「ドイツでは動物の権利が憲法で保証されている」という抱腹絶倒解釈~フェリシモ猫部ブログ

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(Zusammenfassung)
”In Deutschland geben wir die Rechte an Tieren. Es ist in Artikel 20 a des Grundgesetzes von Deutschland vorgeschrieben."
Es gibt so einen dummen Blogpost.
海外における動物支援の制度と日本を比較してみる
Grundgesetz
Artikel 20a
Der Staat schützt auch in Verantwortung für die künftigen Generationen die natürlichen Lebensgrundlagen und die Tiere im Rahmen der verfassungsmäßigen Ordnung durch die Gesetzgebung und nach Maßgabe von Gesetz und Recht durch die vollziehende Gewalt und die Rechtsprechung.
記事、
・TNRによりメリーランド州は殺処分ゼロを実現したという大嘘~「フェリシモ猫部」ブログ、の続きです。
「ドイツでは憲法で動物の権利を保障している」と書いているブログがあります。通販会社のHPにある、フェリシモ猫部ブログの記事、海外における動物支援の制度と日本を比較してみる、にある記述です。私は、動物に権利を認めた国は皆無と断言します。このブログ記事の記述は、他にも海外情報に関する、致命的な誤り(なのか意図的な嘘なのか)がいくつもあり、また著しく誤解を招く記述がある、きわめて問題の多いブログです。
まず、問題の記述を引用します。フェリシモ猫部、猫ブログの記事から。海外における動物支援の制度と日本を比較してみるより引用します。なお、フェリシモとは、神戸市のファッションや雑貨の通販会社です。
ドイツは、EUで初めて動物の権利を保障した他(2002年ドイツ憲法第20条a)(*1)、犬に関する命令(犬命令) (2001年)により、犬の飼育者等が順守すべき飼育方法等の基準を具体的に規定しています。
アメリカは、近年は州(*2)や市のレベルで、ペットショップでの展示による生体販売を禁止(*3)しています。
ASPCAでは、動物愛護法執行部門Humane Law Enforcement Divisionのチームのスタッフが、市民からの通報を受けて虐待された動物を保護しています。
ASPCAは、州の警察と同様に法執行の権限を与えられています(*4)。
有名なドイツのティアハイムは、民間の寄付金や会員費、相続資金等により運営されています(*5)。
ドイツ全土で1,000か所(*6)程度のティアハイムがあり、犬や猫を中心に、馬、鳥、豚、ウサギ、蛇なども保護されています。
*2、現在(2017年9月23日時点)では、アメリカ全土において、州でペットショップでの生体販売を禁止しているところはひとつもありません。
*3、ペットショップでの、生体販売を全面的に禁止している自治体も皆無です。一部の自治体では、犬猫ウサギなどの種に限り、営利ブリーダーからの仕入れ販売を禁じています(自家繁殖したものや、保護施設由来の動物は販売可能とする条例がほとんどです)
*4、ASPCAの、動物愛護法執行部門Humane Law Enforcement Divisionは、NY州で法執行の権限が限定的に付与されていましたが、2013年に解散しました。
*5、ティアハイムは、営利事業法人です。不要ペットの高額な引取り手数料、ペットの再販売事業、老犬老猫ホーム事業、ペット葬祭事業などが大きな収益の柱です。
*6、ドイツ国内のティアハイムの総数は、約550施設です(註 この点については17年9月26日に「550」と訂正しています)。
(根拠となるソースは「続き」をご覧下さい。上記の誤りについては、後ほどの記事で翻訳した上で解説します)。
海外における動物支援の制度と日本を比較してみる、は、以上のように、大変誤りが多い問題ブログです。今回記事では、「ドイツは、EUで初めて動物の権利を保障した他(2002年ドイツ憲法第20条a)」が明らかな誤解釈であることを述べます。
まず、「ドイツは、EUで初めて動物の権利を保障した他(2002年ドイツ憲法第20条a)」の根拠としている、ドイツ憲法20条aの原文を以下に示します。Grundgesetz 「ドイツ連邦共和国憲法」。
Artikel 20a
Der Staat schützt auch in Verantwortung für die künftigen Generationen die natürlichen Lebensgrundlagen und die Tiere im Rahmen der verfassungsmäßigen Ordnung durch die Gesetzgebung und nach Maßgabe von Gesetz und Recht durch die vollziehende Gewalt und die Rechtsprechung.
第20a条
国家はまた次世代に対する責任において、天然資源と動物を憲法秩序の枠組みの中で立法を通じて、法律および行政権と司法により保護する(拙訳。ドイツ憲法は複数の日本語訳があります)。
この条文の中でのtier(動物)は、あくまでも保護対象となる客体としか理解できません。そのものが主体として有する、Subjektives_Recht(権利)という単語はひとつも入っていません。それと保護の対象は、die natürlichen Lebensgrundlagen(天然資源) und(と) die Tiere(動物)を、並列の、undで記述しています。では、天然資源、すなわち鉱物や森林資源が権利を有することが可能なのでしょうか。
さらにドイツ法では、tier(動物)は、断りがなければ脊椎動物全般をさします。ではドイツでは、イワシやシシャモは権利の主体となりうるのですか。
このようなことを、フェリシモ猫部の本の記事にコメントしました。さらに、「ドイツで動物の権利を保障しているとする、下位法の具体的な法規と該当する条文、そして具体的な施策をドイツ語原文の一次ソースで例示していただきたい」とコメントしました。そのコメントは公開されないばかりか、私はコメント投稿禁止を喰らいました。
ご参考まで、権利の定義について、いくつかの資料から引用します。まず、民法第3条ですが。日本では、民法で「権利(能力)」について定義しています。権利能力、つまり「権利」を有し、それを行使する「能力」ということです。さらに条文では、「私権」を享有すること、すなわち「権利を有することは、人の出生により始まる」とされています。
・(権利能力)
民法 第3条
私権の享有は、出生に始まる。
・(私権)
私権とは、私法関係における権利である。
日本法上、私権を享有することのできる能力を権利能力といい、その主体を人 (法律)という。
つまり「権利」と主体として有するのは、人に限るとしています。さらに法学上、
人の定義を「権利を主体をして有するものとしています。
私権には、次のようなものがあります。
・利益の性質による分類
財産権(物権、債権、社員権、知的財産権)
非財産権(人格権、身分権)
・効力の範囲による分類
絶対権/対世権(物権、知的財産権、人格権)
相対権/対人権(債権、社員権)
・作用による分類
支配権
請求権
形成権
私権の分かりやすい例として、・財産権、・物権(代表的なものとしては所有権)、・支配権(対象を直接支配することを内容とする権利の総称。私有財産の処分権など)を挙げます。例えば、動物に所有権を認めている国がありますか。犬や猫の名義の銀行預金ができますか。不動産登記ができるでしょうか。犬や猫が財産を相続することができますか。日本ではできません。ドイツも同様です。私は、動物に所有権を認めている国は皆無であると推測します。
その他、請求権とは、「他人に対して一定の行為 (作為または不作為) を要求することのできる権利」です。では、動物が訴訟の原告となることができますか。動物が原告となることを認めている国は、皆無であると私は推測します。
人格権ですが、「人格的利益を目的とする権利をいい、財産権と対比される。民法 は身体、自由、名誉を侵害したときは不法行為が成立すると規定する (710条)」としています。例えば犬猫に対して不妊去勢することは、「身体」を侵害することです。犬猫に権利があれば、不妊去勢はできません。犬の係留や猫のケージ飼いは、「自由」の侵害です。犬にリードをつけることは、動物に権利があればできません。また、名誉は動物には存在しません。例えば、「近所の猫、タマは泥棒猫で、何度もうちの金魚を盗まれた。見かけも醜い」、「○家のポチは凶暴で人に何度も噛み付いた。先天性の脳に異常があるバカ犬狂犬である」と、嘘の事実を公然と指摘しても、名誉毀損罪は成立しません。
対して、未だに意思能力がない赤ん坊でも、意思能力がない重度の障害者であっても、所有権はあります。銀行預金を本人の名前で出来ますし、不動産登記もできます。訴訟の当事者になることもできます。また、意思能力のない重度の知的障害者に対して、不妊手術をすることは権利侵害として認められません。対して犬猫などの動物は、普通に不妊去勢されています。
このように、権利を有する主体は、「人」しかないのです。それが今日の「権利」に対する、国際的に共通した法学上の考え方です。当然、ドイツ法においても、その考えを踏襲しています。Recht 「権利」(*7)。
(参考資料)
サルの自撮り。ウィキペディアより。「2014年12月、アメリカの著作権庁は人間以外の動物による作品はアメリカにおける著作権の対象とはならないと宣言した。2016年、アメリカの連邦裁判所は、サルは画像の著作権を有しないと判断した」。
(動画)
PETA Sues Over Monkey Selfies 「PETAはサルの自撮りで提訴する」。2016/01/07 に公開。これは一審判決です。後にPETAは控訴し、控訴審で和解が成立しています。
A judge ruled that a monkey does not own the rights to photos he shot of himself.
PETA sued the photographer who allowed a macaque monkey to take selfies, because he is profiting from those photos, but the judge ruled in the photographer’s favor.
“A US judge has ruled that a macaque monkey who snapped grinning selfies that went viral last year online does not own the copyright to the photographs.
裁判官は、サルは自分が撮影した写真の権利を所有していないと判決しました。
PETAは、マカクザルに自撮りを促した写真家を提訴しました。
なぜならば、その写真から利益を得ているからです。
しかし、裁判官は写真家に有利な判決を下しました。
アメリカの裁判官は昨年、オンラインで拡散された、笑って写真を自撮りしたマカクサルには、著作権がないと判決しました。
(画像)
有名なドイツのティアハイムは、民間の寄付金や会員費、相続資金等により運営されています(*5)。ティアハイムの法人形態は、日本で言う協同組合に近く、営利法人です。法人税も日本の消費税に相当する付加価値税も課税されます。非営利法人では非課税です。不要ペットの引取り料金はかなり高額で(日本円で2万円~程度)、犬などの再販売価格もかなり高額です。不人気の雑種中型犬で、不妊去勢していれば、5万円近くの価格で販売しています。その他、葬祭事業や、老犬老猫ホーム(飼い主が高額の飼育料金を支払う限り、飼育が継続されます)などの営利事業のサービス価格もかなり高額です。
写真は、ドイツのティアハイム専門の犬販売サイト、Deine Tierwelt、のページから。なお、ドイツでは、犬などのペットの生体の非対面通信販売が日本と異なり合法です。かなり盛んに行われています。

*2、現在(2017年9月23日時点)では、アメリカ全土において、州でペットショップでの生体販売を禁止しているところはひとつもありません。
~
Jurisdictions with Retail Pet Sale Bans
*3、ペットショップでの、生体販売を全面的に禁止している自治体も皆無です。一部の自治体では、犬猫ウサギなどの種に限り、営利ブリーダーからの仕入れ販売を禁じています(自家繁殖したものや、保護施設由来の動物は販売可能とする条例がほとんどです)。
~
Jurisdictions with Retail Pet Sale Bans
こちらのリストから、各自治体の条例に飛びます。ご確認ください。
*4、ASPCAの、動物愛護法執行部門Humane Law Enforcement Divisionは、NY州で法執行の権限が限定的に付与されていましたが、2013年に解散~廃止しました。
~
ASPCA Humane Law Enforcement Division
*5、ティアハイムは、営利事業法人です。不要ペットの高額な引取り手数料、ペットの再販売事業、老犬老猫ホーム事業、ペット葬祭事業などが大きな収益の柱です。
~
一例として、ティアハイム専門の犬のインターネット販売サイト、deine tierweltのページ、Tiermarkt Hunde Hunde aus dem Tierheim 「動物の商品出品 犬 ティアハイムの犬」より。
なお、ドイツでは日本と異なり、インターネットによる犬などの非対面通信販売を禁じていません。
ティアハイムも、インターネットに商品出品して大量に保護犬などを非対面販売しています。
価格は日本円で4万円~程度です。
*6、ドイツ国内のティアハイムの総数は、約550施設です。
~
Tierheim
mit rund 550 vereinseigenen Tierheimen vertritt.
「約550のティアハイムが存在する」。
*7、ドイツにおける、「権利」の定義
なお、単にドイツ語で、Recht(直訳すれば、「法」、「権利」と2つの意味があります)とあれば、それはObjektives Recht 「法」を意味し、Subjektives_Recht(主観的)権利を守るものとなります。
つまり、日本語での「権利」は、=Subjektives_Recht、として差し支えない。
~
Subjektives Recht
Subjektives Recht
Ein subjektives Recht ist – im Unterschied zu objektivem Recht (d. h. einer allgemeinverbindlichen, generellen Norm) – eine rechtlich gewährleistete konkrete Befugnis, etwas zu tun (z. B. das Freiheitsrecht, eine bestimmte Meinung zu äußern), zu unterlassen oder zu verlangen.
権利
権利とは、法律(すなわち、一般的に拘束力のある普遍的な規範、ルール)に対して、何かを行う法的権利(例えば、自由に対する権利、他者に対しての一定の行為)、 (作為または不作為) を要求することです。
他者に対する作為、不作為を要求することを保障するとは、例えば私有財産権(財産の取得、処分権など)や訴訟権などがあります。
これは普遍的な「権利」の基本ですが、もちろんドイツ法学においては、人以外には認めていません。
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