アメリカのTNRマネジメントでは傷病猫等を殺処分する間引きも行われる

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(summary)
TNR management supported by municipalities in the United States and TNR activities in Japan are completely different.
記事、
・アメリカ合衆国での相次ぐTNRの否定~連邦魚類野生生物庁、CDCに続き連邦農務省もTNRより殺処分を推奨、
・アメリカ連邦農務省のTNRを完全否定する文書から~外猫は生態系、環境被害、感染症のリスクを高める被害は深刻である、
・アメリカ連邦農務省~外猫による被害を防止するためには飼猫のマイクロチップと室内飼い義務化、外猫への給餌禁止を自治体は立法すべき。TNRは効果はない。、
・アメリカ連邦農務省は「TNRは効果がなく外猫は銃やわなで殺害駆除することを推奨する」とした、
・アメリカと日本ではTNRは全く異なり、日本のTNRは野放図無法な餌やりの免罪符にすぎない、
・場所が厳しく制限され、MCで届け出た猫も行政による捕獲殺処分があるアメリカのTNRマネジメント、
の続きです。
アメリカ連邦農務省は2021年に魚類野生動物サービス庁、CDCに続き、TNRを完全に否定しました。「TNRは費用対コストで劣り、その上確実に外猫の数を減らすことはできない。外猫の対策としては忌避剤、銃殺、罠と、合法的な安楽死を推奨する」という内容の公文書を公表したことを連載記事で述べました(US. Department of Agriculture Animal & Plant Health Inspection Service Wildlife Services Wildlife Damage Management Technical Series Free-ranging and Feral Cats)。対して、TNRを支持する、アメリカ連邦政府機関は1つもありません。アメリカでは、ごく例外的にTNRマネジメントを条令で認め、制度化している自治体はあります。しかしその内容は、日本で思われているTNRとは全く異なります。
前回記事、アメリカと日本ではTNRは全く異なり、日本のTNRは野放図無法な餌やりの免罪符にすぎない では、アメリカの自治体が認めるTNRマネジメントと、日本で行われているTNR活動やTNRを前提とする地域猫活動とは全く異なることを示しました。例としてロサンゼルス市のTNRマネジメントを取り上げました。
以下に、アメリカでの自治体が条例で規定しているTNRマネジメントの一般的な内容を示します。日本で行われているTNRや、TNRを前提とした地域猫活動では、以下の1~7が行われている例は1つも知りません。ただしアメリカのTNRマネジメントでは、日本の地域猫活動の様に地域の同意は必要とはしていません。
1、去勢の他、狂犬病ワクチンが義務付けられる。
2、MCが義務付けられ、自治体にTNRマネジメントの対象猫の届け出が必要。
3、TNR活動が行えるエリアが厳しく制限される(例としてはロサンゼルスなど)。
4、活動計画に基づき、まず最初に管理可能な猫の上限数を定め、その数まで老齢、傷病猫は捕獲安楽死させ「間引き」をする。
5、積極的にTNRマネジメント猫は飼猫として譲渡して減らす努力をする。
6、TNRでの給餌を禁止している自治体もある(ロサンゼルスなど)。
7、アメリカの自治体は概ね外猫の捕獲と殺処分を行っており、TNRマネジメントで正規に登録している猫も状況(近隣から苦情があった、同じ猫で複数回捕獲されるなど)によっては対象となる。
今回は「アメリカのTNRマネジメントでは傷病猫や老齢猫を殺処分して間引く」、フロリダ州とテキサス州の実例を挙げます。この2つのTNRマネジメントのケースは論文で効果が検証されています。いずれも「TNRマネジメントを行った猫のコロニーでは猫の個体数が減ったが、主な要因は猫を飼猫として譲渡したことと、傷病老齢猫の間引き(安楽死、殺処分)であって去勢の効果とは言えない」と結論付けています。
しかしこの2つのTNRマネジメントのケースは、日本で「TNRは猫を減らす効果がある」と引用され、いずれも「一般譲渡と間引き(安楽死、殺処分)」のことには触れていません。まさにチェリー・ピッキングです。アメリカのTNRマネジメントの情報が正しく伝わっていない日本においては誤った認識をもたらすため、悪質と言えます。以下に引用します。
・Trap–neuter–return
An eleven-year study of a TNR program at the University of Central Florida achieved a population decrease of 66%, from 68 cats in 1996 to 23 cats in 2002.
However, TNR was not the sole reason for success.
The population reduction was primarily from adoption (47%) and euthanasia (11%), or due to the cats no longer living on site with their whereabouts unknown (15%).
セントラル フロリダ大学での11年間にわたるTNRプログラムの研究では、1996年の68匹の猫の数から、2002年の猫の数23匹へと66% 個体数の減少が達成されたとあります。
しかしながら、TNR(去勢) だけが成功の理由ではありませんでした。
個体数の減少は主に飼猫として譲渡)としたこと(47%) と安楽死 (11%) によるもの、または行方不明でTNRマネジメントの現場で生息しなくなった猫(流出猫)(15%) によるものでした。
この論文を「TNRは猫を減らす効果がある」として、引用している博士論文があります。この論文では、上記のセントラル フロリダ大学におけるTNRマネジメントでの、飼猫化と安楽死(殺処分=間引き)について一切触れていません。読者は「猫が減ったのは去勢の効果のみである」と著しく誤認させ、問題があります。以下に引用します。
・博士論文 地域猫活動が野良猫の個体数制御及び福祉に及ぼす影響 2020 年 3 月 帝京科学大学大学院 理工学研究科 先端科学技術専攻 学籍番号 17NA001 三井 香奈
TNR 活動により、実際に野良猫の個体数が減っていることが米国のフロリダ州などで報告されている(Levy et al., 2014; Levy et al., 2003; Mahlow, 1999)。
次はテキサス農工大学構内で行われたTNRマネジメントです。このケースは、繰り返し日本のTNR,動物愛誤団体に好んで引用され「TNRは猫を減らす効果が大変高い」という根拠とされています。しかしこのケースでも、猫が減ったのは飼猫としての譲渡と、感染症の個体を安楽死(殺処分=間引き)したことが大きな要因とされています。
・Implementation of a feral cat management program on a university campus 「テキサス農工大学構内での野良猫管理プログラムの実施」 2002年
In August 1998, Texas AM University implemented on campus a trap-test-vaccinate-alter-return-monitor (TTVARM) program to manage the feral cat population.
In this article we summarize results of the program for the period August 1998 to July 2000.
In surgery laboratories, senior veterinary students examined cats that were humanely trapped once a month and tested them for feline leukemia and feline immunodeficiency virus infections, vaccinated, and surgically neutered them.
They euthanized cats testing positive for either infectious disease.
The program placed kittens and tame cats for adoption; cats totaled 158.
The prevalence found for feline leukemia and feline immunodeficiency virus ELISA test positives was 5.8% and 6.5%, respectively.
Following surgery, 101 cats returned to campus.
The program placed 32 kittens, juveniles, and tame adults for adoption.
1998年8月にテキサス農工大学は、野良猫の個体数を管理するために、トラップ テスト ワクチン接種 中性化 リターン モニター (TTVARM) プログラムをキャンパス内に実装しました(いわゆるTNR。捕獲、去勢、リリースの他にワクチン接種とモニタリングを行うテストプログラムという意味)。
この論分では、1998年8月から2000年7月までの期間における同プログラムの結果を要約します。
獣医外科研究室では獣医学部上級生が人道的に捕獲された猫を月に1回検査し、猫白血病と猫免疫不全ウイルス感染の検査、ワクチン接種、および外科的な去勢手術を行いました。
外科研究室では、いずれの場合も感染症の検査で陽性となった猫を安楽死させました。
このプログラムでは、子猫と人に慣れた猫を養子縁組のために飼猫として譲渡しました。
対象となった猫の合計は合計158匹です。
猫白血病と猫免疫不全ウイルスの ELISA 検査陽性者の有病率は、それぞれ 5.8% と 6.5% でした。
去勢手術後に、101匹の猫が大学構内に戻されました。
このプログラムでは32 匹の子猫、若い猫、人に慣れた成猫が養子縁組のために飼猫として譲渡されました。
しかしこのケースでも「TNR活動での猫の積極的な飼猫化と譲渡と安楽死(殺処分による間引き)」が猫の大きな要因にかかわらず、その点に一切触れずに、都合よく引用している資料があります。以下に引用する資料ですが、猫が減ったのは去勢の効果だけと著しく読者を誤認させます。
また「どうぶつ基金では、殺処分ゼロを目指しています。TNRを急ぐ必要があります」とあります。この記述は、絶賛しているアメリカのTNRが「殺処分ゼロ化の手段」と著しく誤解させます。以下に引用します。
・やっぱりTNR 2012年4月10日
米国の研究者によると、テキサス州の大学で、九年前からキャンパス内ののら猫を対象に繁殖制限の比較調査が行われている。
75%の猫を安楽死させるよりも、75%の猫にTNRを行った方が、より猫の数が減ってきているという。
なおアメリカ合衆国では、上記のどうぶつ基金の記事の記述にあるように、TNRが一般化して広く普及しているわけではありません。連邦、州では制度化はされておらず、複数の連邦政府機関はTNRを完全に否定しています。TNRを支持する連邦政府機関は皆無です。アメリカ合衆国の全80,440自治体のうち、200余りの自治体が制度として認めているだけです。それ以外の多くの自治体ではTNRを行ったとしても野良猫への給餌は、懲役刑も含む処罰対象です。
しかもアメリカの自治体が制度として認めているTNRマネジメントは非常に制限が多く、日本で行われているTNR活動や、TNRを前提とする地域猫活動とは全く異なります。今回記事で述べた通り、対象地域の傷病等の野良猫の安楽死(殺処分=間引き)もあります。日本で行われているTNR、地域猫活動は野放図、無法な餌やりの口実として行われているにすぎません。
(動画)
A Gilbert man facing possible jail time for feeding feral cats 「野良猫に給餌したギルバート町の男は、懲役刑の可能性に直面しています」 2020年1月28日
概要:アリゾナ州ギルバート町の男は猫に給餌したことにより、今週に裁判が予定され、懲役刑に直面しています。この男性は、ポール・ロドリゲス氏です。
ギルバート町は、町の公有地で猫に餌やりをすることを禁じる条例を可決していました。ポール・ロドリゲス氏は夜間に隠れて、ギルバートの町内で猫の給餌をしていました。ポール・ロドリゲス氏は14年間それを続けました。彼はそれに10万ドルを費やしたと言っています。ポール・ロドリゲス氏は大の動物好きで、野良猫の給餌するとともに去勢をする(いわゆるTNR)ことにより、猫の数を減らすのが最良の方法と信じていました。
(動画)
71-year-old woman may go to jail for feeding stray cats 「71歳の高齢女性は野良猫に餌をやったために刑務所に行くかもしれません」 2012年8月28日
概要:71歳のジェリー・デンプシーさんは、施しの精神と猫への愛情で給餌をしていると説明しました。彼女は餌代で月に800ドルを費やして、地域の野良猫に給餌をしていると言っています。また彼女は、近隣の野良猫を捕獲して去勢手術をしてリリースする(TNR)ことに多くの時間を費やしています。
彼女は裁判所から猫に餌をやるのをやめるように命じられており、刑務所に行く可能性に直面しています。彼女は今まで3回裁判所に出廷しています。野良猫の給餌したことによる273ドルの罰金や、不法侵入罪での455ドルの罰金など様々な理由です。この状況で猫に餌をやることをやめなさいという人に「私は猫を餓死させたくないのです。餌を与えなければ猫たちは餓死してしまう。猫たちを餓死させればいいというのですか」とデンプシーさんは言います。
(動画)
WATCH | Garfield Heights woman sentenced to jail for feeding stray cats learns final fate 「オハイオ州ガーフィールドハイツに住む、野良猫の給餌した女性の実刑判決」 2019年8月7日
概要:野良猫の給餌を行った、オハイオ州ガーフィールドハイツに住む79歳の女性の裁判のライブ配信。女性は引っ越しをした近隣の住民が猫を置き去りにしたために、見かねてその猫に餌を与えたといいます。しかし執行猶予はつかず10日間の懲役刑が言い渡されました。