続々・地域猫活動家は損害賠償責任を負うのか~地域猫の管理責任を問う


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Domestic/Inländisch
記事、
・動物愛護管理法の犬猫引取り制限は改悪だったのか~猫被害の増大をもたらした、
・地域猫活動で野良猫は減少するのか~地域猫の管理責任を問う、
・続・地域猫活動で野良猫は減少するのか~地域猫の管理責任を問う、
・「犬猫の殺処分を行う必要がある」が国民の大多数の意見~地域猫の管理責任を問う、
・地域猫活動家は損害賠償責任を負うのか~地域猫の管理責任を問う、
・続・地域猫活動家は損害賠償責任を負うのか~地域猫の管理責任を問う、
の続きです。
前回記事では、地域猫的活動(不妊去勢などを行う)であっても、野良猫の餌やり行為により被害が生じた場合は、餌やり行為者は、猫被害者に対して損害賠償責任を負うとの司法判断を取り上げました。今回は、行政が認可した、制度としての地域猫活動により猫被害が生じた場合の法的責任について考察します。
前回記事、続・地域猫活動家は損害賠償責任を負うのか~地域猫の管理責任を問う、では、地域猫的活動(不妊去勢などを行う)であっても、野良猫の餌やり行為により被害が生じた場合は、餌やり行為者は、猫被害者に対して損害賠償責任を負うとの司法判断を取り上げました。
この事件は、将棋棋士が、2008年から自宅(区分所有建物)そばで野良猫を餌付けしたため、糞尿をまき散らされるなどの被害を受けたとして、同じ区分所有建物の他の住人や管理組合から、餌やり中止と慰謝料など約645万円の賠償を求める訴訟を起こされたというものです。。2010年5月13日に東京地裁立川支部は、原告の訴えを認め、被告の将棋棋士に猫の餌付け中止と慰謝料204万円の支払いなどを命じました。被告の将棋棋士は以前から、ほぼ一人で避妊や去勢手術を行い、判決時には18匹いた猫が4匹前後にまで減っていました(加藤一二三)。
つまり司法判断においては、地域猫的活動であっても、餌やり行為により猫被害が発生すれば不法行為が成立し、被害者に対して損害を賠償しなければならないとの判断を示したことになります。本件では、猫の数が減り、被害も軽減していました。
では、行政が制度化した地域猫制度に基づき行政から認可された地域猫活動においては、地域猫活動家の法的責任はどうなるのでしょうか。上記の将棋棋士の裁判では、判決文で次のように述べています。
判決文原文、平成22年5月13日判決言渡 平成20年(ワ)第2785号 東京地裁立川支部 猫への餌やり禁止等請求事件、から引用します。
猫の数は,被告も費用を負担した不妊去勢手術の効果として,4匹にま で減少し個人原告らが被っていた各種被害も,猫の数の減少,不妊去勢手術の効果,猫のトイレの設置及び被告による猫の糞のパトロールにより減少しているものであり,地域猫活動の趣旨に,一定程度沿ったものであることは認められる。
しかし,野良猫に餌やりを行えばそれらの猫はその場所に居着いてしまうことを 知っていたのに,話し合いが求められる本件タウンハウスにおいて原告らとの話し合いの最大の機会である総会のほとんどを欠席した。
被告は,原告らの再三にわたる飼育及び餌やりの中止の申入れを拒否して,猫の飼育及び餌やりを継続し,その結果,原告は本訴を提起せざるを得なかったものであり,被告のこのような行為は,原告に対する不法行為を構成する。
地域猫活動の理念等から,原告との関係で不法行為が成立しないと解することができない。
つまり上記判決では、地域猫的活動(不妊去勢の実施、糞掃除など)であっても、地域住民の合意を得ていなければ、仮に地域猫的活動であっても、猫被害が生じれば不法行為責任が成立すると認定しています。それは、前回記事でも書きました。
つまりいくら、「私は不妊去勢をしている」と言っても、地域住民の合意を得ていない、いわゆる「勝手地域猫(をされている方は多いですが)」の場合は、周辺に猫被害が及べば、仮に猫の数が減り、害が軽減したとしても、被害者に対して損害を賠償しなければならないということです。
一方、行政が地域猫活動を制度化して、「地域住民の合意」を条件として認めたものはどうなのでしょうか。私は、「地域猫活動を行うに際して、相当期間は猫による糞尿や鳴き声、体毛などの通常考えられる範囲の被害は継続する」ことを予め合意を得たうえで地域猫活動を行うのならば、事前に合意を得た範囲内の猫被害であれば、地域猫活動家は不法行為責任を問われることはないと思います。
しかし地域猫活動を開始する際に、事前に想定した範囲の被害を超えた場合、私は地域猫活動家の不法行為は成立すると解釈します。「事前に想定した範囲を超えた被害」とは、例えば、地域猫が原因となった深刻な感染症の発生などです。周辺で、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、に感染した猫やマダニが発生し、「地域猫がSFTS感染の原因になりうる」と合理的に判断できるような状態であったにもかかわらず、さらに感染症の危険性から地域住民や行政から中止を求められたにもかかわらず、地域猫活動を強硬に継続したような場合です。そして地域猫が、活動家以外の地域住民の家の庭を徘徊して、例えばSFTSに感染したマダニを落とし、それにより人が感染して死亡したなどです。海外の例では、アメリカ、カリフォルニア州の自治体では、TNR猫が発疹チフスに感染したノミをばらまき、それが原因で人が感染しました。TNR活動家らは、刑事訴追を受けました。
その他に疑問点がありますが、「地域住民の合意を得た」ことを何を持って証明するかということです。多くの自治体要綱・要領では、地域猫の「地域住民の合意」の証明として、自治会の賛成を求めています。しかし現在では、自治会の組織率は低下傾向です。地域によれば、自治会の参加世帯の割合が3割未満という街区も珍しくありません。自治会の組織率がほぼゼロで機能していない街区もあります。法律上、自治会は単なる任意団体ですので、地域住民は加入する義務がありません。では、自治会が地域猫活動に賛成した場合、自治会未加入の世帯で猫被害が及んだらどうなるでしょうか。私は、当然未加入世帯に対しては、地域猫活動家の不法行為は成立すると解釈します。
さらに考察すれば、自治会での決議は全員が賛成するということは珍しいでしょう。では、過半数をもって、地域猫活動を開始することに合意するのでしょうか。では、自治会の決議で、地域猫活動に反対した世帯に猫被害が及んだ場合は不法行為は成立するのでしょうか。疑問が湧いてきます。
さらに近年では、「地域住民の合意を必要としない地域猫」を制度化する自治体が出てきています。例えば東京都荒川区ですが、荒川区猫の屋外での活動の適正管理等に係る地域活動の支援に関する要綱、地域猫活動を行うに際して、「地域住民の合意」は一切不問です。地域猫活動の認可の条件として、「地域住民の合意」を得ることが極めてハードルが高いために、地域猫活動家らの要望を受けたと私は推測します。
例を挙げた荒川区の地域猫であれば、「区内に住所を有し、又は区内に在勤し、若しくは在学する者3人以上で構成する団体であること」が条件です。「地域住民の合意」は不問で、区内の在住、在勤、もしくは在学者からなる3名以上の団体であれば、「給餌を伴う地域猫活動をして良い」と荒川区が認めるというものです。この荒川区の認可地域猫において事前に地域住民の合意を得ずに猫被害が生じれば、司法判断によれば不法行為が成立します。行政が認可することは、猫被害による不法行為の成立を妨げることにはならないと考えられます。
荒川区の他、「地域住民の合意」を得ずに、地域猫活動を認める(すなわち給餌を許可する)ことは、行政担当者は、地域住民と猫被害者の訴訟トラブルを想定していないのでしょうか。仮に行政が、地域住民の反対があるにもかかわらず、地域猫活動を認可し猫被害が生じた場合、法理論上、行政と地域猫活動家との、共同不法行為が成立し、連帯責任を負う可能性もあると考えます。
さらに、行政が主導して、所有者不明猫は保険所に届けずに地域猫として管理せよという指導を強力に行った場合は、共同不法行為が成立する可能性はより高くなると思います。「糞尿が臭い、汚い」といったレベルであれば、仮に被害を受けた地域住民が訴訟を提起しても、賠償額は今のところ原告一人あたり数十万円レベルです(しかし賠償額は上昇気味です)。しかし重大な感染症により死亡者が出たなどであれば、賠償額は高額になりますし、それ以前に道義的な責任を問われるでしょう。
荒川区のような、地域住民の合意を必要としない地域猫の認可は、行政担当者は司法判断に関して不勉強だと思います。またあまりにも危機意識が低いと言わざるを得ません。次回以降の記事では、日本の地域猫制度の矛盾点を更に論じ、アメリカのTNRマネジメントとの比較を行います。
(動画)
和歌山 野良猫への餌やり禁止条例案可決?テリー伊藤。2017/01/13 に公開。国民の大多数(約8割)は、野良猫への餌やりは反対しています。
(画像)
上記のTV番組から。

荒川区猫の屋外での活動の適正管理等に係る地域活動の支援に関する要綱
第4条 活動支援を受けることができる地域の団体は、次に掲げる要件をすべて満たす団体とする。
(1) 区内に住所を有し、又は区内に在勤し、若しくは在学する者3人以上で構成する団体であること。
(2) 区内の地域を適正管理活動等の範囲としていること。
(3) 次に掲げるいずれの活動も確実に実施できること。
ア 飼い主のいない猫の不妊又は去勢手術を推進すること。
イ 新たな飼い主探し等を通じて、飼い主のいない猫の減少を図ること。
ウ 屋外で活動する猫の給じ、排せつ物等の適正管理を複数人で行うこと。
エ 猫の繁殖、排せつ物による生活環境の悪化等屋外で活動する猫に関する問題について地域住民に理解を深めてもらい、その改善に向けて、猫の不妊又は去勢手術、屋内飼育の奨励、不適切なえさやり行為の防止等について普及啓発する(*1、)こと。
*1、
~
つまり、「地域住民の理解と合意を得る前に活動することによって」、「活動を通じて将来的に地域猫活動の理解を深めてもらう」です。
事前に地域住民の合意を得ることが否定されています。
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