ドイツの警察官が飼い犬猫を射殺しても損害賠償責任を負わない法的根拠


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(Zusammenfassung)
§§ 4 - 6 PolG NRW (Adressaten polizeilicher Maßnahmen)
03.5 Inanspruchnahme des Tierhalters
§ 58 PolG NRW
Damit unmittelbarer Zwang rechtmäßig ist, muss Verwaltungszwang zulässig sein.
Der Bulle ist zwar keine Sache (§ 90 a BGB).
§ 90a BGB
Weil eine gegenwärtige Gefahr für die öffentliche Sicherheit abzuwehren ist, sind die Voraussetzungen für eine Sicherstellung zur Gefahrenabwehr erfüllt (§ 43 Nr. 1 PolG NRW).
前回記事、ドイツでは傷病猫を射殺するのは警察官の職務~日本では動物虐待になるのではないでしょうか、ですが、読者様から質問をいただきました。ドイツの警察官による犬猫の射殺に関する意見です。「(ドイツでは)動物愛護云々よりも所有権に対する考え方が違いますよね。日本なら警察官が勝手に止めさししたら財産権の侵害だという主張も出てきそうです」。この点について、補足説明したいと思います。
私は今までしばしば、ドイツにおける犬や猫の警察官による射殺を取り上げてきました。ドイツの全州における警察法では、警察官に、必要とあらば犬猫を射殺することを職務として明記しています。
ドイツで警察官が職務として犬猫を射殺するケースとしては、2つあります。まず一つ目は、前回記事、ドイツでは傷病猫を射殺するのは警察官の職務~日本では動物虐待になるのではないでしょうか、で引用したとおり、ドイツ、ノルトライン=ヴェストファーレン州警察法ガイドラインにあるとおり、「傷病動物を苦痛から開放する」ことを目的とする場合です。もう一つは、徘徊する犬などから市民の安全を守るために行う場合です。後者のケースも、§§ 4 - 6 PolG NRW (Adressaten polizeilicher Maßnahmen) 「ドイツ、ノルトライン=ヴェストファーレン州警察法運用指針」で述べられています。以下に引用します。
Beispiel Ein ausgebrochener Bulle greift in der Innenstadt Personen an.
Polizeibeamte wollen das Tier sicherstellen.
Weil das Tier nicht eingefangen werden kann und um die von dem Tier ausgehenden Gefahren abzuwehren, erschießt ein Beamter den Bullen.
Der Eigentümer ist zurzeit nicht zu ermitteln.
Hat der Beamte rechtmäßig gehandelt?
§ 58 PolG NRW
Damit unmittelbarer Zwang rechtmäßig ist, muss Verwaltungszwang zulässig sein.
Der Bulle ist zwar keine Sache (§ 90 a BGB).
§ 90a BGB
Weil eine gegenwärtige Gefahr für die öffentliche Sicherheit abzuwehren ist, sind die Voraussetzungen für eine Sicherstellung zur Gefahrenabwehr erfüllt (§ 43 Nr. 1 PolG NRW).
一例ですが、攻撃的なブルドッグが人が集まる市の中心部に出没しました。
警察官は、ブルドッグを確保しようとしました。
しかしブルドッグを捕獲することができず、ブルドッグが及ぼす危険を排除するために、その警官はブルドッグを射殺しました。
所有者は、その時は不明でした。
警察官の行動は、法律の範囲内でしたか?
ノルトライン=ヴェストファーレン州警察法58条
同法条文により、この警察官の射殺の行使は、行政が執行を許可しなければならないのは合法的です。
ブルドッグは民法90条aではものではありません。
民法90条a
公共の安全の確保への脅威は、安全性を確保するための前提条件として、ノルトライン警察法43条1項が優越して適用されます。
前回記事で読者様は「(ドイツでは)動物愛護云々よりも所有権に対する考え方が違いますよね。日本なら警察官が勝手に止めさししたら財産権の侵害だという主張も出てきそうです」とコメントで意見を述べられています。その点についてですが、ドイツ連邦共和国では、民法の規定で、飼い主の、動物に対する所有権を制限する規定を設けています。
動物の所有権の問題ですが、ドイツ民法(Bürgerliches Gesetzbuch)90条aで、「特別法の規定があれば動物は物(Sache)ではない」 (Tiere sind keine Sachen)、と規定されています。この、Sacheという単語ですが、直訳すれば「物(単に物理的な有体物)」という日本語での意味になります。しかし、ドイツでは、法学上、「財物=所有権が及ぶ客体としての有体物」となります。つまり、ドイツ民法の90条aの規定は、「動物は特別法の規定があれば所有権が制限される」という意味です。このように警察官が警察法(特別法)に基づいて、職務で犬猫を射殺した場合は、飼い主に対して損害賠償の責任を負わないということです。それが引用した、§§ 4 - 6 PolG NRW (Adressaten polizeilicher Maßnahmen) 「ドイツ、ノルトライン=ヴェストファーレン州警察法運用指針」で述べられています。
この民法90条aは、その他にも行政が、「咬傷犬、飼育禁止犬など特別法に基づいて押収して、強制的に殺処分する」場合にも適用されます。なおドイツにおいては、行政が咬傷犬や飼育禁止犬種などを押収して強制的に殺処分する権限があり、各州で立法化されています。行政により強制的に殺処分される犬は相当数あります。日本で喧伝されている、「ドイツでは公的殺処分(行政が行う殺処分)がない」は、全く事実無根の大嘘です。
このような犬の公的殺処分においても、行政は犬の飼い主に対して損害賠償の義務を負いません。ある面、ドイツでは「動物は物(財物)に満たない」と法律で定めているのです。この民法90条aの、Tiere sind keine Sachen.「動物は物ではない」を、日本の愛誤が、「ドイツでは動物は人と同様に権利を認められた存在である」との荒唐無稽な解釈をたれながしています。単に、物理的な有体物である「物」という意味ならば、ドイツ語では、DingやObjektという気がします。またドイツ法では、単にtier(動物)とある場合は、脊椎動物全般をさします。ししゃもやイワシに、ドイツでは人と同様の権利を認めているのでしょうか。少し考えれば分かることです。
(動画)
Rüsselsheim: Polizei ermordet 2 Hunde (23.09.2014) 「Rüsselsheim:警察が2頭の犬を殺害(23.09.2014)」。ドイツにおける、路上での警察官による犬の射殺。リュッセルスハイム。この2頭の犬は飼い犬です。
(画像)
Unfall auf A61 bei Speyer Hunde waren wohl nicht gesichert 「シュパイヤーでの高速道路A61線の事故 犬はおそらくしっかりと固定されていませんでした」。2017年3月17日記事より。
交通事故で犬が重傷を負い、警察官が職務権限により射殺したケース。この高速道路上での事故では、3頭の犬を、駆けつけた警察官が射殺しました。
Bei dem Unfall eines Kleinlasters mit 14 Hunden an Bord auf der A61 ist die Fahrerin aus dem Rhein-Neckar-Kreis schwer verletzt worden.
Elf Tiere wurden getötet.
Sie waren offenbar nicht gesichert.
Sieben Tiere starben sofort.
Drei weitere musste die Polizei töten, da sie so schwer verletzt waren.
高速道路A61号線の路上で、ライン川、ネッカー地区での小型トラックと14頭の犬の衝突事故で、運転手は重傷を負いました。
11頭の犬が死にました。
犬たちは、しっかりと固定されていませんでした。
7頭は、即死状態でした。
さらに3頭は、ひどく負傷していたために警察官が殺害しなければなりませんでした。

(画像)
私が参加している、ドイツのFaceBookのヴィーガングループ、Deutschland Vegan Aktiv For Animals、から。tiere dürfen keine objekte oder opfer mehr sein 「動物は物ではないし、犠牲にしてはならない」。こちらでは「物」として、objekte という単語を用いています。こちらが、日本の愛誤が「日本は動物をモノ扱いしている、ムキーッ!」という意味での、「物」です。ちなみに、私は基本的に肉食をしません。
法律の一文節だけを都合よく抜き出して、さらにそれが外国語で原意がよく伝わらなければ、どうにでも曲解できます。ドイツ民法90条aの、Tiere sind keine sachen.「動物は物(民法上所有権が及ぶもの)ではない」の、日本の愛誤の、「ドイツでは動物は人と同様に権利を認められた存在である」との解釈は荒唐無稽です。

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