skunk or stray cat

農業、畜産およびその他の動物
第6章 有害動物
第1条 管理の総則
11-6-101 不動産所有者による、それらの動物の侵入防止に基づき、その動物を根絶することの許可。
有害動物がワイオミング州の住人によって所有または管理されている家畜に対する脅威になり、そのような有害動物を殺害する目的で不動産に入ることを、家畜が牧場や牧畜されている周辺の不動産の所有者または賃借人が、家畜の所有者、代理人または従業員に対して許可をしなかった場合は、ワイオミング州によって立ち入りの許可が与えられ、行うことができます。
11-6-102 郡の委員会への申請。聴聞、決定、銃器の使用制限。
家畜の所有者は、不動産が所在する郡の郡委員会に書面で申請し、有害動物を根絶する許可を申請することができます。
第3条 ワイオミング州における動物の害を制御するプログラム
11-6-302 定義
(a)この条文で使用されているもの
(ix)「有害動物」とは、
(A)コヨーテ、ジャックラビット、ヤマアラシ、アライグマ、アカキツネ、スカンクまたは野良猫


TITLE 11. AGRICULTURE, LIVESTOCK AND OTHER ANIMALS. CHAPTER 31. DOGS AND CATS. ARTICLE 1. IN GENERAL.
§ 11-31-211 Property rights in unlicensed dog or cat; no right of action for destruction.
The owner of a dog or cat has no property right in an unlicensed dog or cat, nor does he have any right of action against any person for the destruction of the dog or cat.

農業、畜産およびその他の動物に関する州法 第31章犬と猫  第1条総則
§11-31-211 無免許(飼育のための許可登録を行っていない)の犬または猫の財産権について。
殺害されたことに対しての権利はありません。
犬または猫の飼い主においては、無免許の犬または猫には財産権がありませんし、また、犬または猫が殺害されたとしても、いかなる人に対しても行動する権利(註 損害賠償を求めるなど)がありません。



 その他の点でも、アメリカの判例をもって「日本の動物虐待の罪は軽すぎる」とするのは、無知蒙昧です。無知蒙昧な方には、耳かき一杯の法律論を説明したとしても、頭が飽和状態で入らない徒労となるとは思いますが。
 前回記事で書いたとおり、アメリカの刑事司法制度においては、量刑は単純加算されます。ですから有罪になった場合は、量刑が日本より極端に重くなることが多々あります。この点については、教えて!goo 山ほど同様の犯罪を繰り返した場合の量刑の決め方について、のベストアンサーが良い回答をしています。
 さらにアメリカの場合は、刑事事件では起訴前段階から一般市民が参加する制度が有り、裁判においても陪審制を採用しています。一般市民が裁判に参加することで、判決が極端に振れる傾向があります。
 これ以上は長くなりますので触れません。結論を言えば、「アメリカでは猫を殺害した犯人に対しては懲役16年の判決がある。だからそれに比べれば日本の動物虐待の処罰は軽すぎる」と騒いでいる人達は、あまりにも無知蒙昧で愚かです。都合の良い事実のつまみ食いで、誤った事実を拡散するのは実に有害です。生半可な、断片的な情報のつまみ食いで法律を論じるのは無責任です。


(画像)

 アメリカ、CBSニュース、No charges for Texas veterinarian who killed cat with bow and arrow 「弓と矢で猫を殺したテキサス州の女性獣医師に対する刑事告発はありません」。2015年6月25日、から。これが女性獣医師が猫を弓矢で殺害し、FaceBookでその死体を公開した画像。

クリスティン 刑事訴追なし


 「私有地内に侵入した猫を弓矢で殺害して、その死体をFaceBookで公開した女性獣医師」の事件は、日本では間違いなく動物愛護管理法44条1項の、「みだりな愛護動物の殺傷」となり、有罪になると考えられます。ですから「日本が著しく動物虐待に対する処罰が海外と比べて軽い」とは言えません。「(飼い)猫を(窃盗して)殺害したアメリカの事件は懲役16年になった。だから日本は動物虐待に対して海外と比べて処罰が軽い」と主張している人たちは、原文でアメリカの事件(猫を殺害して懲役16年になった判決)を読んでいるとは思えません。
 日本での本事件の報道では、殺害された猫が飼い猫であることを意識的なのかどうかはわかりませんが、触れていないからです。「都合の良いところだけの抜き書き」です。したがって、アメリカの本事件(猫を殺害して懲役16年になった判決)をもって、「日本の動物虐待に対する処罰は軽い」と主張している人たちは、あまりにも無知蒙昧です。アメリカの「猫の殺害で懲役16年の判決」になった事件と日本の本事件を比較するのであれば、アメリカの事件の概要を原文で確認する責任があります。

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1959年生。
大阪府出身、東京育ち(中学は世田谷区立東深沢中学校、高校は東京都立戸山高校です)。
現在は、兵庫県西宮市在住です。
一人暮らしです。

趣味はクルマをコロガスこと(現在のクルマは4代目のメルセデスベンツです。ドイツ車では5代目)、庭での果樹栽培、家の手入れ掃除です。
20歳代前半から商品先物、株式投資をはじめ、30歳で数億円の純資産を得るが、その後空売りの深追いで多くを失う。
平成12年ごろから不動産投資を行い成功、現在50数戸を無借金で所有。
不動産投資では、誰も見向きもしなかったキズモノ、競売物件などをリノベーションする手法です。

なお、SNS、掲示板、QandAサイトなどでは、多数の本ブログ管理人の私(HN さんかくたまご)(武田めぐみ)のなりすまし、もしくはそれと著しく誤認させるサイトが存在します。
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