「禁止犬種法」は咬傷事故減少に効果があるのか?


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・35 Dog Breeds That Have Attacked the Most People
・hundebiss statistik 2013
私は今まで多くの記事で「海外では特定の犬種(攻撃性が高く危険とされる犬種。主に闘犬として品種改良された犬)の飼育を禁じる法律」があることを書いてきました。特定の犬種の飼育を禁じる目的は、これらの犬種は人身事故(咬傷事故)を起こす確率が高いために、飼育を禁じて重大な咬傷事故を防止する」です。しかし犬種別の咬傷事故発生統計を見る限り、必ずしも多くの国が法律で飼育を禁じている犬種の咬傷事故発生率が高いとは言えないようです。
私は前回記事、ドイツの犬咬傷事故は日本の約10倍~ドイツにおける犬の咬傷事故35,000件の分析結果、で、日本以外の先進国の多くが特定の犬種の飼育を法律で禁じていることを書きました。その上で、ドイツのハノーバーの獣医師による研究を報じた、ドイツのマスメディアの記事を紹介しました。その内容は次のとおりです。
・犬の攻撃性は、品種による関連性は見られない。特段、闘犬カテゴリーの犬が攻撃性がもともと高いとは言えない。
・犬の攻撃性は、その犬の生育環境や飼い主の躾によるところが大きい。
・しかし咬傷事故が起きれば、特定の犬種(多くの国が飼育を禁じている闘犬カテゴリーの犬)の場合は、重症化する。
その上で、「特定の犬種を禁じることは、咬傷事故減少の効果がある」と結論づけています。
欧米では、「特定の犬種の飼育を禁じるか否か」は、国によって判断が分かれています。以下に、各国の現状をまとめてみました。
・アメリカ~州によって異なる。多くの州では、特定の犬種を禁じる法律がある。
・カナダ~州によって異なる。オンタリオ州では、特定の犬種を禁じる法律がある。
・デンマーク~13種の犬種は、例外なく飼育禁止。押収され殺処分される。
・イギリス~特定の犬種の飼育を法律で禁じている。例外を除き違反者は最高懲役6ヶ月に処せられ、犬は原則殺処分される。
・ドイツ~連邦法で特定犬種の飼育を禁じている。州により対象犬種が拡大。原則犬は押収~殺処分。例外的に飼育が認められても、懲罰的な高額の犬税が課せられるなどの制限がある。
・スイス~概ねドイツと同じ・
・オーストリア~概ねドイツと同じ。
・フランス~概ねドイツと同じだが、例外的飼育許可には、犬の去勢不妊が必要。
・ギリシャ=~概ねドイツと同じ。
・オランダ~2008年まで大変厳しい禁止犬種法があった(違反者は最高懲役6ヶ月。犬は殺処分)が、2008年に撤廃。
・スェーデン~禁止犬種法が審議されたが立法にはいたらなかった。
・そのほか、シンガポール、香港などにも禁止犬種法があります。
概ね、多くの国で飼育を禁止している犬種は、・ピット・ブルテリア、・スタッフォードシャー・テリア(アメリカンを含む)、・ブルテリア、・マスティフ、です。これらの品種の流れを汲む犬種としては、・ドゴ・アルゼンティーノ、・土佐犬、・フィラ・ブラジレイロ。ロットイラー、などを禁じている国・州も多数あります。
一方、アメリカやドイツなどでは、犬種別の咬傷事故発生数の統計があります。まずアメリカの統計を取り上げます。
35 Dog Breeds That Have Attacked the Most People 「35の犬の品種 それらの犬のほとんどが人を攻撃したことがあります」2016年1月20日。「咬傷事故を起こした犬上位35種」より、ランキングの下位から記載します。
35 グレートピレニーズ
34 コリー
33 Brittany(ブリタニー)
32 Boxador(ボクサドール)
31 ビーグル
30 シーズー
29 ジャックラッセルテリア
28 ドゴ・アルゼンチーノ
27 Chabrador(チャブラドール)
26 Gerberian Shepsky(ガビリアン・シャプスキー)
25 ダックスフント
24 チャイニーズ・シャー・ペイ(Chinese Shar-Pei)
23 ベルジアン・マリノス(Belgian Malinois) マリノア
22 ラブロッティ(Labrottie)
21 ゴールデンリトリバー
20 ジャーマン・シェプラドール(German Sheprador)
19 オーストラリアン・シェパード
18 セントバーナード
17 アラスカン・マラミュート
16 ブルドッグ
15 カルネ・コルゾ
14 ドーベルマン・ピンシャー
13 ブルボクサー
12 グレートデン
11 オーストラリアン・キャトル・ドッグ
10 ラブラブル(Labrabull)
9 ピットワイラー
8 ラブラドール・リトリバー
7 チャウチャウ
6 ボクサー
5 秋田犬
4 シベリアン・ハスキー
3 ジャーマン・シェパード
2 ロットワイラー
1 ピットブル
(一般的に知られていない犬種は、原文のスペルを併記しました。発音は英語です)
ドイツには、ベルリン州が2013年に、咬傷事故を起こした犬種の統計を発表しています。その資料から、人身事故発生上位の犬種を多い順に以下に挙げます。hundebiss_statistik_2013 「ベルリン州 犬咬傷事故統計 2013年」。
Deutscher Schäferhund(ジャーマン・シェパード)
他の品種
Golden Retriever u. Labrador Retriever(ゴールデンリトリバー、ラブラドールリトリバー)
Rottweiler(ロットワイラー)
Tervueren, Groenendael, Laekenois (その他、シェパード系)
American Staffordshire Terrier(アメリカン・スタフォードシャー・テリア)
Parson Russell Terrier u. Jack Russell(パーソンラッセル、ジャックラッセル)
Dachshunde (Dackel)(ダックスフント)
Pit Bull Terrier(ピットブルテリア)
Yorkshire Terrier(ヨークシャーテリア)
Rhodesian Ridgeback(ローデシアン・リッジバック)
Boxer(ボクサー)
Spitz(スピッツ)
Weimaraner(ワイマラナー)
Dobermann(ドーベルマン)
Beagle(ビーグル)
Dalmatiner(ダルメシアン)
Riesenschnauzer(ジャイアントシュナイザー)
以下略。
アメリカ、ドイツの咬傷事故が多い犬種において、いわゆる飼育が禁止される闘犬カテゴリーの犬は次のとおりでした。アメリカ~1位~ピットブル、2位~ロットワイラー、と1位、2位は、いわゆる闘犬カテゴリーの犬です。しかし3位以下は、ジャーマン・シェパード、シベリアン・ハスキー、秋田犬、と、非闘犬種が続きます。
ドイツの統計では、1位がジャーマン・シェパード、2位がその多品種(雑種含む)、3位がゴールデンリトリバー、ラブラドールリトシバーが入り、4位が、ロットワイラーです。
これらの統計値を見れば、アメリカの場合は闘犬カテゴリーの犬を禁じるのはある程度合理性が感じられます。しかし、ドイツの統計においては、ジャーマンシェパードが突出して咬傷事故が多いです。4位にロットワイラーが入りますが、危険犬種されるアメリカン・スタッフォードシャー・テリアが4位に入っている程度です。
アメリカの統計もドイツ、ベルリン州の統計も、犬の品種の飼育数(母数)を考慮していません。当然ながら、飼育数が多い犬の咬傷事故は多くなります。ドイツでピットブルの咬傷事故が少ないのは厳しく法律(連邦法)で飼育が禁じられてるために飼育数の母数がすくないのかもしれません。対してアメリカでは、州によりピットブルの飼育が比較的寛容な州もあります。
この「咬傷事故数」の絶対数は、飼育数の母数を考慮していませんので、正確なところは、特定犬種(闘犬カテゴリーの犬)が危険とは即、断じることはできないと思います。飼育数という母数に対する咬傷事故発生数の割合がわかれば良いのですが。
(動画)
Rottweiler rettet junge Frau vor brutalem Raubüberfall ORF Bericht. 「ロットワイラーは、若い女性を残忍な強盗から守りました。ORF(オーストリアのTV局から)レポート」。2014/01/14公開。
アメリカでもピットブルの野良犬が女性を強盗から救ったという事件もあります。禁止犬種の飼育を禁じるのが絶対正しいのかどうかは、何とも言えません。ドイツでは、ロットワイラーの飼育を禁じる州とそうでない州があります。
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