ドイツのティアハイムの飼養基準とは程遠い「日本版ティアハイム」の滑稽

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(Zusammenfassung)
・Tierschutz-Hundeverordnung
私はFaceBookのアカウントも持っていますが、しばしば海外情報に関する調べ物を依頼されます(Megumi Takeda)。最近も、「ドイツでの保護施設の犬の飼養基準」に関しての質問がメッセンジャーでありました。より多くの方にご覧いただきたく、その回答をブログ記事にして公開します。
ピースワンコジャパン(NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが運営)という、広島県の民間犬保護施設があります。ふるさと納税で資金を集め、広島県の殺処分対象の犬を引き取り、飼養し、譲渡活動を行うとしています。しかし多額の使途不明金の発生、過密飼育での動物虐待(衰弱死や収容した犬同士での共食いなど)、ネグレクト飼育、狂犬病接種を行わない狂犬病予防法違反、保護犬の脱走、不妊去勢の未実施による施設内での犬の出産などの不祥事が伝えられています。
本施設は、ピースワンコジャパン(NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが運営)、によれば、次のように紹介されています。
この施設建設にあたって、参考にしたのがドイツの「ティアハイム」であると、あるイベントでNPO法人ピースウィンズ・ジャパン代表の大西さんは語っています。
ティアハイムとはドイツにある保管期限が過ぎた、犬猫を預かるための民間の保護施設。
そのドイツでは殺処分が起きない仕組みを行政と民間が一体となって活動しています。
そして、ピースワンコの活動の中で、最もチャレンジングな取り組みが殺処分ゼロに向けた取り組み。
このサイトのライターさんは、ドイツのティアハイムに関しては相当無知のようですが、一応おさらいしておきます。このサイトの誤りの記述は以下の通りです。
・「ティアハイムとは保管期限が過ぎた、犬猫を預かるための民間の保護施設」~このライターさんは「ドイツには行政の犬の収容期間があり、その収容期間が過ぎたのちに移管する民間のアニマルシェルター」と誤解しているようです。ドイツには、行政による犬などの収容期間はありません(ごく短期間で、行政による強制殺処分が必須のケースでは、直接行政が引き取ることもある)。
・「ドイツでは殺処分が起きない仕組みを行政と民間が一体となって活動」ですが、ドイツでは行政による犬猫の殺処分が相当数あります。狂犬病規則(Verordnung zum Schutz gegen die Tollwut)による検査の強制殺処分、各州にある犬法(Hundegesetze)では、飼育を禁止する犬種の犬や咬傷犬などを行政が押収して強制的に殺処分する権限が定められています。その他通関法(Zollverwaltungsgesetz (ZollVG))による通関不備の犬猫などを強制的に殺処分する規定など多くの行政による殺処分規定があります。またティアハイムも殺処分を行っており、一定の条件下では殺処分は必須」とのティアハイムの統括団体のガイドラインがあります。ティアハイムの犬の殺処分率は、日本の公的殺処分率より高い(*1)のです。
さて、そのピースワンコジャパンですが、運営の在り方に疑問を持たれた方がいます。その方から、メッセンジャーで、私のFaceBookで質問をされた方がいます。以下が、その質問と、私の回答です。
Q (質問者様)質問と回答
ピースワンコの記事を読んでいてふと思ったのですが、記憶が曖昧なので教えてください。
Zoo Zajac関連で、ドイツのペットショップでは犬が何匹当たりごとに1人のスタッフが必要だという決まりがあった筈ですよね?
そのような決まりが保護施設でもあったと記憶していますが、そこはどうだったでしょうか?
A(さんかくたまご)
犬の飼養については、ドイツでは全般規定が、Tierschutz-Hundeverordnung 「動物保護 犬規則(省令)」で定められています。
個人飼い主、保護施設、商業飼育者すべてが適用範囲です。
犬の商業取扱者は、「犬の飼養は10頭につき有資格者1名を置く」と3条で定められています。
保護施設も適用範囲だと思います。
§ 3 Anforderungen an die Betreuung bei gewerbsmäßigem Züchten
Wer gewerbsmäßig mit Hunden züchtet, muss sicherstellen, dass für jeweils bis zu zehn Zuchthunde und ihre Welpen eine Betreuungsperson zur Verfügung steht, die die dafür notwendigen Kenntnisse und Fähigkeiten gegenüber der zuständigen Behörde nachgewiesen hat.
§3商業的(保護施設も含まれる)な犬の飼育のための要件
犬を商業的に飼育する人は誰であっても、成犬とその子犬の合計が10頭を上限として、必要な知識と技能を権限がある当局により証明された飼育者一人がいることを確認する必要があります。
つまりドイツにおいては、商業的犬飼育者は、犬10頭あたり最低でも、1人の資格がある飼育者が必要と、ドイツでは定められています。
その他にも、ピースワンコ・ジャパンがもしドイツにあったならば、本規則に違反すると思われる条項を挙げておきます。
§ 6 Anforderungen an die Zwingerhaltung
(2) In einem Zwinger muss
3.für einen Hund, der regelmäßig an mindestens fünf Tagen in der Woche den überwiegenden Teil des Tages außerhalb des Zwingers verbringt, die uneingeschränkt benutzbare Zwingerfläche mindestens sechs Quadratmeter betragen.
6条 犬舎の要件
(2)犬舎においては
3 犬は少なくとも週に5日、犬舎の外で一日の大部分を過ごすようにしなければなりませんが、無期限で使用できる犬舎は(註 犬舎の外に出さない場合)、面積は少なくとも1頭あたり6㎡以上なければなりません。
日本では、ドイツの動物愛護管理政策や、ティアハイムについては大変な誤解があります。ピースワンコ・ジャパンを立ち上げた団体は、「殺処分ゼロ」を錦の御旗に掲げています。それこそが「ドイツ殺処分ゼロの理想」その理想を実現するのだと。
しかしそれにより、「犬の過密飼育による虐待飼育化」、「無制限に犬を受け入れたことによるマンパワー不足により引き起こされたネグレクト飼育という虐待」が起きています。日本では誤解されていますし、当団体運営者も誤った認識があるようですが、ドイツは殺処分ゼロ」の国ではありません。むしろ殺処分は日本より厳格に行っています。たとえば日本では、咬傷犬を行政が強制的に殺処分を行える法的根拠はありませんが、ドイツでは「そのような犬は行政は殺処分しなければならない」と法律に明記しています。飼育を禁止する犬種にしてもしかり。通関における検疫不備の犬猫などを強制的に殺処分する規定はドイツにありますが、日本ではありません。
対して犬に関しては、飼養基準を数値基準を含め厳格に連邦規則で定めています(日本では誤解がありますが、ドイツでは猫の飼養の数値基準は連邦の法令、たぶん下位法でもないです)。上記の回答のほか、「犬舎の採光基準」や、「犬舎の床に断熱材を使用する」などの規定もあります。ドイツの動物法においては、日本の動物愛護管理法のように、犬猫その他の動物に関して、「終生飼養」義務は一切記述がありません。ドイツの理念は、「殺処分(致死処分、安楽死)はむしろ動物福祉に反する状況で動物を生かし続けるよりも、行ったほうが動物福祉に適う」なのだと思います。つまり「絶対的に殺さない」のではなく、「Quality of life(QOL)をより重視する」です。
ですから、ピースワンコ・ジャパンが掲げる、「ドイツに倣って殺処分ゼロを実現する」は、むしろドイツの動物福祉の理念に真っ向から反するのです。本施設の創設にかかわった方々が、ドイツの動物福祉の理念を理解していなかった、もしくは嘘と知りつつ、ドイツの「殺処分ゼロ」至上主義を推し進めて、動物虐待に陥っているのは、もはや喜悲劇です。
(画像)
ピースワンコ・ジャパンが「殺処分ゼロ」施設として倣ったとする、「ティアハイム・ベルリン」ですが、それが誤りであることは、私は何度もティアハイム・ベルリンのHPの記述を用いて指摘しました。近年、ティアハイム・ベルリンはHPを大幅に改定しました。しかし、ティアハイム・ベルリンが自ら収容動物の殺処分を行っているとの記述は、改定後も明記しています。一定の条件下では、「むしろ殺処分は不可避である、しなければならない」としています。また一定数の殺処分があります。なお、ティアハイム・ベルリンの本方針ですが、これはドイツ動物保護連盟(Deutscher Tierschutzbund e.v)の、「ティアハイム運営指針」に準拠しています。
・Tierschutz in Berlin seit 1841 「ベルリン動物保護協会 ティアハイムベルリン ホームページ」 の、service をクリック、さらに、Häufig gestellte Fragen 「よくある質問」をクリックすると、次の画面が現れます。
・Häufig gestellte Fragen 「よくある質問」
さらに、Werden Tiere eingeschläfert? 「ティアハイム・ベルリンは安楽死(殺処分)していますか?」をクリックすれば、以下の画面が現れます。

Werden Tiere eingeschläfert?
Grundsätzlich nein, es sei denn, ein wichtiger Grund liegt vor:
・Ein Tier ist so sterbenskrank, dass es nicht mehr zu retten ist und von seinen Leiden erlöst werden muss.
Sämtliche Einschläferungen von Tieren bedürfen de Einwilligung mehrerer Veterinäre sowie der Zustimmung des TVB.
Jeder Fall wird in einem Euthanasiebuch dokumentiert.
Einschläferungen erfolgen grundsätzlich nach Ausschöpfung aller Behandlungsmöglichkeiten; medizinisch-technische Voraussetzungen stehen in bester Ausstattung zur Verfügung, die finanziellen Aufwendungen für den Komplex medizinische Versorgung steigen stetig.
・Ein Tier zeigt gemäß der Tierheimordnung des Deutschen Tierschutzbundes so starke, nicht behebbare und konstante Verhaltensstörungen, dass ein Weiterleben entweder nur mit schweren Leiden verbunden wäre oder eine akute Gefährdung der Umwelt vorhanden ist.
Über solche Ausnahmefälle entscheidet dann eine sachkundige Kommission.
ティアハイムベルリンは動物を安楽死(殺処分)しますか
基本的には正当な理由がなければ行いません。
その動物が死に直面し治療不可能で、その苦しみから解放しなければならない場合。
すべての動物の安楽死は、数人の獣医師の同意とベルリン動物保護協会(註 ティアハイム・ベルリンの上部団体)の同意を必要とします。
安楽死の各症例は、記録簿に記載されています。
基本的には、すべての治療法の選択肢が尽きた後に行っています。
医療上および技術上の要求は可能な限り最も高度な設備で行うことが可能でありますが、複雑な医療のための財政的負担は年々増加しています。
ドイツ動物保護連盟のティアハイム運営指針によれば、動物が強度の回復不可能なかつ恒常的な行動障害を示していて、それが継続的な生きるうえで動物に深刻な苦痛の原因となる場合、もしくは周辺環境に深刻な危険を及ぼす場合。
そのような例外的なケースの安楽死は、知見のある委員会によって決定されます。
蛇足ですが、今回取り上げた、Tierschutz-Hundeverordnung 「動物保護 犬規則(施行規則 省令)」ですが、日本ではデタラメな解説が流布されているので、一部指摘しておきます。
1、この規則(省令)を「犬保護条例」と訳している文献が多い。しかしこの法令は「省令」です。 しかしね、ドイツ連邦全土に効力が及ぶ「条例」って何よ。ちゃんと中学出てんのか、公民で習うだろうが。
Das Bundesministerium für Verbraucherschutz, Ernährung und Landwirtschaft verordnet jeweils in Verbindung mit Artikel 56 des Zuständigkeitsanpassungs-Gesetzes vom 18. März 1975 (BGBl. I S. 705) und dem Organisationserlass vom 22. Januar 2001 (BGBl. I S. 127) auf Grund des § 2a Abs. 1, des § 11b Abs. 5 sowie des § 12 Abs. 2 Satz 1 Nr. 4, jeweils in Verbindung mit § 16b Abs. 1 Satz 2 des Tierschutzgesetzes in der Fassung der Bekanntmachung vom 25. Mai 1998 (BGBl. I S. 1105, 1818), von denen § 2a Abs. 1 Nr. 5, § 11b Abs. 5 und § 12 Abs. 2 Satz 1 Nr. 4 durch Artikel 2 des Gesetzes vom 12. April 2001 (BGBl. I S. 530) geändert worden sind, nach Anhörung der Tierschutzkommission:
連邦消費者保護・食糧・農業省は、1975年3月18日付の管轄権調整法第56条、および2001年1月22日付省令に関連して、1998年5月25日公布の動物保護法第2条a 第1項、第11条b第5項、ならびに第12条第2項第1文 No.4、また関連条項として第16条b第1項第2文に基づき、動物保護委員会の審議により以下の規則を可決した。
なお、上に挙げた動物保護法の条項のうち第2条a第1項No.5、第11条b第5項および第12条第2項第1文 No.4は2001年4月21日付の法第2条による改正である。
例えば次のようなものです。
・四天王寺大学紀要 第54号(2012年9月)ドイツにおける動物保護の変遷と現状 中 川 亜紀子
~
「憲法改正に伴い2001年に、「犬の保護に関する条例」(Tierschutz-Hundeverordnung)が公布され」という記述があります。これは大学の教員による論文で、動物愛誤界での引用が多いです。しかし上記の誤りのほか、「ドイツでは家畜の屠殺は麻酔による」などとんでもない誤訳が多数ある問題文献です。
・一般社団法人 日本動物虐待防止協会 「動物愛護管理法を見直す会」
環境省の資料ですが、まさに税金泥棒省庁。
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「犬の保護に関する条例 (Tierschutz-Hundeverordnung)」 訳者: アルシャー京子 (ドイツ在住獣医師 ベルリン自由大学獣医学部動物保護研究室所属)
2、本規則では「懲役刑がある」という、デタラメ資料
・動物愛護管理に係る海外調査報告書 平成29年8月 調査機関 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(広島県が委託)
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「ドイツでは犬命令(2001年)(註、Tierschutz-Hundeverordnung 「動物保護 犬規則(施行規則 省令)」 により、飼い方に違反していると判断された場合は懲役もしくは罰金も科される」(5ページ)ですが、本規則には懲役刑はありません。行政罰の過料のみです。本資料はこれ以外にも、ぎっしりとデタラメが詰め込まれた問題資料です。まさに税金泥棒、盗人。
3、本規則では「犬の係留飼育を禁じている」というデタラメ資料
平成 29 年度 訪独調査結果 平成 29 年度 ドイツにおける動物保護の 取組みに係る調査業務 報告書 環境省
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「犬保護法(註、Tierschutz-Hundeverordnung 「動物保護 犬規則(施行規則 省令)の事と思われる。これは法律ではありません。法律は、議会で決議されたものを指します。本規則は省委員会で決議れたものです)では犬をつないだまま飼うことが禁止されている」(27ページ)。禁止は妊娠犬などの一部です。その他この資料は、嘘デタラメがぎっしり53ページ全編にわたりてんこ盛りです。animal hoarding を、animal holding と記述しているのは、笑いを誘うためですか。もう環狂(境)省はゴミ底辺省庁。