動物愛護管理法の犬猫引取り制限は改悪だったのか~猫被害の増大をもたらした


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Domestic/Inländisch
兵庫県は、2008年度から2015年度の期間における、県内の猫の殺処分数と猫の苦情・相談受付件数の統計を公表しています。それによれば、2014年から殺処分数は激減し、対して猫の苦情・相談受付数は急増しています。猫の殺処分数と、猫の苦情・相談受付数が逆相関であるということは、次のように分析せざるを得ません。「1、保健所による猫の引取り拒否が増えた→2、街中の野良猫の数が増えた→3、結果、猫による被害が増大した」。保健所の猫の引取り拒否ですが、2014年の動物愛護管理法改正が背景にあります。
まず兵庫県での、2008年から2015年にかけての、猫の殺処分数と猫の苦情・相談受付数に関する新聞記事を引用します。神戸新聞NEXT ブームの陰では… 猫との共生へ、兵庫県が指針。2017年8月8日。
兵庫県によると、同センターと県内4支所で殺処分された頭数は、2008年度の4614頭から15年度は2260頭に半減。
啓発活動の浸透などで飼い主のモラルが一定程度向上しているとみられる。
ただ、ごみあさりやふん尿の悪臭など苦情・相談件数は15年度で2998件に上り、08年度の1・8倍に増えている。
飼い猫の屋内飼育は、庭荒らしやふん尿の臭いといった近隣への悪影響を防ぐため、特に住宅密集地では「もはや義務と言っても過言ではない」と強調。
野良猫は、餌を得るために、猫同士が互いに競合しない領域を守っていることを説明。
人が餌を与えた地域では、領域を守る必要がなくなるため、頭数が極端に増加し、迷惑を感じる住民が増えるという。
また地域で野良猫を管理することは、通常の野良猫への餌やりと区別。
避妊、去勢措置を実施して寿命を迎えれば、次第に頭数を減らすことができ、野放図な餌やりによる迷惑行為を防ぐことにもつながるとしている。
(画像)
神戸新聞NEXT ブームの陰では… 猫との共生へ、兵庫県が指針。2017年8月8日より。

つまり兵庫県では、「2008年から2015年のあいだに、殺処分数は半減し、猫の苦情・相談件数は1.8倍に増加した」、さらに「その傾向が顕著なのは2014年以降である」ということがわかります。それは、犬猫の引取りの制限盛り込んだ、動物愛護管理法の2014年(平成26年)の改正が影響しているのは間違いありません。神戸新聞の記事では、「啓発活動の浸透などで飼い主のモラルが一定程度向上している」との分析ですが、それは誤りでしょう。飼い主のモラルが向上して室内飼いが増え不妊去勢も進み、無駄な繁殖も減ってその結果、保健所での殺処分数が減ったのであれば、猫の苦情・相談件数も減るはずです。
殺処分が減って、猫の苦情・相談件数が増えたという現象は、保健所が猫の引取りを事実上拒否をした結果、市中の野良猫が増えたとしか考えられません。動物愛護管理法の犬猫引取りの制限を盛り込んだ改正時と一致することもその裏付けとなります。
改正後の、動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)の、該当する条文を引用します。
(犬及び猫の引取り)
第三十五条 都道府県等その他政令で定める市は、犬又は猫の引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。ただし、犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他の第七条第四項の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる。
3 第一項本文及び前項の規定は、都道府県等が所有者の判明しない犬又は猫の引取りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する。
4 都道府県知事等は、第一項本文の規定により引取りを行つた犬又は猫について、殺処分がなくなることを目指して、所有者がいると推測されるものについてはその所有者を発見し、当該所有者に返還するよう努めるとともに、所有者がいないと推測されるもの、所有者から引取りを求められたもの又は所有者の発見ができないものについてはその飼養を希望する者を募集し、当該希望する者に譲り渡すよう努めるものとする。
第七条
4 動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
上記の動物愛護管理法の条文の、下線部部分が「自治体の犬猫の引取りを拒否して良い」とする、2014年の主な改正点です。
つまり、
・1、犬猫販売業者以外の一般飼い主に対しても、犬猫の終生飼養の努力義務を課した、
・2、一般飼い主に対しての犬猫終生飼養義務を盛り込んだことにより、自治体が飼い犬猫を一般飼い主から引き取ることを拒否できるようにした、
・3、国が犬猫の殺処分ゼロを目標としていることを動物愛護管理法の条文に盛り込んだ、
です。
動物愛護行政を所管する環境省は、上記の動物愛護管理法改正に先立つ、平成25年(2013年)に、人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト、を策定しています。その内容は、「犬猫の殺処分を減らす~なくす(殺処分ゼロ)を目標とする」ということです。2014年の動物愛護管理法の改正は、それに沿ったものと言えます。
さらに飼い主のいない猫対策としては、環境省は、人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト、において、事実上「地域猫活動」を推進しています。例えば、参考資料として付けられた、地域猫活動 - 環境省、では、明確に環境省が「地域猫活動を推進すべし」としていることがわかります。つまり環境省の方針は、「飼い主のいない猫(野良猫)の対策は(自治体は引き取らずに)地域猫とせよ」としているのです。
環境省の、「飼い主のない猫の対策は(自治体が引き取らずに)地域猫にせよ」という方針は、大きな問題をいくつも抱えています。次回以降の記事では、順を追って、環境省の方針の、「飼い主のいない猫(野良猫)の対策は地域猫にせよ~保健所での所有者不明猫の引取り拒否の正当化」の問題点を論じたいと思います。
1、地域猫活動は、野良猫の数と野良猫の被害を減少させる効果は実証されているのか。
2、地域猫活動は世論の支持を得ているのか。
3、地域猫活動における管理責任について~地域猫活動を原因とする感染症の発生などの重大な被害が生じた場合の法解釈。
4、海外のTNRマネジメントと日本の地域猫活動の違い~活動家の管理責任(法的責任)の考え方の違い。
5、地域猫活動は費用対効果では推進すべきではない。
地域猫活動は、感染症等のリスクがありますが、日本の地域猫活動では、感染症等の被害防止策が皆無です。例えばアメリカでは狂犬病などのワクチン接種を義務付けています。
さらに日本では、地域猫の管理責任を国が示すことを意図的に避けているという重大な欠陥があります。対してアメリカでは、TNRマネジメントを自治体が認定する条件として、TNR猫のマイクロチップによる登録を個体管理を義務付けています。それはすなわち、TNRマネジメントにおける、管理責任を認めているということです。日本は地域猫の管理責任を行政は意図的に曖昧にしていますが、仮に、地域猫が原因で重大な感染症が発生して死者が出るなどの深刻な被害が生じれば、学説上、法律上、過去の司法判断からして、地域猫活動家らの管理責任は逃れられないと思います。また、アメリカでは、TNRマネジメントが原因として発疹チフスが人に感染したとして、TNRマネジメント活動家らが刑事訴追されました。
(動画)
【ニュース速報】野良猫の餌やりに55万円の賠償命令が!!2015年9月25日公開。
こちらの事件は、行政が認めた地域猫ではありません。しかし猫の餌やり被害に対する損害賠償請求裁判はいくつも提起され、いずれも原告が勝訴しています。法理上、行政が認定した地域猫であっても、地域の同意を得ていたとしても、被害が生じれば地域猫活動家に法的責任が生じると考えられます。行政はこの点を自覚してるのでしょうか。また「糞尿が臭い、汚い」といったレベルではなく、地域猫が原因で重大な感染症により無関係な人が亡くなった場合も、当然地域猫活動家らに法的責任が及ぶと解釈できます。その点については、次回以降の記事で述べます。
隣家の女性が野良猫への餌付けを続けたため、排せつ物で自宅の庭が汚されたなどとして、福岡県内の住民が約160万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が福岡地裁であり、溝口優(ゆたか)裁判官が女性に対し、慰謝料など55万円の支払いを命じていたことがわかった。
兵庫県は、猫と共生するための基礎的な知識や考え方を示したガイドラインを作った。屋内飼育を徹底することをはじめ、飼い主の責任を明記。野良猫については、餌を与えないよう注意し、地域で管理する場合には住民の理解や不妊措置、餌やりのルールづくりが不可欠なことを強調した。県動物愛護センター(尼崎市)のホームページで公開している。
県によると、同センターと県内4支所で殺処分された頭数は、2008年度の4614頭から15年度は2260頭に半減。啓発活動の浸透などで飼い主のモラルが一定程度向上しているとみられる。ただ、ごみあさりやふん尿の悪臭など苦情・相談件数は15年度で2998件に上り、08年度の1・8倍に増えている。ガイドラインは、猫による住民への迷惑行為や殺処分数の減少につなげるのが狙いという。
飼い猫の屋内飼育は、庭荒らしやふん尿の臭いといった近隣への悪影響を防ぐため、特に住宅密集地では「もはや義務と言っても過言ではない」と強調。猫に運動量はあまり必要ではなく、屋内で飼っても閉じ込めて我慢をさせていることにはならないという。
野良猫は、餌を得るために、猫同士が互いに競合しない領域を守っていることを説明。人が餌を与えた地域では、領域を守る必要がなくなるため、頭数が極端に増加し、迷惑を感じる住民が増えるという。
また地域で野良猫を管理することは、通常の野良猫への餌やりと区別。避妊、去勢措置を実施して寿命を迎えれば、次第に頭数を減らすことができ、野放図な餌やりによる迷惑行為を防ぐことにもつながるとしている。その際は、自治会だけでなく、猫を嫌う人も含めて話し合うことが重要と指摘。餌を与える場所や時間、方法を決め、トイレの設置やふん便を素早く片付けることなどを求めた。
県生活衛生課は「ガイドラインを、猫の問題に理解を深め、各地域でどのように対策をするのか考えるきっかけにしてほしい」としている。(斉藤正志)
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