「日本版建設費3億円ティアハイム構想」のリスクー2
前回記事、「日本版建設費3億円ティアハイム構想」のリスクー1の続きです。本記事では実際にあった、動物愛護を名目として集めた募金を動物愛護(誤)団体が流用した事件「ひろしまドッグパーク事件」を取り上げます。
以下にウィキペディアから、事件の概要を引用します。ひろしまドッグぱーく募金流用事件とは。ウィキペディアより「ひろしまドッグぱーく」。
ひろしまドッグぱーくは、かつて広島市佐伯区湯来町大字白砂にあった、犬のテーマパークである。
2003年(平成15年)に開園。
しかし入場者数が年々減少するようになり、開園からわずか2年後の2005年(平成17年)で閉園した。
2006年(平成18年)に大阪の動物愛護団体「アーク・エンジェルズ(現・エンジェルズ)代表、林俊彦氏」をはじめとして、支援を開始した。
後動物愛護団体が全国から寄せられた支援の金品を用い、ボランティアを取りまとめる形で飼養していた。
2006年(平成18年)の『ムーブ!』(朝日放送)で、動物愛護団体「アーク・エンジェルズ」の代表が、今回の事案に対して寄せられた寄付金に手をつけず、団体の活動資金に流用しようとしていることを放送。
2007年(平成19年)にアーク・エンジェルズに寄付を行った元支援者数人が、寄付金の不正流用を疑い、返還を求めて大阪地方裁判所大阪地裁に提訴。
2010年に大阪地裁で、前記の寄付金返還訴訟について、原告敗訴の判決が言い渡される。
その後の経緯ですが、ひろしまドッグパーク原告の会 HPで明らかにされています。以下はその概要です。
「原告団は大阪高裁に控訴し、2011年12月9日に逆転一部勝訴となりました(請求額400万円のうち、被告エンジェルズに対して47万円の支払いを命じた)。エンジェルズは、最高裁に上告しましたが、最高裁は上告の不受理を2011年12月9日に決定しました。高裁は、2012年2月26日にエンジェルズの上告を棄却しました。しかしさらに、エンジェルズは上告理由書(憲法上の是非を問う訴え)を出しました。その訴えでは、2013年に上告を棄却するという判決が出され、(請求額400万円のうち、被告エンジェルズに対して47万円の支払いを命じる)との判決は確定しました」。
原告団の権利回復には、6年以上の歳月を要したのです。
ひろしまドッグパークの事件にあるように、動物愛護(誤)団体が動物愛護を騙って募金を募り、その募金を流用したとしましょう。そのようなケースでは、動物愛護(誤)団体の責任を追求するのは極めて難しいのです。ひろしまドッグぱーくの事件では、一審で原告は完全敗訴、二審でやっと請求額の9分の1が戻ってきたに過ぎません。
例えば「ノーキルの動物保護施設を建設し、保護犬猫を終生飼育する」と言って、愛護(誤)団体が募金を募ったとします。しかし募金が目標に達しなかったから、当初の目的であった動物保護施設は建設を取りやめました。法人を解散して、募金は出資者に分配しました。もしくは動物保護施設を建設したところ、当初の予定に反して運営費が賄えず、犬の営利目的の繁殖場に転用しました。そのようなケースであっても、募金した人がその金員の返還を求めることは大変難しいのです。
仮に「ノーキル動物保護施設を建設運営する」という募金の名目が嘘で、当初から法人を解散して募金をだまし取ろうとしていたとしても、「ノーキル動物保護施設」が真の目的でなくて、営利目的の犬の繁殖場を作ろうという魂胆だったとしても、募金を集めた動物愛護(誤)団体を詐欺罪で訴追するのはほぼ不可能です。募金を募った動物愛護(誤)団体の犯意をどうやって立証するのですか。「最初からノーキル動物保護施設など建設する気は毛頭なかった」なんて、人の心の内をどうやって証明できるのですか。
「当初思っていたように、募金が目標に達しなかったから法人を解散した」とか、「当初思っていたように、ノーキル動物保護施設の運営が思うようにいかなかったから、施設の目的を変更した」といくらでも言い訳が立ちます。じつはそれが本当の意図であって隠していたなんて、証明できません。
私が繰り返し書いていますように、ドイツのティアハイムでは一定数の安楽死を行なっています。一定数の安楽死を行い、収容動物の選別を行って厳しい経営をしている、200年近くの歴史のあるティアハイムでも経営破綻しています。ペットショップでの、犬猫店頭展示販売が比較的少ないドイツでも、ペットショップの台頭によりティアハイムの経営は脅かされています。さらに追い討ちを書けるように、ドイツの権威あるティアハイムでも、募金は減少しています。
動物保護施設の歴史のない日本で、大規模施設が運営できるほど募金が安定的に集まるのでしょうか。ドイツと異なり、日本では保健所での収容犬猫の譲渡があります。所有者のない犬猫の譲渡事業は、さらに民間が行って需要があるのでしょうか。また日本はドイツよりはるかにペットショップで犬猫の生体を買うことが一般的です。それらはいずれも動物保護施設による犬猫譲渡事業と競合します。
「ノーキル」というワードは、一部の人にとっては大変魅惑的なのかもしれません。しかし私は、完全ノーキルを達成できた国は皆無と断言します。甘言に惑わされることなく、現実を見ることのほうが大切です。それはひいては正しい動物愛護につながります。
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