日本の地域猫制度はアメリカのTNRマネジメントのデッドコピー~地域猫の管理責任を問う


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Domestic/Inländisch
記事、
・動物愛護管理法の犬猫引取り制限は改悪だったのか~猫被害の増大をもたらした、
・地域猫活動で野良猫は減少するのか~地域猫の管理責任を問う、
・続・地域猫活動で野良猫は減少するのか~地域猫の管理責任を問う、
・「犬猫の殺処分を行う必要がある」が国民の大多数の意見~地域猫の管理責任を問う、
・地域猫活動家は損害賠償責任を負うのか~地域猫の管理責任を問う、
・続・地域猫活動家は損害賠償責任を負うのか~地域猫の管理責任を問う、
の続きです。
日本の地域猫制度(行政が認可した地域猫活動)とアメリカのTNRマネジメント(行政が認可したTNRマネジメント活動)は、全く異なるものです。特に、管理責任に対する考え方においては顕著です。アメリカのTNRマネジメントは、あくまでもTNRマネジメントを行う活動家らの管理責任を明確に示しています。対して日本の地域猫制度では、意図的に管理責任を「地域全体に分散させて(?)」曖昧にしています。
日本の地域猫制度(行政が制度として認可した地域猫活動)と、アメリカのTNRマネジメント(行政が制度として認可したTNRマネジメント活動))は、全く異質です。特に管理責任の明確化という点では、違いが顕著です。日本では、地域猫活動は、アメリカのTNRマネジメントに倣ったものと思われていますが、都合よく換骨奪胎したデッドコピーであると私は思います。そして日本のマスメディアを始め、アメリカのTNRマネジメントについて、正確に伝えているものは皆無に近いと思います。数なくとも私はひとつも知りません。
サマリーで述べた通り、日本の地域猫制度とアメリカのTNRマネジメントは、まず活動家らの管理責任を明確にしているか否かで大きな違いがあります。日本の地域猫制度においては、管理責任を「地域全体に分散させて」、意図的に曖昧にしています。それは、環境省も繰り返し述べています。具体的な資料と、その記述を引用します。
・地域猫活動 - 環境省(2013年)
~
地域猫活動のポイントは<三者協同>
地域猫活動は、地域住民+ボランティア(経験のある団体・個人など)+行政が「地域の問題を地域で解決するため」の協同して行う。
(註 なお、これは新宿区の「地域猫対策」QandAを環境省が参考資料として添付したものからの引用です。環境省の意向として理解して良いと思います)。
・住 宅 密 集 地 に お け る 犬 猫 の 適 正 飼 養 ガ イ ド ラ イ ン 平成22年2月 環 境 省
~
※地域猫とは
地域の理解と協力を得て、地域住民の認知と合意が得られている、特定の飼い主のいない猫。
その地域にあった方法で、飼育管理者を明確にし、飼育する対象の猫を把握する。
上記のように環境省は、地域猫活動を繰り返し「地域の活動」と強調しています。この「地域の活動」という概念は、アメリカのTNRマネジメントではありません。また日本の地域猫制度は、地方議会の議決を必要としない、首長の専決(首長の独断で導入できる)による「要綱」「要領」を根拠にするものがほとんどです。つまり地域猫制度の成立においては、民意を反映しているのかという点でも疑問が残ります。
地域猫制度の成立においては、必ずしも民意を反映しているとは言えません。その裏返しかもしれませんが、環境省は「地域猫は地域の合意を得る」」ことを何度も強調しています。その「地域の合意」ですが、環境省は、地域猫活動 - 環境省では、「地域猫対策」Q1andA、「地域の合意を得ることを絶対条件とはぜず、出来ることから始めて合意を目指したり、広げたりすることで行っています。活動を進めながら理解と協力を得ていき、それを『合意』とう言い方をするのであれば、合意なのではないか(???)」という記述のある、新宿区の「地域猫対策」Q1andA、を参考資料としています。
合意というワードですが、法学上は「当事者の全員の意思が一致(合致)すること」と解釈されます(「法律用語としての『全員の同意』と『全員の合意』」北村喜宣(上智大学法科大学院)。
環境省は、地域猫における「地域の合意」の定義を、「合意を未だ得ていないがそれを目指す過程が合意である(?)」となんとも矛盾する文章を引用していますが、要するに「地域猫活動で地域の全員の意思の一致にいたらなくても、それに対して努力していれば、ないしその意思があれば合意とする」ということでしょうか。すなわち環境省のこの曖昧な文章の引用は、「地域全員の意思の一致(合意)が現時点でなくても、それに対して努力する意思があれば地域猫活動を開始して良い」と、見切り発車を容認していると解釈できます。
「地域全員の意思の一致がない(正しい意味で「合意」とは言えない)」にもかかわらず、地域猫(的)活動を開始し、それにより被害が発生すれば、私が記事、続・地域猫活動家は損害賠償責任を負うのか~地域猫の管理責任を問う、で取り上げたとおり、司法判断においては、地域猫活動家は、猫被害において損害賠償の責任を負います。一方環境省は、地域猫活動を「地域の協同」とし、地域ぐるみであることを強調しています。しかし環境省の方針を見る限り、「地域猫は地域住民の反対を押し切って見切り発車して開始することは容認する(現時点で地域の協同の参加を拒否している住民が存在する状態であっても)」、しかし「地域猫活動により、猫被害が生じたら、地域猫活動に合意しなかった住民も含めて地域全体の問題にすり替えて責任問題を曖昧にする」としか解釈できません。
「糞尿が臭い汚い」といったレベルならば、「まあまあ、地域猫活動をされている方は善意で頑張っていますので」とお茶を濁すことができるかもしれません。しかし糞尿被害といったレベルでも、猫による被害の賠償額は、かなり高額です。ましてや、重大な感染症が地域猫活動が原因で人に感染したなどではどうなのでしょう。環境省の方針は、あまりにも危機意識がなく、無責任と言わざるを得ません。
対してアメリカのTNRマネジメントですが、制度化の根拠は条例に基づいています。つまり、その自治体がTNRマネジメントを制度化するに際して、民意を反映しているということです。条例のひな形もあります。ほとんどのTNRマネジメント条例では、このひな形に準拠しています。まず日本の地域猫制度と根本的に異なる点は、「地域の合意」を得ることを認可の条件としていません。それは地方議会で、条例制定というプロセスを通じて民意を反映しているからだと私は解釈します。そしてTNRマネジメント活動家の管理責任を明確にしています。
「行政がTNRマネジメントを行う活動家に対して認可する条件としては、「1、対象とする猫の個体識別~マイクロチップの施術の義務」、「2、対象とする猫の行政への登録」、「3、狂犬病等のワクチンを対象とする猫に行うことを義務付ける」です。つまり、「1、TNR猫の個体識別」、「2、TNR猫の登録義務」は、飼い猫の管理に準じ、TNRマネジメント活動を行う活動家の管理責任を明確化にするということです。「3、ワクチン接種義務」は、TNRマネジメント活動家に管理責任があることを前提とし、その上で、TNRマネジメント活動により、TNR猫が人に感染症を感染させて被害を及ぼすことの防止を活動家に求めているということです。
つまりアメリカのTNRマネジメント制度においては、活動をしたい者に対して、「TNRマネジメント活動を行えば管理責任が生じます。それでもやりたかったらどうぞ」ということです。アメリカは、野良猫の管理においては日本と異なり、多くの選択肢がありますから。「管理責任を負う」ことでTNRマネジメント活動を諦める人がいても一向に構わないのです。「アニマルコントロールが野良猫を捕獲して殺処分する」、「通年野良猫を狩猟対象とする」、「私有地内に侵入し、私有財産に被害を与える猫などは、土地所有者管理者は殺害して良い」、「警察官による犬猫の射殺」、「連邦や州政府などによる野良猫根絶事業」などの選択肢がアメリカにはあるからです。
次回記事では、アメリカ合衆国における、TNRマネジメント制度の条例のひな形や実際のTNRマネジメント条例の紹介、そして日本の地域猫の要綱・要領の実例を挙げます。
(画像)
CALIFORNIA Santa Ana on alert for typhus 「カリフォルニア州サンタアナ郡は、チフスに対して警告しています」。2012年3月30日。
アメリカ、カリフォルニア洲サンタアナ郡では、徘徊猫が媒介するノミにより、発疹チフスが流行しました。サンタアナ郡は、警察官まで動員して猫を捕獲し、殺処分を行いました。発疹チフス流行による自治体の中止勧告にもかかわらず、TNR活動を続けた団体は、刑事訴追を受けました。アナハイム郡にあるディズニーランドは、2015年に園内の猫をすべて安楽死させました。

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