オーナーを搾取する「家賃集金管理システム」-6



オーナーを搾取する「家賃集金管理システム」-5
(上記記事の続きです。なお「家賃集金管理システム」とは、賃貸全面管理委託のことです。最大手ハウスメーカーがこの名称を用いていますので、本記事でもそのように記載しました)。
「家賃集金管理システム」(=賃貸全面委託管理)では、「入居者間のクレーム対応」を業務として謳っています。しかし管理会のクレーム対応能力には期待しないほうが良いでしょう。
さらには、入居者間や入居者とオーナーや近隣住民との仲裁は法律事務に該当します。弁護士等の資格がない賃貸管理会社が行えば非弁活動であり、刑事罰の対象になります。法律上も賃貸管理会社は、入居者等が関わる利害関係の仲裁は出来ません。
アウトソーシングが有効な業務は、・定型的で、・権限委譲の範囲が明確、・マニュアル化できる、ものです。
賃貸管理委託はアウトソーシングの一種です。その内の「クレーム対応」は、上記の条件に全て反します。つまり・非定型的、・権限委譲の範囲が不明確、・マニュアル化がそぐわない、のです。
賃貸住宅に関わるクレームは多岐にわたり、思いもよらないトラブルばかりです。それらの対応をマニュアル化して解決できるものではありません。対応によっては、さらにトラブルを大きくします。
それを無理に対応手順をマニュアル化すれば、クレームの原因入居者に注意文書をポスティングすることと、ポスターの掲示になります。事実賃貸管理会社は、クレーム対応はポスティングとポスター掲示しかしません。
画像左・中は、私が所有している投資向け区分所有マンションでのポスター掲示です。このマンションの管理会社は独立系で一棟の賃貸マンションアパートも多く管理受託しています。ですから画像のマンションと一棟の賃貸集合住宅と管理手法は同じです。
共用部分が狭いことから、バイクの駐輪は禁止しています。管理会社の対応は「バイク駐輪禁止」のポスターを掲示するのみで、全く効果はありません。
また本マンションは犬猫等のペット飼育が禁止されています。かつてこのマンションに住む母子が猫を数匹飼育し、外にも放していました。市が回収しない猫のトイレ砂をマンション以外のごみステーションに捨てるので、近隣から苦情が再三来ていました。
管理会社の対応は、当該入居者にペット飼育禁止とゴミだしの注意を促す文書をポスティングするのとペット飼育禁止のポスターを掲示するだけでした。結局当該入居者が退去するまで改善しませんでした。
賃貸集合住宅での入居者クレーム対応について、参考になる本があります(画像右)。
鈴木ゆり子の「実践満室大家塾」目次:鈴木ゆり子の「実践満室大家塾」
年利20%サラリーマン大家の不動産投資術:「鈴木ゆり子の実践! 満室大家塾」を読んで
その中では、著者の鈴木ゆり子氏のクレーム対応方法が書かれています。
鈴木氏が経営するアパートで、女性入居者から「同じアパートに住む男性が、ベランダに出て私を監視してストーカーする」と言う苦情が入りました。鈴木氏はくだんの男性入居者を訪問しますが、単刀直入に「ストーカー行為を止めなさい」などと言いません。まず世間話から始めます。
実はこの男性入居者は、部屋を汚さないようにベランダに出てタバコを吸っていたのでした。
管理会社のように「ベランダで女性を監視する行為は止めてください」という文書をポスティングしたらどうなりますか。男性入居者は怒るでしょうし、なおさらアパート入居者間の人間関係が悪くなります。それは退去にもつながるでしょう。
私も似た経験があります。アパートの女性入居者が「夜中に真上に住む男性入居者がドアをたたいたりして嫌がらせをするので怖い」と苦情を申し入れてきました。一方で、指摘のあった男性入居者は「夜中の2時ごろに、真下の部屋の女性入居者を男性が訪ねてきて、テレビを大音量でつけたりしてうるさくて迷惑だ」と苦情を入れてきました。男性入居者は「うるさい」と注意する意味でドアを叩いたのです。
私が女性入居者の言うことを真に受けて男性入居者に「女性入居者への嫌がらせを止めなさい」と頭ごなしに注意したら大変なことになります。
人間関係は微妙です。人の気持ちを汲み取り、キメ細やかな対応が必要です。それは非定形的な状況判断をしなくてはなりません。
一方の言い分だけを聞いて、マニュアル通りそのまま文書で注意しても何の解決にもなりません。かえって人間関係を悪化させる可能性もあります。かといってオーナーが対応すれば必ず良いと言うものでもありません。頭ごなしに注意するのであれば、管理会社のポスティングのほうがマシかもしれません。
賃貸住宅でのクレーム対応は、特に人間関係は非定型的で、全てが特殊なケースであると言っても過言ではありません。それらの対処を管理会社に一任しても、期待通りの解決は望めないでしょう。クレーム対処は、その人の臨機応変な「人間力」がものを言うからです。
なお、本記事でご紹介した鈴木ゆり子氏の「満室大家塾」では、「タバコをポイ捨てする入居者に止めさせるには、口やかましく注意するより目の前で大家自ら黙って拾うのが効果がある」との記述もあります。概ね正解だとは思いますが、私のアパートの覚せい剤ジャンキー入居者には全く効果がありませんでした。
クレーム対応は、「こういうケースではこうする」と手順をマニュアル化することはできないのです。
しかし多くの社員、中には入社したばかりの方もいる賃貸管理会社は、対応手順をマニュアル化せざるを得ません。人の心の機微を察したクレーム対処を期待しても無理です。不動産賃貸業はサービス業の一種です。クレーム対応が「業」としての品質を左右します。
・こちらでも本記事を公開しています。
オーナーを搾取する「家賃集金管理システム」-6
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